JINSEI STORIES

滞仏日記「この日記が終わる日はいつか」 Posted on 2019/11/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、デザインストーリーズを創刊して4年の歳月が流れた。海外発文化のプラットホームを作ってみたいと思い立ってから4年頑張って来た。このウェブサイトからスタートしたアート&デザインの「新世代賞」も3回の受賞者を輩出することが出来た。理想を信じてここまで続けてこれたことには意味があったと思っている。この日記もその中の一つとなる。

先月の閲覧は130万PVだった。この数字は増え続けている。「個人でやっているサイトとしてはかなり多い方だ」とwith newsの奥山編集長に褒められた。読者が増えたことはとっても素晴らしいことだと思う。インタビューとか、日記とか、世界各地のライターさんの記事なんかバラエティに富んでいて、ぼくは個人的に頑張ってきたなぁと自負している。でも、正直、スタッフもいるし、製作費は持ち出しなので、個人で運営するのは大変。閉鎖も毎年、誕生日とか盆とか正月が来るたびに考えている。将来的にどうしたらいいだろう、と思っているのも事実だ。でも、読者がいる限り、続けたい。「新世代賞」においては若い世代に日本の未来をデザインしてもらうということだけでも意味がある。

でも、続けるのは簡単ではない。デザインストーリーズに注ぎ込んだ時間と労力で、ぼくはいったい何冊の本を出せたことだろう。それでも読者の人が楽しんでもらえているようだから、世界各地で頑張る日本人を通して、今の日本を見つめるのに、意味があると思って続けてきた。あと、どのくらい続けられるだろうか…。

ぼくはビジネスマンじゃないので、ウェブサイトマガジンを作ることは出来ても、運営をやっていくプロじゃないし、才能がない。構築のチャーリー石橋氏には一年遅れで今月構築費を支払った。催促をしないでも付き合ってくれるチャーリーに感謝だ。(新世代賞には毎年、スポンサーがついている。賞金とか海外留学などの支援もその方々の応援のおかげで成り立っている。こちらも多謝!)

なんとかしなきゃ、と経営をしたことのないぼくはぼくなりに悩んでもいる。経営、難しいね。でも、日本は島国だし、世界がどう動いているのかを、世界各地から直接生で知るのは大事なことだろう。AFPやBBCから届くニュースは確かに凄いけど、生活者である在留邦人目線の記事には別の意味があるのだ。ニュースだけでは伝わらないニュースみたいなものこそ、日本には必要じゃないだろうか…。

デザインストーリーズをもっともっと多くの人に届けたいので、ぼくはいろいろな方々とコラボレーションをやっていきたいと希望しているし、計画中のこともある。経営は素人だけど頑張りたい。このプラットホームからきっと想像を超えた面白いことが出現すると信じているし、そのためにやれることはどんどんやっていこうと思っている。このウェブサイトマガジンが日本をザワザワさせる日は近いのじゃないか。きっと近い、きっとね、と自分に言い聞かせている。でも、だからこそ、読者の皆さんに一言、心から言わせていただきたい。

「いつも、まじ、読んでくれてありがとう。これからも面白い記事を配信し続けていたいと思います!」 by 辻仁成編集長。

滞仏日記「この日記が終わる日はいつか」