地球カレッジ DS EDUCATION

「イノベータ―講座に参加して、ZOOMオンライン授業の未来について考えた」  Posted on 2020/10/02 辻 仁成 作家 パリ

昨日は、ZOOMを使ったイノベーターオンライン講座というものに参加した。革新的経営者の現状についての90分ほどのオンライン授業であった。
イノベーターというのは革新者のことである。
革新的経営者といえば、先のベルサイユ宮殿、エッフェル塔オンラインツアーを企画したTTP旅介の栗原茂行ことしげちゃんのことがすぐに頭を過ぎったので、交渉し、彼にゲスト参加して貰った。
「私」と発音できず、「わちし」とつんのめりながらエネルギッシュに語る熱血若社長さんである。
ぼくが偉そうに一人で喋るより、しげちゃんに、さらに若い起業家を目指す若い人たちに熱く語ってもらった方がいいと思ってお招きした。
コロナ禍のこのような時代に、いったいどうやって生きていけばいいのか、どうやってビジネスに取り組めばいいのか、そもそも新しい発想とはどうやって生み出すのか、どうやって自分らしさ(自分流)を貫けばいいのか、などについて激論を交わした。
もっとも一方的に喋っていたのはぼくだったけれど、しげちゃんとオンラインツアーを成功させるための裏話から、オンラインツアーの未来についてまで、幅広く議論が出来て、なかなか有意義な会議だった。
ちなみに、今日はなぜか、「わちし」とは言わなかった。
生徒さんたちを前にすると、しげちゃん、めっちゃ緊張していて、おかしい、…。
いつもの茂行ではなかった。笑。
なので「君のことは誰も見てないからいつも通りやりなさい」と言って和ませておいた。
人間というのは、周りが思っているほど、人のことなんか見てない。悪口言っても、だいたい、3歩歩いたらもう忘れてしまうのが人間なのである。
そういうものに振り回されても意味がない、というようなことを、遠回しで言っておいた。
「そうすね。はい!」
としげちゃんらしさが、戻り、そこから面白い対話がはじまったのだ。よしよし。



参加された生徒皆さんが、滞仏日記で何度も紹介したしげちゃんに生で触れて、いったい、どんな感想を持ったのか、聞いてみたかった。
しかし、実際の栗原茂行氏は実によく考え抜いた前向きな経営者であることがお分かりになったかと思う。
全国に10万から20万あると言われる介護施設の入居者を対象にしたツアーを今後も企画し続け、旅行業界に新しい風を起こすことは間違いない。
この発想が実に新しいと思う。しげちゃんは言った。
「追随者がいません。ぼくらが独走中です」
現在、素晴らしいことに、彼の分野でしげちゃんはトップランナーなのだ。
コロナが始まった2月、彼は8人の社員のうち、6人の社員を出向にだした。で、会社存続のために走り続け、なんとか未来が見えたので、その6人は現在、再び会社に戻ってきている。素晴らしいことだと思う。



彼はこれまでに何度も、介護施設から出られない人々を世界各地にお連れしたい、と豪語し続けてきた。
「これまでの旅は旅に出られる元気な方々のものでした。これからの旅は今まで自力で旅に出ることの出来なかった人たちを世界各地へ連れていけるものになるのです」
素晴らしい。
こういうのがコロナ時代のビジネス発想なのだろう、と思った。その情熱だけ、聞いていても熱くなるZOOM会議であった。

今回、メイン会場となったのは霞が関の帝京大学の大教室だったが、ぼくはパリから、しげちゃんは新宿の自分の会社からの参加で会った。
メイン会場での笑いや拍手というものまでは届かなかったけれど、主催の杉本先生によると、会場は拍手に包まれたり、笑いが起こったり、大変、盛況だったという。
ZOOMの授業の難しさ、新しさ、面白さが今後どのように進化していくのか、見守る必要がある。
しかし、しげちゃんと激論中に、皆さんのコメントが画面に飛び交うので、不思議な連帯感や双方向な意識を持つことが出来た。
もしかすると普通の対面式の講義よりも生徒の気持ちがよく理解出来たかもしれない。



「辻さん、心に響きました」
このようなコメントが激論中に、バンバン飛び込んでくるので、これは不思議な高揚を与えられた。
ポジティブなコメントばかりだったので、響いていることが理解出来たけれど、これが逆だと発言しながら萎えるかもしれないなぁ、とも思った。
ちなみに、ZOOM授業が便利なのは、直前まで家事が出来ること。専業主夫にはありがたい。
下じゃジャージだったけど、分からなかったと思う。
途中で杉本さんがカメラの角度を変えてもらえますか? と言われ、焦ったのは洗濯ものがほしてあったからだ。
こういうのがZOOM会議の怖いところ、面白いところでもある。
どちらにしても新しい形式の会議、ここのところこういう形での講義が続いているので、少しずつ資料の出し入れについても研究を重ねていき、距離感の壁を乗り越えて取り組んでいきたい。
10月11日は朝日の地球会議にも参加が決まっている。コロナ禍における様々な問題について議論をしたい。
また、ぼく自身、ZOOMを使ったオンラインの新しい講座を現在企画中なので間もなく発表するので、お愉しみに。
時代は少しずつだが、変化しているのは間違いない。

「イノベータ―講座に参加して、ZOOMオンライン授業の未来について考えた」 



自分流×帝京大学
第4回新世代賞 作品募集中

posted by 辻 仁成

辻 仁成

▷記事一覧

Hitonari Tsuji
作家。パリ在住。1989年に「ピアニシモ」ですばる文学賞を受賞、1997年には「海峡の光」で芥川賞を受賞。1999年に「白仏」でフランスの代表的な文学賞「フェミナ賞・外国小説賞」を日本人として唯一受賞。ミュージシャン、映画監督、演出家など文学以外の分野にも幅広く活動。Design Stories主宰。