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滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」 Posted on 2019/12/05 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、知り合いの夫婦に問題があり、一時期、その子供たちニコラ(8)とマノン(13)を我が家で預かったことは前に日記で書いた通り。今日、そのご縁でニコラ君の誕生日会を急遽拙宅で開くことになった。ニコラのお母さんからSOSが入ったのだ。自宅でやる予定だったが、とてもできる家庭状況ではない、と。そしたらニコラが泣いて、ムッシュ・ドロール(面白いおじさんという意味)にお願いして、と言い出したのだとか。ちょうど、息子が午前中で学校が終わりだったので、相談をして引き受けることにした。安請け合いをしたら、見知らぬ子供たちが8人我が家にやって来るというのだ。8人も、である!

ニコラのお母さんからは最初3人と言われていたので、いいですよと引き受けたのだけど、ぎりぎりになってニコラが、あの子も、あの子も呼びたいと言い出した。

うちの子も、毎年誕生日会をやった。人数が多いと、専門の会場を借りてやる。ニコラの両親は今金銭的に厳しいのだ。うちは彼らの家よりちょっと広いし、家族が少ないので、どうぞ、となったが、8人となると話が違う。でも、すでに時遅し、ぼくは用意していたケーキをもう一個作る羽目になった。チョコレートケーキとパウンドケーキとマフィンを大量に作って待ち構えた。まず15時にニコラがお母さんとやってきた。15時半にぞろぞろと子供たちがやってきた。
「ニコラ君の誕生日会場ですか?」
「はい、そうです。アニマタ―辻の家です。どうぞどうぞ」

滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」

滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」



アニマターというのは子供の誕生日会を盛り上げるピエロなどの進行役のことで、手品をしたり、歌ったり踊ったり、子供たちを盛り上げる役目を担うプロだ。離婚の後、ぼくは息子の誕生会だけは毎年開催してきた。息子にとって友だちはフランスで生きる上で財産なので、最大で20人を呼んだこともあるし、ご両親まで呼んで盛大な和食の料理教室を開いたこともある。一度は剣術の達人を招いてサムライ&忍者パーティまでやった。これは本当に大ヒットで、二人きりで暮らすようになった直後の息子を励ます出来事となった。あの時は、息子を不憫に思った知り合いの日本人のお母さんたちが駆けつけてくれた。なんと5人もママ世代のお母さんたちが集まったので、逆に、息子も戸惑っていた。
「パパ、もういいよ。ぼくはパパが頑張ってくれているだけで十分だから」

滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」

滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」



その時の息子とニコラが重なった。8人の友人たちに囲まれてニコラは幸せそうだった。そして彼がぼくを「ムッシュ・ドロール」とみんなに紹介したのだ。仕方ないので、ぼくはおどけてみせ、それからギターを持ち出し、子供たちの前でハッピーバースデイの歌をロックンロールにアレンジして歌って見せた。ニコラは大はしゃぎだった。手伝いを買って出た息子も嬉しそうだった。きっと思い出しているのだろうな、と思った。いい思い出は大事に持って生きてほしいと思う。けっして、君たちは一人じゃない、親がいる子もいない子もみんなでその子の誕生日を祝ってやれるといいな、と思った。
「どう? おじさんが作ったケーキ、美味しいかい?」
「ウイ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」

日本の子供たち、七人に一人が貧困だという。ここ最近の日本に言わせてもらいたいことがある。子どもは世界の財産なのだ。どうか、子供たちが笑顔で希望を持って生きられる世界にしていただきたい。ニコラのお父さんとお母さんにもちょっとだけ忠告をしておいた。せめて誕生日だけでも祝ってやってほしい、と。ニコラが帰りにぼくに抱き着いて、ムッシュ、ありがとう、と言ってくれた。子どもにとっては当たり前のことだから、よしよし、と頭を撫でてぎゅっと抱きしめておいた。
「ニコラ、9歳、おめでとう」

※ちなみに、このケーキは去年もクリスマスに作った辻家の定番中の定番菓子。作り方は女性自身の「ムスコ飯」で、あるいはこのURL「2Gクッキング」で。簡単だから、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃん、クリスマスにお子さんのために作ってあげて。材料費はほぼからないのだから!

滞仏日記「ニコラ君の誕生日会を我が家で開催するの巻」

「ラズベリーとホワイトチョコのクリスマスケーキの作り方」

https://youtu.be/FuUcc8l5Rjo

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