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「ギャラリー街の風雲児、隠れた巨匠、SAIKUSA」 Posted on 2019/11/22 辻 仁成 作家 パリ

写真家、SAIKUSA SATOSHIはぼくと同世代、九州、五島列島の出身と聞いたことがある。しかし、その多くの経歴な謎に包まれている。90年代から2000年代にかけて、イタリアのVOGUE誌の表紙などを担当。フランスのモード界でもトップクラスの写真家であった。もちろん、現在もCMから映画まで多岐にわたる撮影の仕事を手掛けているが、この十年ほど彼がとくに勢力を傾けて取り組んでいるのがオデオンの画廊「DA-END」である。

「ギャラリー街の風雲児、隠れた巨匠、SAIKUSA」



話題のモダンアーティストたちの新たな発表の場として、オデオンの画廊街に新鮮な衝撃を与えて続けている。しかも、今回、彼自身がアーティストとなって、写真をモチーフにしながらも、それを絵画やオブジェの中に取り込んだ非常にユニークな作品展「UTAKATA」をスタートさせた。情報過多のこの世界の中でその流れゆく膨大な情報を作品の主軸に置き、文明への問いかけと、もちろんある種のクリティック、批判も含まれ、しかし、写真家だからこそ生み出せた絵画的アートのアプローチは、心を静かに刺激し、一見の価値がある。題材は彼自身を含む世界の混沌と文明漂流の行方であろう。照明をできる限り落としたデカダンスな暗さの中で、美術館とは全く異なる光りの陰影を生かした、パリ、オデオンならではのアートの息吹を味わうことができる。

 

「ギャラリー街の風雲児、隠れた巨匠、SAIKUSA」

ぼくがサトシと画廊の前で立ち話をしていると、すれ違う地元のアーティストや画廊主たちが、
「やあ、サトシ」
と言って途切れることなく近づいて来る。一緒にオデオンを歩けば、その辺のカフェのギャルソンから住人まで、様々な人が声をかけてくる。彼は人生の3分の2ほどをすでにパリで過ごしてしまった。日本人というよりももはやフランス人にしか見えない。そもそも、彼の日本語は怪しいので、もしかすると、UTAKATA(泡沫)、というタイトルも、存在が泡のように消えやすい人間が、操るその泡沫な世情や言語にひっかけて、命名されたものかもしれない。言葉やイメージよりも直截に五感を刺激してくるSAIKUSA SATOSHIの斬新写真芸術、これはまさに今のパリであり、アクチュエルなアートの事件として、見逃せないと思った。

「ギャラリー街の風雲児、隠れた巨匠、SAIKUSA」

SAIKUSA SATOSHI UTAKATA(泡沫)会期は11月21日より12月21日まで。
Galerie Da-End 17 rue Guénégaud 75006 Paris
+33 (0)1.43.29.48.64.

「ギャラリー街の風雲児、隠れた巨匠、SAIKUSA」



Posted by 辻 仁成

辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。