PANORAMA STORIES

初ゴールの先につねにあるもの Posted on 2016/11/26 岡崎 慎司 プロサッカー選手 スペイン・カルタヘナ

チャンピオンズリーグ初ゴールを決めたあの瞬間、僕は無我夢中だった。

このゴールに限らず、僕はいつだってゴールを決めたその次の瞬間、我を忘れ、自分を放り出して、不意に猛然と走り出してしまう。それから、集まって来た仲間の笑顔に囲まれ、ゆっくりと我に返ってゆく。
そして、何故だかホッとしてしまう。束の間、ホッとしてしまうんだ。

ただ、今回のゴールは我が人生における新たな一歩に繋がるゴールだった。

Jリーグ初ゴール。
代表初ゴール。
ブンデスリーグ初ゴール。
プレミアリーグ初ゴール。
ヨーロッパリーグ初ゴール。
そしてチャンピオンズリーグ初ゴール。

自分の歴史に新たな1ページが刻まれた瞬間。これは特別なことだ。だからこそ、このゴールを誇らしく思う。
我が道を行くと決めて突き進んできた僕にとって、これは何よりも僕自身を励ます、僕に強い自信を与えてくれたゴールなのである。

初ゴールの先につねにあるもの

けれども、そんな風に喜ぶ一方で、僕はまたしても自分のプレーについて反省をしている。
そこにはすでにいつものように冷静に自分自身を見つめる自分がいる。

特別なゴールを決めたそのすぐ直後、おそらく僕の意識や肉体はもう勝手に自分の未来を見つめ動き出している。
ゴールを決めた束の間のホッと一息は、おそらく切り替えのための一呼吸に過ぎない。

僕にもそんな自分自身のことがよく分からない。
何故こんなにも達成感に浸れないのだろう?
きっと、成功や挫折を幾度となく繰り返してきたせいだ。
その過酷を乗り切るための強い信念と鍛錬がいつしか習慣化してしまったのだ。
続けなければ意味がない。
この先も満足することはできないと思う。

人は自分が挫けそうな時にこそ必ず過去を振り返る。そして自分が歩んできた道を、あるいはやってきたことを思い出す。だとすれば、その時にこそ、今日のゴールが大きな意味となって、僕を助けてくれるんじゃないか。

いつか、このゴールが迷う未来の僕に自信を与えてくれるに違いない。

初ゴールの先につねにあるもの

そして、今、僕はすでに次へと向かっている。
いつものように次の試合のことだけを考え、着々と準備をはじめている。

Posted by 岡崎 慎司

岡崎 慎司

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Shinji Okazaki
プロサッカー選手。1986年4月16日、兵庫県宝塚市生まれ。滝川第二高校を経て2005年、Jリーグ清水エスパルスに入団。チームの中心選手として活躍する。2011年ドイツ・ブンデスリーガのVfBシュツットガルトへ移籍。2013年マインツでプレー後、2015年イングランド・プレミアリーグのレスター・シティに移籍。レスターがプレミアリーグ初優勝。現在はFC CARTAGENA、カルタヘナ活躍中。ポジションはFW。