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ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」 Posted on 2019/12/02 辻 仁成 作家 パリ

日本のバーレスクダンサーの草分け的存在であり、世界を股にかけて(ほんとうに!)大活躍するバンブーさんにパリ6区のカフェでインタビューを試みた。12月に東京で行われるバーレスクのイベントも瞬時に完売した。
彼女が暮らすドイツのみならず、バーレスクの本場アメリカでも大人気。決して若くはない姉御、バンブーさんの魂の本質に迫る。ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」

ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」

 ユーはなぜベルリンに?

エロチカ・バンブーさん(以下、敬称略「バンブー」) イギリス人の元夫と娘、家族3人で日本に住んでいましたが、311の震災を機に元夫がベルリンに住むと決めました。その理由は、「ベルリンは物価が安い」から。ドイツでも、ベルリンだけ物価が安いんです。アーティストの街だし、89年まで壁があったから、東、共産主義のメンタリティが残ってる。働かなくても、その日暮らしでもオッケーな人たちが多く、働いてお金を稼がないといけない!みたいな脅迫概念があまりないです。どうにかなってしまう(笑)。でも最近はヨーロッパのお金持ちがベルリンの建物を大人買いしたおかげで家賃が上昇したり、グーグルとかも参入してきて、街も少しずつ変わってきました。それでも、他の街に比べるとまだ安いかな。ベルリンはパリに比べたらすごく田舎ですよ。コンペティションがない。流行のファッションがない。オリジナルのお洒落でオッケーだからすっごい楽ちん。

 ベルリンって食事はどうなんですか?

バンブー ベルリンの食事は素朴ですね。ジャガイモと肉、そして噛めばかむほど味が出るけど、人を殴れるくらい硬いパン!日本人の知り合いが料理本書いたりしてるんですけど、ドイツ人はレシピをドイツ人用に変えちゃうらしいです。アジア系レストランもドイツ人好みに味をかえちゃう。変えちゃうっていうのは、例えばお米の研ぎ方とか、省略しちゃったり。ベルリンも最近は少しずつ美味しいお店が増えてきましたけど。

 お米の研ぎ方くらいならいいんじゃない(笑)? ところで、12月に東京でバーレスクショーをされるそうですけど、それはどんなイベントですか?

バンブー そうなんです。私がプロデュースしているイベントで、 TOKYO TEASE BURLESQUE と言うんですが、今年で10年目になります。私はベルリンに住んでいますけど、帰国するたびにこのイベントを続けてきました。東京にまだバーレスクが根付いてない時代にはじめたイベントです。

 今は根付いてるんですか?

バンブー 根付いてきてはいますが、日本人の感覚でいうと、例えば、よくテレビで紹介されている「バーレスク東京」は、ショー・パブ風。でもバーレスクダンサーは出てないみたいですね。日本独自でそれはそれで楽しいと思います。

 ポールダンスとは違うんですか?

バンブー ちょっと違うんですよ。バーレスクの歴史は結構古くて、それこそ、パリとも繋がっているし、ベルリンとも繋がっている。



ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」

 すごく基本的な質問で申し訳ないんですけど、ストリップティーズとバーレスクの違いは何ですか?

バンブー ストリップとバーレスクは、シスターみたいな感じ。ショーの要素は近いですけど。元々キャバレーにあったショーダンサーがバーレスクです。お酒を飲んでいる席で、全部は見せないチラリズム。キャバレー付きのバンドがいて、バンドをバックにショーをするという感じです。今はもうほとんど日本では残っていません。ストリップは、もう少しSEXに近いというか。全部見せてお客さんと遊ぶ感じ。昔のストリップ劇場では女性の局部から矢を放って風船を割るなど、”花電車”という伝統芸があったり。それはもうお見事でした! あと、違いは客席との距離感かしら。ストリップは局部を出すとそこにぎゅっと視線が集まるからお客さんとの距離もぎゅっと縮まる。バーレスクは全部見せない分、踊り子さんが発するエネルギーや動きで全体を見せる感じですね。

 パリのピガール地区なんかにあるダンスショーには近いんですか?

バンブー クレージーホースとかですよね。あれもシスター!「レビュー」と言ってまたちょっと違うんですよね。フランスは、8頭身、9頭身美女のみ! アメリカではもう少しバラエティーに富んでいるんですけど。

 ディータ・ヴォンティーズというのはバーレスク・スターですよね?

バンブー ディータは世界で一番有名なバーレスクダンサーです。彼女はどちらか言うとレビューに近いですけどね。スタイルも完璧だし。彼女も20年近くやっているけれど、本当に綺麗。パリで来年、マネやロートレックも描いた歴史的な劇場フォリー・ベジュールで公演するのでご興味あれば是非。私の親友ダーティ・マティーニも出演しています。ダーティのお尻は私の10倍大きいの(笑)。

 なるほど。奥が深いなあ。

バンブー アメリカでは2000年初頭に「ネオバーレスクムーブメント」というのも起こりました。今までバーレスクショーはジェントルマン向けだったんですけど、女子が、私たちのためのバーレスクショーを!って立ち上がったんです。スタイルがいい子だけじゃなくて、お尻のおっきい子とか、いろんな体型の子が出てきてネオバーレスクブームを作りました。バーレスクがカルチャーとして根付いたのはやっぱりアメリカですね。LAとNYです。ディータをはじめ、私やダーティ・マティーニもアメリカでそのシーンを作ってきました。

ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」

<ディータ・ヴォンティーズのポスター>

 

ザ・インタビュー「何が人々を興奮させるのか、バンブー流バーレスクの魅力」

<ダーティ・マティーニ>

 


 そもそも、バーレスクの始まりはアメリカですか?

バンブー そうですね。でも、フランスかも知れないんです。わからないんですよ。それはバーレスク研究家の荒俣宏先生もわからないって言ってる(笑)。

 バーレスクの協会とかあるんですか?

バンブー あります。唯一、世界にひとつだけのバーレスクミュージアムというのがあって、元々アメリカのモハビ砂漠の真ん中にありました。前、記事に書きましたね。(「I am calling you… 伝説のバーレスクダンサーに会いに」)1950年代に活躍されたバーレスクダンサーが作ったミュージアムで、今はラスベガスに移りました。そこで年に1回バーレスククィーンを決めるコンテストがあって、私はそこで初めて海外から参加した変わり者です。ブロンドでも巨乳でもない昭和体系なのに初参戦で優勝してしまいました。ダーティ・マティーニが、いまだに笑いながら言うんです。「本当は私が優勝だったのに、誰も知らないエロチカが突然現れて、私の王冠もってちゃった〜」って。でもその翌年、彼女が優勝しました。ちなみに、早稲田大学の演劇博物館にも日本の踊り子さんのGストリングス(踊り子さんがつけるTバックのような衣装)が保存されています(笑)。

 バンブーさんは何年バーレスクをされてるんですか?

バンブー 今年で芸歴35年になります。ビバ・エイジング! あれ?今何歳、自分(笑)!?

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<バーレスクコンテスト優勝時>

 
 今、バンブーさんが考えるバーレスクを聞きたいですね。

バンブー 1930年のシカゴ万博に長いブロンドの髪で体を隠し裸で白馬にのって現れ、周りを驚かせたバーレスクダンサー、サリー・ランドの言葉を借りれば、”バーレスクダンサーはセンセーショナルであれ”。どこかパンク精神なんです。何だかおかしいぞ、この世の中って言う時にバーレスクは現れた。日本にバーレスクが登場したのは戦後の暗い時代でした。そこに現れた踊り子はリベラルの象徴といわれ”リベちゃん”と呼ばれていた。まさしくその通りだと思います。そして現代、自由なのに情報にがんじがらめになっている時代。「見てごらんよ、私たちを!おっぱいでフサを回せるんだよ〜! バカバカしいでしょ〜っ」て。意味もなく元気をなくしてるそこのあなた。暗い世の中に少しでも風穴を開ける、それがバーレスクダンサーだと思っています。芸術作品や音楽のように形が残らないから一体バーレスクってなに?って思われますが、私たちにできるのは”一瞬”。残像やその場で感じる空気や匂いや見えないキラキラしたもの。可愛らしくっていかがわしいもの。その人のフィルターを通して個々の想像力で夢の世界へ行っていただくショートトリップかもしれない。お芝居でもなくただのダンスでもない。お客さんからは、勇気もらった、元気になった、大笑いしたって言われます。演者もお客さんも一緒に作り上げる共同作業とも言えます。まあ一回観に来てください。個人的には無になれる瞬間です。いつの間にか”決めつけてる普段の自分”から離れ、肉体を使っているのにも関わらず、不思議と肉体から自由になれる場所。もうね、今流行りの麻薬なんかいらないから! 脳内自然栽培ですよ。

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 12月にあるイベントはどういうものなんだろう。

バンブー 「TOKYO TEASE」が10周年なのと、私の芸歴が35周年なのと、自分の年齢が12月で55歳で、全部足したら100じゃん! みたいな。まあ、テーマを考えようと思ったけど手っ取り早くこれでいいやって。

 あはは。「TEASE(ティーズ)」というのはどういう意味があるんですか?

バンブー ティージングという意味で、ストリップティーズのティーズですね。ストリップティーズからティーズが抜けたのがストリップ、ど〜んと全部見せるって感じです。

 あー。

バンブー ティーズって、じらすって意味で、あれです、カトちゃんの「ちょっとだけよ〜」、「あんたも好きね」。私はカトちゃんに出会ってなかったらこの世界に入ってないと思う! あとジョン・レノン。子供の頃、自分を信じろと教えてくれた。もうさ、当たり前すぎて有名人すぎて言いたくないのだけど。

 最後に、12月27日はどういう人達が出演されるんですか?

バンブー 東京で活躍しているトップのバーレスクダンサーの女の子と、ラスベガスにバーレスクの男版ボーイレスクっていうのがあって、そこから一人。彼は日本人なんだけど、もともと海外のオペラハウスやバレーカンパニーでプロダンサーを経験後、ボーイレスクを始めて、世界のバーレスクコンテストでトップなんです。あとは、京都から新人の子が一人。それと、ゲストミュージシャンにパラダイス山元さんの東京パノラママンボボーイズが出演されます。

 面白そうですね。場所はどこなんですか?

バンブー 渋谷の宇田川町にあるカフェ・ボヘミアというところです。宇田川町の番長と言えるお祭り好きの大谷社長が面白がってくださって。おかげさまでチケットが完売し、急遽エキストラチケットを販売し始めることになりました!

 お、すごい! 楽しいイベントにしてください。

バンブー メルシー!

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posted by 辻 仁成