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トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き Posted on 2019/02/20 ムーケ・夕城 トリュフ栽培士 フランス・ドルドーニュ

「食す」前に「探す」醍醐味を与えてくれるトリュフ。
地中に隠れたブラックダイアモンドを探す名人といえば、雌豚と犬ということは広く知られています。雌豚は、雄豚が分泌する性フェロモンに似ているトリュフ香に魅かれて見つけ出すので訓練すら必要ありません。本能で見つけます。ですが、雌豚とのトリュフ探しは毎回命がけ。忠実な犬がご主人様のためにトリュフ探しをするのに対して、豚は自分の大好物のためにトリュフを探します。百キロ以上はある巨体の興奮した豚と、地面の小さな穴めがけて毎回競り合わなければならないのです。想像するだけでも大仕事です。

そんな事情もあって、近年では従順な愛犬との共同作業が主流になっています。フランスでは犬の鼻頭を“トリュフ”というのですが、この2つのトリュフが突き合わさる構図は運命的かつ象徴的でもあります。
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

犬は半径80m、地下20㎝にあるレンズ豆くらいの大きさのトリュフでも探知することができます。全種類の犬がトリュフ犬になることは可能ですが、数十ヘクタールに及ぶ宝探しは犬たちにとっても重労働。茂みの中でも動きやすい比較的毛の短い種、宝物を見つけ出すための武器、その鼻が地面から遠すぎることもなく近すぎることもない中型犬がトリュフ狩りにはむいています。狩猟犬は秀でた嗅覚はあるものの、アニマル臭に気をとられるため集中力に欠ける傾向があります。
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

訓練をほとんど要さない生まれながらのトリュフ犬も存在します。イタリア種のラゴト・ロマニョロは、もともと穴掘りが大好きで並外れた嗅覚の持ち主。忠実で飼育しやすい犬種に加え、プードルに似た愛らしい容姿。可憐な相棒は、トリュフ園の前に立つと真剣な眼差しを放つ勝負師へと変身を遂げるのです。
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

動物と人間によるトリュフ・ハンティングは、まるでスペクタクルを見ているよう。主役は、ご主人様の期待を胸に、すべての神経を嗅覚に集中する犬。標的となる香りを察知すると勢いつけて穴を掘り始めますが、ご主人様がそこからは俺に任せろ、と言わんばかりに駆けつけると潔くその場を明け渡すのです。手でそうっとトリュフに傷をつけぬよう土をかき分けていく。見つからないと今一度その場を犬に委ねる。克明な位置付けをし、必要であれば更に土を掘り起こし最後の採取作業を人間の手に渡す見事なパートナーシップ。中には掘り当てた宝物に傷をつけないよう用心深くそうっとくわえ、ご主人様のところまで運んでくる優等生もいます。
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

かと思えば、見つけたトリュフを人の目を盗んでするっと喉元に滑らすいたずらっ子も。この思いがけないハプニングがまた楽しい。観客は、その偉業にほぉーっと感心したり、喉元に消えた宝物にあぁーっと吐息を漏らしながらもそのちゃっかり加減に笑みを溢したりするのです。

素晴らしいパフォーマンスの後はもちろんご褒美を。トリュフ犬の好物は、クッキーやハム。人間界でのトリュフの価値を知ったら、犬たちから不正当な取引だと申し出を受けそうですね。
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

ペリゴール地方のトリュフ狩りのシーズンは、冬トリュフが12月から2月、夏トリュフが5月から8月にかけて。
ペリゴール版「ここ掘れ、ワンワン」是非、一度観にいらっしゃいませんか?
 

トリュフ犬と飼い主のスリリングな駆け引き

 
 

Posted by ムーケ・夕城

ムーケ・夕城

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Yuki Mouquet
トリュフ栽培士
トリュフ園所有。トリュフ栽培協会会員。Best of Perigord主催。土やガラスを使った創作活動も行う。パートナーはフランス人ミュージシャン、ディープ・フォーレストのエリック・ムーケ。自宅スタジオにやってくる音楽関係者のレセプションも担当。2児の母。