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パリ最新情報「接触追跡アプリは人権の壁を越えて機能するか?」 Posted on 2020/05/29 Design Stories  

28日に発表されたロックダウン解除の第二段階における予防、テスト、隔離という3つの対策に加え、フィリップ首相は6月2日よりダウンロードが可能になる接触追跡アプリ「StopCovid」を発表した。designstoriesの4月14日の記事でこのアプリ「StopCovid」がどんなものであるかを詳しく説明したが、要は、日本でも導入が検討されている「接触確認アプリ」と同じような仕組みである。

https://www.designstoriesinc.com/panorama/stopcovid/



スマートフォンの近距離無線通信Bleutooth機能を使い、半径1m以内、15分以上接触した人同士の情報をアプリに保存(2週間)、新型コロナ感染が確認された場合、感染者がアプリ内にQRコードを入力することで、その人が接触した全員にお知らせが来るというアプリである。情報は暗号化されており、全て匿名。GPS機能ではないため、利用者の行動を追うことなどは一切できない。このアプリの目的は、できるだけ早く感染者を割り出し、感染を広げないようにすることで、政府が個人情報にアクセスできることは絶対にない、と、約束した。

追跡アプリといえば、スマホ所有率はほぼ100%韓国では、今回の新型コロナ対策として、GPS機能、クレジットカードの利用履歴、監視カメラ映像までが使用された。このシステムでは、感染の疑いがある場合、30分ほどで個人情報を特定、1時間以内に追跡されるという。もともと「スマートシティ(*)」計画のために作り出されたシステムで、人口や交通量などを共有するためのもののようだが、韓国では政府が個人情報にアクセスする権利を持っており、今回の緊急事態にこのシステムを活用させ、感染者の割り出し、追跡、隔離まで管理したようだ。この韓国独自の感染対策には世界が注目したが、それにしてもこの方式、少し怖い気がする。一部の韓国国民からも、プライバシー侵害に懸念の声が上がっているが、「プライバシーより命の方が大事」と、政府の個人情報使用に肯定的な意見が多いことに国民性を感じさせられた。
*スマートシティとは、「都市の抱える諸課題に対して、ICT等の新技術を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体最適化が図られる持続可能な都市または地区」のこと。

では、この韓国のアプリとフランスで導入される追跡アプリの違いはというと、「個人を特定して追跡(GPS機能使用)」する韓国のアプリに対し、来週(6月2日)から導入されるフランスのものは、「個人を特定せず情報のみ追跡(Bluetooth機能使用)」するということである。すなわち、連絡先を知っている友人以外の接触者、メトロなどで接触(1m以内で15分以上)した人の情報が識別子で保管され、その中の誰かの感染が発覚した場合、自分が2週間以内に新型コロナの陽性者と接触したという事実を知ることが可能となる。もちろん、匿名なのでどこの誰が感染したということは一切知らされない。厳重に個人情報が保護された上でのシステムのようだ。



しかし、そこまで厳重であっても、人権を大切にするここフランスではこのアプリの導入について未だ激しい論争が続いている。反対派の反対理由はいくつかあるが、個人情報漏洩や監視社会を作り出してしまうという懸念以外に、同様のアプリを先に取り入れた他国がどこも失敗に終わっているということも大きい。実は、60%以上の国民がこのアプリを所有していなければ効果的ではないのである。しかし、例えば、この手のアプリを導入した国々の状況を見てみると、デジタル先進国のチェコでさえ、実際にたった1%の感染者追跡しか出来なかった。オーストリアでは国民8800万人に対し、わずか6%というダウンロード率に終わっている。これでは何の役にも立たない。まだまだ”アナログ”な生活を大切にするフランスでは、国民の17%がスマホを所有していない上、世論調査によると3月末の調査では79%の国民がこのアプリに積極的だったが、4月12日の調査では45%にまで下がっている。
一聞すると感染拡大防止のプラスαとして効果的な気もするフランスの追跡アプリ「StopCovid」ではあるが、実際は国民のデジタルへの馴染み、文化、意識、生活様式など、様々なファクターが邪魔をしそうだ。他国の失敗を見ると、導入するならば韓国くらい踏み込まないと意味がないとも思えるが、しかし、人権という言葉を生み出したフランスではかなりの難題が待ち受けていそうだ。データ活用とプライバシー保護のバランスという、とてもデリケートな問題が憚る。来週、一体どれくらいの人がアプリをこの利用するのだろう。その結果が日本に与える影響は少なくない、かもしれない。

パリ最新情報「接触追跡アプリは人権の壁を越えて機能するか?」



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デザインストーリーズ編集部(Paris/Tokyo)。
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