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「世界最強パスポートを持つ日本人を見かけない世界」 Posted on 2020/01/14 辻 仁成 作家 パリ

最近のフランスのニュースで、パスポートの強さランキングが今年も話題になっていた。ビザなしで行ける国が多い順にランクが発表され、フランスは去年世界三位だったのに、今年は六位に後退した。世の中というのはこういうランク付けが本当に好きだな、と思う。もちろん、ビザなしで行けるに越したことはないけど、行ける国も限られているし、人生は短いし、そこでパスポート力競っても、と思うのはぼくだけだろうか。

で、日本は、ビザ無しで行ける国が191ヵ国になったことで堂々3年連続で世界最強のパスポートになった。これはとってもめでたいことだけれど、昨日のニュースなどによると、日本人のパスポート保有率が23,4%で4人に一人しかパスポートを持ってないらしいから、ちょっと宝の持ち腐れ的な感も否めない。イギリス人は76%、カナダ人は66%の保有率(2018年調査)というから、この差はなんなのだろう。

「世界最強パスポートを持つ日本人を見かけない世界」



20年前と比べるとパリで見かける日本人の数が減った。それにかわり、中国人観光客だらけなのだ。これはフランスだけではなく、世界中、どこに行っても中国人ばっかり。先月、スペインのセビリアに行ったが日本人には一人か二人しか会えなかった。逆に、セビリアで見かけるアジア人のほとんどが中国人、次が韓国人だった。中国のパスポートの力は世界72位だというのだから、面白い。世界72位のパスポートなのに世界中の主な観光地はどこもかしこも中国人観光客で溢れかえっている。この順位にいったい何の意味があるのか、と思ってしまう。ぼくは何位であるかということよりも、その国やその国の国民が世界とどうかかわっていくのか、ということの方がパスポートの持つ力よりも大事じゃないかと思った。今年に入ってから、世界を巻き込んだ物凄いニュースが続いている。経済も政治もあらゆることが揺れまくっているこの時代、外の世界とどう繋がっていくのかは大事なことで、そうじゃなければ経済で成果を出すことなんてできなくなる。ただでさえ、日本人は語学で不利な立場にあるので、ここはこの世界最強パスポートをどんどん有効利用しない手はない。

自分流×帝京大学

Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。