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フランスの食卓。寒い夜にみんなで囲むものは?  Posted on 2019/12/13 辻 仁成 作家 パリ

冬ご飯というものがあります。我が家では、この季節になると、途端に鍋率が高くなり、面倒くさいとずっと鍋で通すことも。あと、煮込み料理も多くなりますね。おなじみグーラッシュとかシチューとか、やっぱり冬ならではのものを食べたくなるのが人情です。行きつけのベトナム料理店や中国レストラン、韓国レストランで食べるアジア鍋も大好きです。ベトナムの「ラウ」、中国の白菜の鍋ね「ピエンロー」、韓国だと「チゲ」かな。「グテ鍋」も若々しくて好きだけど。あ、ピエンローは本当に大好きで、でも、食べ過ぎちゃうんですよね。白菜と豚の三枚肉の鍋でごま油と塩で食べるんだけど、やばいですね。近々、レシピやりますね。

では、フランスでは、一体どんなものが冬の食卓の定番となるのでしょうか。



寒い冬にフランス人が家族で囲むもの・・・それは、「ラクレット」です。
ラクレットとは、もともとラクレットチーズの断面を暖炉などで溶かし、溶けたチーズ部分を削ってじゃがいもにかけハムやサラミなどのシャキュトリと一緒に食べる、サヴォワ地方伝統料理のことなんですが、”Racler(ラクレ):削る” という意味の単語が語源なんだとか…。へ~。
「アルプスの少女ハイジ」でおじいさんが作っていたアレ、といえば分かる人も多いでしょう。ですが、今では家庭用のラクレットプレートなるものが存在し、そちらを使ってラクレットを楽しむのが一般的。フランスの家庭には必ずこのラクレット器が一台ありまして、冬になると食卓に登場する、いわば日本の土鍋のような存在なんです。フランスで鍋やるか、というと辻家ではラクレットということになります。みんなでわいわいつまむという意味ではぴったしですね。この前、近所の金物屋さんのショーウインドーに「一人用ラクレットプレート」なるものが売ってました。独身の若い人が、パリに出てきて、家族を懐かしんで食べているのかな、と想像してしまいました。日本でも、先日、一人鍋を出すお店があって、結構繁盛していて、へ~、そういう手もあったか、と感心したものです。一人鍋、やってみようかな、次回の東京出張で。笑。
 

フランスの食卓。寒い夜にみんなで囲むものは? 

さて、フランスで市販されている「ラクレットプレート」は、本体とプレートの間に隙間があり、一人ずつ専用の幼児用ショベルのような取っ手のついた小さなパンを割り当てられ、それぞれ自分のチーズをそこに載せて、隙間に入れて、自己管理のもと、チーズを溶かしていきます。焼き加減は鍋と一緒で、トロトロになるまで待つ人もいますね。あらかじめ茹でたジャガイモや野菜をプレートの上で温められますから、チーズが溶けるのを待ち、自分の器にとって、そのあととろけたチーズをそこにかけて食べる。美味いんですよ。食べたら、また小さなショベルにチーズを自分で載せて隙間に入れていく。わんこそばのようにチーズがなくなるまで永遠とそれを繰り返すわけです。なんとなく、鍋の仕組みに似てませんか?、笑。

息子もラクレットが大好きで、冷蔵庫にラクレットチーズを発見すると、「え、今日、ラクレット?」と目を輝かせます。冬に友達を招く時の定番料理でもあり、フランスでは一人200gを目安にラクレットチーズを用意するようですが、日本人の胃袋にはちょっと多いかもしれませんね。息子は友達を家に招く時は必ずこれをやっています。父ちゃんが給仕をやります。男の子たちの食べる量は半端じゃありません。ニコラやマノン、あるいは上の階の子たちが遊びに来た時もよくやります。幼児も子供も大人もご老人も大喜び、話も弾みますよ。まさにフランス風鍋ですね。

日本でもこの「ラクレットプレート」買えるんです。今、さっとネットで調べたら、5千円くらいでした。「ラクレット・グリル」で検索してみてください。ただ、ちょっとラクレット用のチーズは高いんです。うーむ。輸入品だから仕方がないのかな、でもこれだけは他のチーズで代用が出来ません。たぶん…ごめんなさい。

ラクレット以外にもルブロションチーズを使ったタルティフレットやモンドール・フォンデュなどフランスではチーズ料理が冬の定番となります。どれも簡単で美味。フランスの冬の定番料理はよく冷えた辛口の白ワインと相性抜群です。さて、最後にラクレットの簡単な作り方をご紹介しておきます。
 

フランスの食卓。寒い夜にみんなで囲むものは? 

〜 冬のチーズ簡単レシピ 〜

<ラクレット> 4人分
ラクレットチーズ 600g〜800g
じゃがいも 600g
ブロッコリーやニンジンなど 好きなだけ
生ハム、サラミ、ソーセージなど 好きなだけ

じゃがいもと野菜は茹でるか蒸しておく。
ラクレット器にラクレットチーズを入れ、溶けたら野菜にかけてハム類と一緒にいただく。

<タルティフレット> 4人分
ルブロションチーズ大 1個
じゃがいも 500g
玉ねぎ 1個
ベーコン 200g
バター 15g
白ワイン 大さじ2
塩胡椒

じゃがいもは厚めの輪切りにして茹でておく。
バターで玉ねぎとベーコンを炒め、白ワインを加え、アルコール分をとばしたら塩胡椒で味を整えておく。
グラタン皿にじゃがいもの半量、炒めた玉ねぎとベーコン、ロブルションチーズを順に重ね、それをもう一度繰り返し、トップをロブルションチーズで覆う。
180度に予熱したオーブンで20〜30分焼いて完成。

ボナペティ!!!


Bon appetit!
 

フランスの食卓。寒い夜にみんなで囲むものは? 



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。