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買う喜び、育てる悦び Posted on 2017/11/11 まきの ななこ ライフスタイルキュレーター アムステルダム

日に日に陽が沈むのが早くなり、オランダにも本格的な秋がやって来ました。芸術の秋というのは古今東西共通のようで、ヨーロッパでもこの時期は新しい展覧会やアートフェアが目白押し。アート好きには一年で一番忙しい時期の到来です。

ところで唐突ですが、皆さんはアートを買ったことはありますか?

アートというとなんだか敷居が高くて、べらぼうに高価で、美術館や博物館で観るだけのもの。少し前までは私にもそんなイメージがありました。
でもヨーロッパに住むようになり、友人の家を訪れるたび、壁が写真や絵画で埋め尽くされている光景に出くわすにつけて、なんとなく自分の中でもアートとの距離が縮まって来たのでしょうか。もしくは自分でオークションやギャラリーを廻るようになり、“こんな自分の身の丈にあった作品もあるんだ!” という出会いを繰り返すうちにでしょうか、以前は靴やバッグに使っていたお金を少しずつセーブして(笑)、いつからかお気に入りの作家さんの作品に費やすようになりました。
 

買う喜び、育てる悦び

それでもアートって実際のところどこで買えるの? とお思いになる方も多いと思います。今はインターネットもあるのでオンラインオークションに参加することも出来ますし、直接、アーティストの方にコンタクトしてみることも出来ます。でも、初心者にはなんだか少し不安な気もしますよね。

そんな理由から私は、ピンときたアートフェアやギャラリーをはしごして、夢に3回出て来るくらい、どうしても気になる作品に出会ったら、あらかじめ自分で決めた予算内で買える、そして部屋に飾った生活が想像できるものだけにアプローチすることにしています。

ギャラリーでは金額も明記されているので明瞭会計(笑)。
アフターケアやフレーミングもしてくれるので安心です。そしてさらにオランダでアートを購入する際の心強い味方。それが ”モンドリアン・ファンド” という基金の存在です。
 

買う喜び、育てる悦び

買う喜び、育てる悦び

「モンドリアン」という言葉は聞いたことがある方も多いはず。そう、日本にもファンが多い、あの垂直・水平の直線的なラインと青・赤・黄の3色を使った抽象的なデザインが斬新な『デ・ステイル』という様式を築きあげた、あのモンドリアンさんのことです。
そんな彼の名に因んで創設されたモンドリアン・ファンド。ビジュアルアートを中心に若手アーティストの育成、活動資金援助など幅広い活動をしているようですが、その一環として提供されているのが”Kunstkoop”というサービスです。これはオランダ国内、100以上にのぼるギャラリーで、個人がアーティストの作品を購入する際に、その利子をモンドリアン・ファンドが肩代わりしてくれるというもの。
残念ながら現時点ではオランダ居住者のみに限られているようですが、しがない個人コレクターにとっては、とても嬉しいサービスです。
 

買う喜び、育てる悦び

買う喜び、育てる悦び

折しも今年は、モンドリアンの提唱した『デ・ステイル』が誕生してから100年。オランダ各地で彼に因んだ展覧会も開催されています。
71歳で亡くなる直前まで飽くなき探求を続けたというモンドリアン。ファンドのサービスを通じて購入したオランダの若い才能の作品を前にすると、何か私の中にも新しい挑戦への決意と覚悟がふつふつと込み上げて来るのを感じます。

美術館で鑑賞するのとは、また一味違うお家アート。
一度経験すると病みつきになる中毒性があるような気がして、私にとっては食欲の秋より危険な芸術の秋なのであります。
 

買う喜び、育てる悦び

 

Posted by まきの ななこ

まきの ななこ

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Nanako Makino
ライフスタイルキュレーター。シカゴ、東京、モスクワ、ロンドン、、、一期一会に生かされて。新しいホテルやブランドなどの立ち上げに携わりながら様々な都市を巡り、2014年よりアムステルダム在住。オランダ語見習い中。放浪癖あり。