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形容詞に思う、文化の違い Posted on 2017/08/04 スザンヌ 内堀 学生 パリ

言葉を教えるというのは文化を教えるということと密接に関係していると思うことがよくあります。

勉学の傍ら、持っている資格を生かして時々日本語教師としての仕事をしています。
日本のアニメと漫画が大好きだという10歳の女の子に日本語を教えるようになって半年ほどになりますが、先日、形容詞の基礎文法に入った時、子供の発想というよりは、フランス人ならではの発想になるほどと思わされたことがありました。
 

形容詞に思う、文化の違い

最初は基本的な「大きい」「近い」「可愛い」「美味しい」などを教え、そのあと色や味などの形容詞を導入したのですが、例文を作る練習で返答に困ってしまいました。
序盤では「うさぎは可愛いです」「この料理は美味しいです」などという例文を作っていた彼女は、色の形容詞を使った練習で「この人は白いです」という例文を差し出してきたのです。

フランスは人種の坩堝。差別的な意味合いがなくても、人の特徴を述べる際に肌や目の色で区別することはよくあるのですが、日本語の例文としてはどうにも違和感があります。と言って、間違っているわけではありません。
彼女からすると、「うさぎは可愛いです」と全く同じで、主語と、それに対応する特徴を形容詞で述べただけであり、文法上のミスもありません。
「私の作った例文、どう?」と、私の返答を期待する無邪気な彼女の瞳に、つい戸惑ってしまう私。

結局、日本人はだいたい肌も髪も目の色も同じ場合が多いからあまり言わないけれど、文章としては正解ですよ、というようなことを言ったのですが、「この人は白いです」という日本語の文章に漂う違和感はやはり拭えませんでした。
 

形容詞に思う、文化の違い

また、別の生徒は、味の形容詞に悪戦苦闘。彼は20代後半で、仕事関係で必要になり、日本語を習い始めました。センスがあるのか飲み込みが早く、授業はどんどん進むのですが、味の形容詞がいつまで経っても頭に入らない、といつも嘆いています。他の形容詞は問題ないのに、「レモンは?」「塩は?」となると、なかなか出てきません。最終的に彼は、「フランス人は、美味しいかまずいしか言いません!」と匙を投げそうになっていました。
その発言は極論でしょうし、実際フランス料理にも繊細な味わいはありますが、確かに「うまみ」や「コク」など、日本語の味に関する語彙は複雑、かつ数限りなくあります。それに加えて「とろーり」「ふるふる」などのオノマトペも多用するため、表現は更に複雑さを増していく…。

「うまみ」などはフランス語に訳すことが出来ず、「UMAMI」という新しい言葉がフランスの料理界で浸透しつつあるほどなのです。
 

形容詞に思う、文化の違い

こういった文化の違いから生まれる理解の齟齬や、表現をする上での違和感に出くわし、どう答えるべきか頭を抱えることは少なくありません。
日本の文化を教えるのも学習のうちではありますが、ここはフランス。生徒の状況や希望などによってその辺は上手く使い分ければ良いと思いつつ、違いを理解し受け入れた上で無理なく教えるというのは、やはり難しいものです。

外国語を教える、習う、ということ。それは知識としての言語だけでなく、文化を共有し、受け入れ、受け入れられることなのです。
 
 

Posted by スザンヌ 内堀

スザンヌ 内堀

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Suzanne Uchibori
学生。スザンヌはニックネームです。30代でまだ学生。ロケット工学の研究しています。欧州で一花咲かせたいけど、まだ何者でもないわたし。専門は亜酸化窒素ガスを酸化剤にし、合成ゴムを燃やすハイブリットロケットです。