PANORAMA STORIES
アートカレッジ担任奮闘記(2) Posted on 2025/11/15 辻 仁成 作家 パリ
おつかさまです、担任です。笑。
もしかして、思うことないですか?
人間って、なんのために生きているのかって・・・。
ぼくのような年齢になっても、まだ、これが人間の使命だったのだ、というものに気づけず、発見できず、にいます。
そりゃあ、そうですよね。
だって、人生って、正解はありませんから・・・。
それに今、みんな余裕がないですよね。なんだかしりませんが先行きが見えない時代だからでしょうか。
ただ、確実に言えることは人間は長生きをしはじめているし、医療も充実しているので「人生100年の時代」に突入してしまっているということ。
何のために生きているのかを、もっと長く考えないとならないということです。
それで、以下の実践を心がけています。
1,丁寧に生きること。
2,美味しく食べること。
3,そして学び続けること。
4,くよくよしないで、最後の瞬間まで精一杯生きること。
これに尽きるんじゃないかって。
ぼくが目指すアートカレッジって、人間はなんだろうって、考えることがその中心にあるんです。
ボケっと、朝から晩までテレビばっかり見ていると、人間の脳はもう自分で考えることを放棄してしまい、脳細胞は退化し、個性は失せ、羊のようになってしまいますよ。
アートを学ぶことって、誰にでもできることで、人生100年の時代のほぼほぼすべての時間を意味深いものに変えることが出来る、とぼくは信じていたりいます。

ぼくが目指すアートカレッジでは、アートは何かを探りながら、実際、自分も何かアートに触れていく、そういう場を作って、与えられた人生に意味を付加していく場所になればいいな、と思っています。
それはそんなに難しくない上に、愉しみが増え、そして、アートの歴史を学ぶことで、人間の輪郭が見えたりできるんじゃないかって・・・。
ただ、それはお金儲けには一切直結しませんが、人生にカラーを付けることが出来るでしょう。

もちろん、まだ、目指しているだけで、実現させるためには、もうちょっとぼくも頑張らないとならないんですけれど、人生とかいう途方もない怪物は、もしかすると、アートを通して、もっとわかりやすくなるんじゃないかな、親しみやすくなるんじゃないか、と思っています。
☆
ぼくがパリやノルマンディでアート活動(小説や音楽も含めます。ぼくには囲いがありません)を通して出会ったアーティストたちは、もちろん中には、有名芸大を出ているすごい先生もいますが、でも、実際は身近で、もっと、自由で、好奇心旺盛な連中なんです。
ぼくが目指すアートカレッジは、たとえば、一流の画家が試験を受けていくような芸術大学ではありません。当然です。
そういうことを一度も考えたことがなかった皆さん、こそが、アートを考えるところなんです。
ちょっと絵心があったり、美術館巡りが好きだったり、そういう人たちのためのアートの学び舎があってもいいんじゃないでしょうか。
あくまでもアートを通して、さ~、人間はいったいなんだろうねっていう探求の場所みたいなものです。
☆
実際、こうやって、自分の気持ちを言葉にしていくと、ああ、やれそうだな、って思えてくるから不思議です。
脳って、実はわかりやすいんです。
「ダメだダメだ」と頭を抱えると脳はすぐに負のメッセージを全身に発令しますが、「大丈夫、楽しい、面白い、絶対やれる」って、考えると、その明るいメッセージを身体や心や魂に素直に伝達してくれたりします。
ぼくが目指すアートカレッジ、も、「ぼくが目指すんだ」と自分の脳に発令しているので、間違いなく実現するのだと思うのです。
人間には自己肯定の法則があるんです。
笑。
はい、ご清聴ありがとうございました。
今日の担任からの連絡は以上となります。
熱血で行くよ、
えいえいおー。

辻仁成の展覧会情報ですが、
2026年、1月15日から、パリ、日動画廊、グループ展に参加。
2026年、11月には、リヨン市で個展が決まりそうです。版画なども出す予定。情報解禁になったら、まっさきにお知らせいたしますので、リヨン周辺在住の皆さま、お楽しみに。
2026年、夏に日本でも個展を開催する予定ですので、8月前半、スケジュールあけておいてくださいまし。えへへ。

Posted by 辻 仁成
辻 仁成
▷記事一覧Hitonari Tsuji
作家、画家、旅人。パリ在住。パリで毎年個展開催中。1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。愛犬の名前は、三四郎。



