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パリ最新情報「パリの救急医に緊急取材、最前線の医師の本音を聞いた」 Posted on 2020/10/16 Design Stories  

編集部は救急病院に勤める医師に緊急取材を行った。匿名を条件に忙しい最中、短い電話取材に応じてくれた。最前線で闘う医療従事者側から出た言葉をもとに、彼らが抱える不安、深刻な問題について、下記にまとめる。

非常事態宣言をし、全9都市で21時から翌朝6時までの夜間外出禁止が決まったフランス。
ところが医療の現場では、深刻な医師不足、看護師不足に見舞われている。あれよあれよと言う間に、集中治療室の空きベッド数が残り少なくなってしまったこの過酷な状況下で、医療従事者たちが何を思って、日々の仕事をこなしているのであろう…。



A医師「数年前、予算不足から、パリ郊外に4つあった救急センターを1つにまとめたんです。驚くべきことでしたよ。フランス全土で感染者はどんどん増えて、ついに3万人を超えたけれど、ぼくが働く地域の救急センターは今、一つしかない。医療現場の予算削減を強行した結果、こうなってしまったのですよ」

パリ最新情報「パリの救急医に緊急取材、最前線の医師の本音を聞いた」



A医師「医師5人で救急センターの昼、夜のシフトを回していますが、救急夜間チームには経験のある医師が1人、あとはインターン生や看護師の5、6人体制で対応にあたっています。たった1人の医師が夜を受け持ってるんですよ。でも、ぼくらが診ないとならないのはコロナ患者だけじゃない。DVを受けてやって来る人も、アルコールや薬中の患者も後を絶たない。もちろん、心臓疾患や事故で大怪我をした患者も運び込まれてくる。いいですか、それをぼくのような疲れ切った医師が1人で診ないとならないのが今の状況なんです。週末になると、コーヒーを飲む時間さえない。コロナの患者を1人みたら、防護服を変えないとならない。その都度、20分、30分の時間を奪われていく。自分がどうやって人間らしさを維持できてるのかも疑わしい。これが今のパリ、パリ近郊の現実なんです」

A医師「医師不足は人々が想像できないほどに深刻でね。資格がないと医師にはなれないのだから、増やしたくても量産できる人材じゃない。では、どうするのか? 不足を補うために外国人医師を呼ぶのです。でも、どんなに力のある医者でも、言葉が読めない、喋れないでは診察もできない。言葉の問題が正じて、結局、片言の英語なんかでやりとりするものだから、ミスもおこりやすくなるし、現場はいっそう面倒な問題を抱えなくてはならなくなるのです」

パリ最新情報「パリの救急医に緊急取材、最前線の医師の本音を聞いた」



A医師「でも、医療関係者への待遇は改善されていません。こんなに命の危険をおかし、精神も体力もギリギリでやっているというのに、労働対価は驚くほどに低い。賃金が低すぎるという不満は誰もが持っています。最前線で戦っているのに、一番扱いが酷ければ、いったいそういう場所で誰が働くというのでしょう。体力的な面は当然、精神的なダメージを受け、辞職する人も後を絶ちません。もう、この負のスパイラルからフランスはどんどん抜け出せなくなりつつあります。これが今の現状ですよ」

3月、4月も医療崩壊寸前だったが、医療従事者の疲れも癒えぬままのこの第二波の襲来。救急医は呼び出されればノーと言えない状態に追い込まれているのだ、という。
今週に入り、運ばれてくる人の大半がコロナ患者になってきた。最小限の人員と予算で、パリの病院は第二波から市民を守ろうとしている。しかし、コロナの威力は強く、守る側の病院には人がおらず、医師たちの政府への怒りは頂点に達している。

パリ最新情報「パリの救急医に緊急取材、最前線の医師の本音を聞いた」



A医師「集中治療室のベッド数にはすでに限度が出始めているので、患者の選択も行われます。命に優劣はないのだけど、なるべく若い人の命を助けるため、集中治療室に入る人を年齢と生存の可能性によって選ばなければならない。コロナは「65歳以上の人にとって危険」とよく言われているけど、若くても重症化する人がいないというわけではない。医師は神ではないので、救える者を救えない時もある。神のように選択を迫られる時もある。どちらが生存の可能性があるのか、限られた時間と予算のしわ寄せは、実は助かるかもしれない人にまで及んでいるのです」

A医師「現在、集中治療室にいるうちの37%が65歳以下。医療機関のキャパシティは変えられないので、このまま感染者が増え続け、若い人の重症化が増えれば、医療現場はますます厳しくなるでしょう」

取材が終わり、電話を切る間際、もう一つ質問をぶつけてみた。果たして、夜間外出禁止令に効果はあるのだろうか? するとA医師は「ロックダウンほどの効果は出ないと思いますよ」と悲観的な言葉を吐き捨てた。

抗体ができにくいばかりか、再感染した場合、2回目の感染の方が症状が酷くなるとも言われ始めている新型コロナ。A医師も含め、医師たちのほとんどはすでに一度感染している人が多い。さらなる危険を覚悟して彼らはコロナ軍と向き合っている。

パリ最新情報「パリの救急医に緊急取材、最前線の医師の本音を聞いた」



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デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。
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