JINSEI STORIES

滞仏日記「面白き事も無きこの世を面白く」 Posted on 2019/07/02 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、息子からやっとメッセージが届いた。「試験、うまくいったよ」だけだけど、まあ、よかった。安心した。日々、一喜一憂というのがある。それが生きることなんだな、と思う。それで今日は、僕はどうやって自分を動かしているのだろうと考えた。なぜ、こんなに毎日、一生懸命生きているのだろう、と。何が僕を動かしているのだろう、と。なぞだ。どこから出てくるのだろう、次から次に、このやる気。(笑)やる気君、君は僕をどうしたいの?

だいたい、こんなにたくさんやることがあるのに、毎日、日記も書いてるし、日記だって適当に書いてみようと思ってはじめたのに、結局、休まず毎日書いていて、皆勤賞ものじゃないか。

そもそもこのデザインストーリーズもどこまで続けるつもりなんだろう? そもそも、僕はこのデザインストーリーズをどうしたいと思っているのだろう? なんとなくDSをスタートさせて4年近い歳月が流れた。マネタイズとか何にも考えないでここまで来たけど、それでいいとは思えない。いったい僕はいくら使ったのか、想像もできない。たぶん、取材費とか構築とか人件費とか、物凄い時間と労力は使ってる。でも、何が出来るだろう、と真剣に考えないと、続けていくにも続けられないということもある。お金稼ぎからスタートさせたくなかったし、どこまでやれるか、少なからず遊びであっても投資は必要だし、ここまでやるか? 友達に「ツジ、頭大丈夫か」と言われながら、毎日日記も書いているし、インタビューなんかもしているし、たぶん、僕は普通じゃないのは確定。(笑)でも、おかげ様で、ここのところPV数も伸びて、月間100万PVを超える月が出てきた。そりゃ、大手のウェブマガジンからしたらたいした数字じゃないけど、個人でやっていると思えば、そんなにたくさんの読者がいるということは励みになるし、頑張って続けなきゃ、と思うのは当然であろう。

DSの未来について、ちょっとは考えている。僕は経営者ではないので、誰か経営者と組まなきゃだめだな、とも思いはじめている。任せられる人がいるなら、任せたい。(どこかに、いませんか?)デザインストーリーズで一番やりたいことは学校だ。世界各地で、特にパリで活躍する仲間たちやこのウェブサイトで書いてくださっている執筆者たちはタダモノじゃない。みんな海外に出て、そこで頑張る日本人たちだ。なので、僕らでパリ学校を作ったら面白いじゃないか、と僕はおぼろげに考えている。とりあえず辻校長だ。海外ツアーもやったら面白いじゃないか、という計画がある。DSパリツアーだ。僕がオススメのパリを案内したらどうだろう。それをDSでツアーにする。どっかの旅行代理店と組んでやればいい。執筆者の中には優秀なガイドさんも数人いるし、美術館の専門家もいるし、やろうやろう、と言い出した人がいて、いいね、いいね、ととりあえず僕は小さく同意した。でも、こういうことは一夜にしてアイデアが出てきたわけじゃなく、僕がこのウェブサイトマガジンをだらだらと続けてきた過程で、生まれてきたアイデアでもある。つまり、好きなことをやっていると、好きだからこそ、それが何か面白い形になっていく。ダメでも、うまくいかなくても、それは好きなことなんだから、と諦めもつく。リスペクトしあえる仲間たちとやれたら楽しいだろうな、と思っている。さあ、どこまでできるだろう。とりあえず、僕は経営が出来ないので、経営担当を探さなきゃ。面白き事も無きこの世を面白く、という高杉晋作の言葉が好きだ。好きなことなら、どんなに忙しくても、大変にはならない、苦にはならない、ということなのである。えへん。

滞仏日記「面白き事も無きこの世を面白く」