JINSEI STORIES

滞仏日記「僕がパリに買って帰る日本の美味しいものたち」 Posted on 2019/04/18 辻 仁成 作家 パリ

 
某月某日、ロケハンが終わり、東京に戻って来た。パリに帰る荷造りをはじめた。フランスに戻る直前にトランクの空きスペースを確認してから、僕はスーパーやコンビニに生活必需品や食材を買いに行く。僕のような海外生活者が買うのは、味噌、海苔、ゴマ塩(玄米にかけて食べると最高なんだ!)、梅、ダシ、蕎麦、ジャコ、すりごま、チューブわさび、などだ。これらはどれもパリで手に入るのだけど、日本の倍の値段はするので、しかも種類が選べないから、日本で買って帰ることにしている。あえてコンビニレベルのものがいい。スペースに余裕があると、ウイスキー(竹鶴とか山崎はフランスの方が買えるので、あえて角とか知多とか)、日本酒、ゴマ油、玄米、塩昆布、白米なども買う。チューブのワサビは日本食好きなご近所さんへのお土産にしたりすると喜ばれる。在仏日本人へのお土産で喜ばれるものは、カレーせんべい、ダシ、梅、海苔、蕎麦、稲庭うどん、など。時々、見つけて買って帰ると日々が楽しくなるのが、鮭とか味噌鯖フレークの瓶詰、食べるラー油系、ふりかけ各種(ゆかりとか。かおりというのは青じそ味なのだ!)梅味の柿の種、フランスでは売ってない高級カップラーメン(これはお土産にもなる)、お酒のおつまみ(息子の好物である燻製のうずらの卵、自分用に乾燥シシャモとか)、などである。

今回は短い日本滞在中に福岡と新潟に寄ったので、そこの特産品もお土産として結構買い漁った。福岡の茅乃舎の「野菜だし」は今でこそ大人気だが、僕はまだ人気になる前から着目して料理に使っていた。ひそかな自慢。パリでは手に入らない食材を買って帰った後は、我が家で腕を振るって和食を拵え、在仏日本人の仲間を集めて宴会するのが楽しい。行きつけのバーのバーマンやワイン屋の店主には新潟で八海山の珍しい白の小瓶の「純米吟醸、雪室貯蔵三年」というのを買った。自分用には今代司の「錦鯉」を持って帰る。そういえば、熊本の友人が必ずくれる佐田海苔店の「佐田の焼海苔」が我が家の定番。今回はダンチューの編集長に彼がパッケージを担当したという「明石のり」(いい状態の時にしか売らないものらしい)を頂いた。絶対に間違いなく美味しいものが溢れかえったトランクなのである。

とどめは手持ちで買える空港の食材たちだ。トランクをカウンターで預けた後、羽田空港のお土産屋に立ち寄るのが好きだ。生わさびのチューブが空港で買えるのでそれは行きつけの寿司屋に自分用としてキープわさびにしてもらったりしている。隣のフランス人が珍しそうに覗き込むので、にやにやしながら少し分けてあげたりすると、彼らがそれを口に入れた瞬間の目がどんどん丸くなるのが実に愉快でたまらない。羽田空港の「焼き鯖寿司」は息子のために必ず買って帰り、二人で一本ずつがつがつ食べるのがここのところの辻家再会の大イベントになっている。24時間持つのでパリに戻ってから食べられるので重宝している。真空パックの鰻もいいよ。空港で必ず買う「ふくやの明太子」も息子は大喜び。「崎陽軒のシュウマイ」やおしんこ各種、時に珍しい和テイストの缶詰なども、キッチン呑みの時に有難いので買って帰る。あ、忘れていた。かっぱえびせんとか、青のりのポテトチップスとかザ・日本のスナック! なんなら全部持って帰りたいのだけど、そうもいかないので悩む。日本にいた頃にはこれらの有難さがいまいちわからなかった。かっぱえびせんをカリっと音をたてて食べる時に口の中で広がるエビ風味が、僕にとっての祖国の味だったりする。蚊取り線香も買う。フランスは冬蚊がいるので、何気に有難い。ともかく、帰仏する時のお土産買いはほぼ中国の観光客の爆買いに負けない勢いであることは付け足しておく。日本の食材は世界一。
 

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