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パリ最新情報「ついに日本の一日の感染者数がフランスのそれを超えた日」 Posted on 2020/07/17 辻 仁成 作家 パリ

日本の今日の感染者数がフランスの感染者数を抜いてしまった。これには驚いた。3万人を超える死者を出したフランスの今日の感染者数は534人で、それに対し、日本は全国で622人に上っている。あのイタリアをも超えてしまった。問題なのは東京の陽性率が6,2%(15日の)であるのに対して、パリは1,1%なのだ。マクロン政権は来週から(8月1日からだった法令を早めて)法令を強化し、公共の屋内でのマスク着用を全国民に義務付ける。そのせいで、薬局から再びマスクが消えはじめている。マスクをしないとスーパーにもレストランにもあらゆる店舗、公共施設などに入ることが出来なくなる。



フランス政府はものすごい数のPCR検査を続けてきた。東京都知事は検査数を4000人に増やしたから感染者数も増えた(のせた)とおっしゃっているが、フランスも積極的にやって1,1%である。都知事の発言からすると、東京が検査数をさらに増やしたら、パーセンテージも上がるということになるわけだから、裏返せば、いったいどのくらいの感染者がいるというのか、ということになる。東京の一日の感染者は286人どころじゃないのかもしれない。無症状の人は検査をすることもないので、その実態がつかめない。経路不明の陽性者は、この無症状の人たちから感染したのかもしれない。陽性率が5%を超えるとフランスでは黄信号と言われている。東京は、もしくは日本全国は現在、黄色い信号が点滅している状態かもしれない。この感染者数の右肩上がりの上昇傾向を見ていると、この数はまだまだこれから増えていきそうな不気味さしのばせている。

なぜ、フランスがあれほど酷かった状況からここまで感染者を減らすことに成果を出せたかということにも着目したい。徹底したPCR検査とそこから虱潰しの患者割り出しと隔離をやったからだと言われている。フランスの連帯保健省は実に精力的に感染封じこめの行動に出ている。衛生観念が数倍高い日本人のあいだで感染拡大が続いてるのは、逆に、日本政府や東京都が、オリンピックなどを意識してか、速度の遅い、歯切れの悪い政策しか打ち出せていないことに関係するのではないか。感染者数の発表時間がまちまちだし、今日に至っては午前中に小池都知事が280人を超えそうだ、と先にすっぱ抜く形での衝撃緩和策ともとれる異例の行動に出ていることも気になった。東京都が意図的に何かを隠しているとは思わないけれど、ぼくが心配しているのは、本当の数字というのが別にあった場合、新型ウイルスは水面下で都民の中で猛烈に繁殖しているのじゃないか、という点である。日本人はファクターXの理由で重症化しにくいとされているが、感染者が増えれば当然死亡率もあがる。新型ウイルスの変異の実態はまだ科学者たちも掴み切れていないのが現状で、アメリカで猛威を振るっているGH型のようなウイルスが、しかもアジア人向けに変異した場合が怖い。この危機管理を誰が、先見を持ってコントロールしているのかが、見えない。経済が先か、命が先か、という議論ばかりが繰り返されている。



そして、いちばんぼくが懸念しているのは、米軍基地で感染者が急増していることで、これは地位協定があるけれど、大至急、政府が米軍と話し合いをしてなんとかする必要がある。ここから変異した強いウイルスが日本国内に入ることの方がもっと恐ろしい。アメリカの一日の感染者数は、もう驚かないけれど、65370人(15日現在)に上った。一日の感染者数、日本の622人に対して、実に100倍以上である。ちなみに、1413人(15日現在)が一日で亡くなられている。今まで13万人以上の米国人が死んでいる。日本やフランスと比較しにくいレベルである。米国立アレルギー感染症研究所所長のファウチ博士は「10万人が一日に感染しても驚かない」と述べている。問題は日本各地に米軍の基地があり、そこはアメリカなのだ。そして、彼らは地位協定に守られながら、基地の外に出て、日本社会と触れ合っている。その結果、沖縄の米軍基地から7月だけで136人が感染者を出している。沖縄は今までに148人しか感染者を出していないのに、それに迫る数の米兵感染者がいることになる。アメリカで猛威をふるう変異型の新型コロナが日本に入ってくるとしたら、そこからかもしれない。

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Posted by 辻 仁成

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Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。