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「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」 Posted on 2019/09/21 辻 仁成 作家 パリ

欧州の中でも好きな街、コペンハーゲン。こじんまりとしていて、陰影があって、歴史と伝統だけじゃなく、現代のシャープさがそこかしこに潜んでいる、とってもおしゃれで粋な街だ。

時間が出来るとぼくはふらりとここを訪れる。だいたいいつも馴染みのプティホテルに宿泊する。グランドホテルも素敵だけど、身の丈にあった小さなホテルが居心地が良い。

アートでモダンな落ち着いた館内、細かなところに斬新なアート風試みがあり、何よりシックでエレガントな居住空間を提供してくれる。スタッフの対応も実にそつがない。そういう隠れ家的なホテルがいい。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

不思議なバーがこっそり営業をしているような裏路地に位置し、外見はここにこんなホテルがあるのかという隠れ家、いやホテルだとはまず気が付かない地味な佇まいをしている。そういう隠れ家的なホテルが好きだ。

ところが一歩中に入ると別世界。ホテルレセプションがバーカウンターにあるような、そんな不思議なデザイン・・・そういう隠れ家的なホテルがいい。

シャンパンを飲んでるカップルの横でチェックイン出来て、バーテンなのかレセプショニストなのかわからない感じのお姉さまが接客を担当してくれる、そういうホテルが粋だよね。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

わざと壁に穴を開けたり、朽ちさせたりと、そこら中に作り込んだアート感が満載。トイレから通路まで実に手が込んでいる。小さな美術館にいるみたいな、なんかそんなホテルがいい。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

入り組んだ館内をぐるぐると移動し、やっと辿り着ける部屋は最上階の屋根裏部屋風ロフトだったりするとなお素晴らしい。
屋根に突き出したテラスがあり、コペンハーゲンを一望することができたりしたらもっと素晴らしい。そういう隠れ家的なホテルに泊まってみたいとずっと思っていた。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

室内に置かれた家具はやっぱりデンマークデザインだったりする。階段脇の机とその椅子とかが絵画のような、そういう隠れ家ホテルがいいなぁ。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

ベッドもちょっと凝ってる方がいい。背もたれが椅子みたいになっており、ソファとしての機能もある、そういうベッドで疲れをとりたい。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

オーガニックの人気なレストランなんかが併設されているとホテルから出ないでいいので、助かる。

ぼくのようなうるさい客を喜ばせてくれる幅広い選択肢を持っている、でも限りなく隠れ家のようなプティ・ホテルが存在するならば泊まってみたい。でも、きっとコペンハーゲンにはこの手のホテルがたくさんあるに違いない。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

ところで、ぼくは昔から窓の鍵フェチなのである。

知恵の輪のような窓の鍵がついている部屋で、外の空気を吸うたびに毎回頭を使ってみるのも面白い。そういう遊び心満載のホテルがあるならば・・・。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

デンマークの建物はちょっと窓の作りが他所の国とは異なっている。
郊外には特に出窓付きの家やマンションが多く、だから鍵や把手も変わっているのかもしれない。
そして窓を開けると隣家が見え、そこにはデンマークの生活や日常が香っている。そういう空域に割り込んで作られたような隠れ家に泊まりたい。

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」

たしか、コペンハーゲンに、そういう隠れ家的なホテルがあったような気がする。

一階のラウンジがきっとこのホテルで一番贅沢な空間であったような。
みんなそこに集まり、知り合いのように和気藹々ソファで寛いでいたような。

たしか、夕方、ワインが飲み放題になったような。振る舞い酒のあるホテルというのも珍しい、とぼくは思ったような気がする。

でも、コペンハーゲンにはこういう不思議なホテルが結構多い。どこもかしこも、細かいところにこだわりがある、さすがコペンハーゲンである。

また、行きたくなってきた!

「コペンハーゲンのプティホテルで心を整える」



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。