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看病日記「昨夜は三四郎の様子をみつつ、寄り添って看病した父ちゃん」 Posted on 2022/09/29 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、気管支炎で引っ越し準備が捗らず、あの手この手で引っ越しを延期にし、その間、集中して片付けをするために三四郎をドッグトレーナーのジュリア(の彼氏のステファン)に預けたのはいいのだが、おとといくらいから嘔吐と下痢を繰り返した三四郎、南仏に滞在中のジュリアから連絡があって、慌てて引き取りに行き、獣医先生のところに連れていかないとならなくなった。←わかりにくい状況・・・
どうやら、変なものを食べた疑いがあるという診断結果、3本の注射を打つことになったさんちゃん、一方、パニックになった父ちゃんは咳き込みながらも一晩三四郎に寄り添ったのであった、というところが、昨日から今日にかけての辻家の慌ただしい動きである。マジ、大変な人生である。

看病日記「昨夜は三四郎の様子をみつつ、寄り添って看病した父ちゃん」



とはいえ、要は、「忙しいので犬を預けたら変なもの食べて体調を崩したのでクリニックに連れて行った、やれやれ」というだけのことだけど、ぼくが文章にしてしまうと、大げさになる。
作家なので、ご容赦願いたい。とはいえ、ぐったりした三四郎を見るのは辛いので、今日は横において、段ボール箱に書類とか本とかを詰め込む日になった。
(預けないでも、よかったのに、というご意見もあるでしょうが、明後日の引っ越し、考えてみてください。サンシーの面倒をみながら、引っ越し、出来ると思いますか? そのあと、散らかった新居でいきなり、三四郎を寝かせられるでしょうか? 落ち着いてから、態勢を整えて引き取りに行き、さ、さんちゃん、ここが新しい家だよ、と言ってやりたかったし、その方がぼくも楽ははずでした。皆さん、ぼくを責めないで~、笑)
真夜中、三四郎は、珍しく自分のベッドでぐったりしていた。
大好きな「顔無しウサちゃん」を抱きしめながら寝ていた。もう、うんともすんとも言わないのだ。このまま、死んでしまうのかな、と思ったほど、元気がない。
しょうがない。傍にいて、ぼくはその横で仕事をした。

看病日記「昨夜は三四郎の様子をみつつ、寄り添って看病した父ちゃん」



しかし、先生が打った注射が効いたようで、朝起きると、再び、元気に走り回るようになっていた。さんしー。
さすが、若者、回復が早い。
尻尾もいっぱい振ってくれるようになり、ご飯ももりもりと食べたのであった。
ということで、お騒がせさんちゃんは無事、復調。
父ちゃんはうとうとしたけど、熟睡は出来ず、やはり咳が出る。
日本行きまでに、レコーディングの歌いれまで終わらせたかったけれど、これはもう、ちょっと無理かもしれない、という状況になった。
ともかく、急ぎの仕事やレコーディングより、まずは自分の身体の方が大事だ。仕切り直しの初秋であーる。

朝、三四郎を散歩に連れ出した。様子をみつつ、である。
ともかく、どんなに体調が悪くとも、ピッピとポッポ(おしっことうんち)はさせないとならない。
家の近所を歩いた。大じょんべんをした。ホッとした。
そして、ポッポ(うんち)もした。下痢ではなかった。まあまあ、健康的なうんちであった。
よし、大丈夫だな。獣医さんにあとで連絡をしておこう。
ということで、家路についた父ちゃんとさんちゃんなのだが、・・・行きつけのモジャ男のカフェの前で動かなくなった。
毎朝、三四郎にビスケットをくれるオーナーのブリュノさんが店先にいて、三四郎に手を振ったからである。その後ろにギャルソンの格好をしたモジャ男もいた。
二人が三四郎に手を振り続けるものだから、このカルチエ(街)から、もうすぐぼくらは出ていくのだ、と実感し、ちょっと寂しくなるのだった。
秋の日のビヨロンの溜め息は身に染みてひたぶるにうらかなし・・・。

看病日記「昨夜は三四郎の様子をみつつ、寄り添って看病した父ちゃん」

※ この人間と子犬の関係が、ぐっときます。

つづく。

今日も読んでくださり、ありがとうございました。
それにしても、元気な時は、元気過ぎる、と心配になり、病気になると、もっと心配になる、のだから、ペットを飼うというのはほんとに責任重大なんですね。でも、この子がお手をしてくれると、幸せを感じる、今日のいつもの父ちゃん、なのでした。あはは。おしまい。
さて、そんな、人生に振り回され続けている父ちゃんからのお知らせです。
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