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父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」 Posted on 2022/05/03 辻 仁成 作家 パリ

 
ぼくは息子と世界中、旅をしてきました。
何か国くらい旅したのか…、数えきれないくらい。
北半球はほぼ制覇したのじゃないかな。
なんで、父子で旅を続けるのか?
父子旅のはじまりは二人で生きることが決定的になった頃に遡ります。
当時、10歳になったばかりの息子との絆を強くするために、無理やり、そう、かなり無理やり引っ張り出したのを、覚えています。
たぶん、ストラスブールからこの旅ははじまりました。
まだ、息子はぼくの胸の高さしかなかった。
でも、彼は語りはじめます。
自分の意思と決意を…。
 



父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ ストラスブール

 
父がそばにいるから安心しなさい、と伝えるために息子の手を握りました。
握りしめて見知らぬ土地の路地を歩き続けました。
ストラスブールから京都へ行き、京都からモロッコへ行き、
モロッコからバルセロナへ、バルセロナからrリスボンへ飛び、ロンドンからハワイへ、…
こんな風に週末になるとどこかへ出かけ、たくさん話しをしました。
 

※ 子豚を焼いたみたいな絵だけど、焼いたことないし。笑。どこで食ったん?

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

 
どんな時にも傍に父親がいるという安心感を与えたかったのです。
そして、二人で必ず、広大な海か、雄大な川を見ました。
打ち寄せる波を感じながら、二人で生きなければならなくなった未来について、さりげなくですけど、語り合ったりしました。
息子にとって簡単に納得出来ることではなかったと思います。
でも、人には人それぞれの人生があり、君もいつか巣立つんだよ、いつか分かるんだよ、と言いました。
彼は遠くをいつも見ています。
「パパ、ぼくは幸せな家族を作りたい」
この言葉は強烈でした。
 



父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ イタリア、イスキア島

 
ぼくの胸の高さだった息子はいつしかぼくの頭を越えて大きく育ちました。
ブタペストの街を並んで歩く時、ぼくはもう息子の手を握りません。
カサブランカの路地を歩く時、彼はぼくを守るようにして、歩いて行きます。
いつからか、手は握ることもなくなり、いつからか、肩を並べて歩くようになり、いつからか、全て追い越されていたのです。

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ デンマーク、コペンハーゲン

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ アイスランド、レイキャビク

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ アイスランド

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ イスタンブール

自分の役目が一つ終えようとしているのかな、と思っていると、
「パパ、ぼくはそろそろ、友達と旅に出ることにするよ」
と息子が言いました。
その時、父子が見ていたのはドナウ川の川面です。
大河の流れ、それはまさに人生の流れでした。
もちろん、いいね、とぼくは言ってやりました。
人は成長し、川から海へと流れ出るのです。
 

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ ハンガリー、ブタペスト

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

 
 
「それがいい、君はここから一人で旅をはじめなさい。できれば友達たちと世界中を旅しなさい」
 
 

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ 地球の上空

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ リスボンでは、一緒にYouTubeを撮ったのだ。笑。

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ 格安航空会社をよく利用するのだ。

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ 誰だっけ?

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」



父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

 
そして、旅先で父子はまたいろいろと語り合うことになりました。
旅の中でしか語り合えないことがあります。
それは旅先だからこそ語り合えることだったりします。
旅先と書きますが、そこは人生の先端です。
人間はいつも地平線を目指します。
人間はいつも国境を越えようとします。
子供は遠くへ行きたがるもの…。
その冒険心が人間を成長させます。
旅先だからこそ、人間は心を解放できるんです。
 

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ ポルトガル、ロカ岬

ポルトガルの突端の岬で人生を振り返りました。バルセロナのサクラダファミリアの尖塔を見上げながら、人生を振り返りました。

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ バルセロナ、サクラダファミリア

人間はみんな、旅の途中にいます。もっともっと辺境へと・・・。そこで、自分にそっくりな誰かと出会えばいいのです。そして、笑いながら、また、人生を振り返ります。
ありがとう。
アディオス。
グッバイ。
チャオ。
オブリガード。
グッドラック!
・・・



父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

 
大河の雄大な流れが教えてくれました。
父子はまた一つの旅先に立ち、未来を見つめました。
素晴らしい思い出をたくさん持っています。
息子は息子の旅をはじめ、親は親の旅をはじめるでしょう。
旅先だったからこそ、本当のことを語り合えた、と思います。
大切な人とどうぞ、旅を続けてください。
ぼくも旅を続けます。
 

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

自分流×帝京大学
地球カレッジ

父子旅の記憶「父子旅を続けて、学んできたこと」

※ ロカ岬から世界を見つめる父ちゃん



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。