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『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト Posted on 2019/09/13 田中 彩子 ソプラノ歌手 ウィーン

イタリア,ドイツの移民が大半を占めるアルゼンチンの首都、ブエノスアイレス。実はタンゴやサッカーだけではなく、名指揮者カルロス・クライバーやピアニストのマルタ・アルゲリッチなど沢山の著名音楽家を輩出してきた、クラシック音楽の都でもあります。
ヨーロッパがオフシーズンになると、演奏者たちは南半球のブエノスアイレスに演奏旅行へ行くのが今でも伝統になっているくらい、ブエノスアイレスとヨーロッパにはクラシック音楽の深い絆があります。
世界中の音楽家が集まり、“南米のウィーン”とも呼ばれる、ブエノスアイレス。そこに、アルゼンチン政府支援のもと26歳以下のさまざまな国籍、生活環境の若者たちでできたオーケストラがあります。
 

『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト

「アルゼンチン国立青少年オーケストラ」はあくまでもプロの音楽家を育成する場であり、貧困層の青少年をボランティアで助けている団体ではありません。プロの音楽家を目指そうとオーディションで勝ち抜いた青少年だけが在籍していますが、鉄格子で囲まれているような治安の悪い地域出身の青少年や、裕福まではいかないけれど普通に生活ができる家庭環境出身の青少年など様々です。また、アルゼンチンだけではなく、ベネズエラ、ボリビア、エクアドルなどから来ている子どもたちもいます。
オーケストラの中はチームワークや協調性、集中力を学ぶ最適な場所でもあります。そこには生まれた環境や国籍関係なく、皆が平等にチャンスを与えられているから。
 

『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト

このアルゼンチン国立青少年オーケストラは、ベネズエラにある「エル・システマ」という音楽教育プログラムに非常に似ています。なぜなら、「アルゼンチン国立青少年オーケストラ」を創立した指揮者ベンセクリと、「エル・システマ」を創立したアビレウ氏は友人関係であり、エル・システマを始めるにあたりお互い協力関係にあったからです。ベンセクリはベネズエラに行きエル・システマの子供達に指揮を教えたり、エル・システマからソリストがアルゼンチンへ行きアルゼンチン青少年オーケストラと共演したりしていました。その後も友好関係が続き、今にいたります。
 

『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト

<ベンセクリ氏とアビレウ氏>



私が18歳の時、片道切符を握りしめ1人でウィーンへ留学してから早くも18年。今年は、人生のちょうど半分を日本、半分をヨーロッパで過ごしているという節目の年になります。少ない所持金や未来への不安に負けないよう、とにかく音楽で生き抜くために無我夢中で過ごしました。そんな毎日を、慣れない土地で一人やってこられたのは、いつも沢山の方々の助けがあったから。助けとは、見知らぬ誰かの「頑張れ!」という一言だったりするのです。その言葉に励まされ続けてきました。
たった一人でも、誰かが私を応援してくれている。期待してくれている。という事実は想像以上に大きな力と希望になりました。

最近はテレビ出演やフォトエッセイの影響か、とても嬉しい事に10代、20代の方から相談メッセージを受けることが多くなりました。
留学する事の不安、音楽の道へ進むことへの迷い。
 

『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト

私が初めてこのアルゼンチン青少年オーケストラと共演した時、生まれ育った環境や国が違っても、彼らは日本の青少年達とまったく同じような思いを持っているのだと感じました。同じように将来への不安を抱えながらも力強く生きているのです。

そう感じたとき、このオーケストラの理念でもある、「生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない」という言葉に強く心を動かされました。
ちょうど地球の反対側にある日本と南米。普段なかなか関わることのできないその正反対の国々と日本の青少年達が少しでも交わる事ができたらどんな化学反応がおこるのでしょう。
 

『生まれた環境によって、子供たちの可能性が左右されるようなことがあってはならない』アルゼンチン国立青少年オーケストラ招聘プロジェクト

世界は広いです。当たり前と思っていることがそうではなくて驚くこともあります。でも、逆にいえば、不可能だと思うことが可能になることもあります。全ては自分次第だということ。あとは「頑張れ」という声援。
自分自身がそういう声援に支えられたように、次は自分が誰かの未来へ進む後押しになれたら、と、そんな想いを込めて、このプロジェクトを立ち上げました。
そして私自身も成長途中の身として、皆と一緒に成長していけたらと思っています。

ご支援やシェアをしていただけましたら大変幸いです。
https://a-port.asahi.com/projects/ayakotanaka/

 
 

Posted by 田中 彩子

田中 彩子

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Ayako Tanaka
ソプラノ歌手。京都府出身。10代から単身ウィーンにて声楽を学ぶ。22歳でスイス・ベルン歌劇場で日本人初、且つ最年少での歌劇場ソリストデビューをして以来、コンツェルトハウス(ウィーン)、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(ロンドン)、ナショナルシンフォニー交響楽団(ブエノス・アイレス)等コンサート・ソリストとして欧州を拠点に活動中。
毎日放送『情熱大陸』出演。デビューアルバム『華麗なるコロラトゥーラ』(エイベックス・クラシックス)、フォトエッセイ『Coloratura』(小学館)発売中。2019年「Newsweek 世界が尊敬する日本人100」に選ばれる。