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パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」 Posted on 2022/03/24 Design Stories  

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

 
パリ15区のポルト・ド・ヴェルサイユ展示場で、3月16日から20日までの4日間、年に一度のクラシックカーの祭典「レトロ・モビル」が開催された。
クラシックカーに疎い筆者も、新たな刺激を求めて向かった。
中に入ると、ガレージ特有の機械油の匂いが漂い、懐かしい気持ちになった。
 



パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※「クラシックカーが並ぶ、全体の雰囲気も美しい」というマダム

 
「レトロ・モビルに来たのは初めてなのよ。車の形の美しさが好きで見に来たの。あ、メカのことは全然わからないわよ」
詳しそうな人に教えを請うつもりで、熱心にクラシックカーを撮影していたマダムに声を掛けてみたのだった。
詳しくないから見方がわからない、と考え込んでいた私は、この一言にハッとさせられた。
美術館で彫刻を見るような感覚で、純粋な造形美を楽しむということを知った。
ちなみに、マダムと出会った場所は、「遅い車」がテーマの展示。
バスタブに車輪が付けられたもの、四角くて空力抵抗が高そうなものなど、速く走れなさそうな車が並んでいた。
やっと走ることができるレベルの愛嬌ある車たち。
 

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※走るバスタブ

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※クラシカルな素材の組み合わせが楽しい

 
次に向かった先は、世界で初めて作られた車「Le Fardier de Cugnot」。1769年にルイ15世の命を受けた、軍事技術者ニコラ・ジョセフ・クグノが設計した。
大砲やその架台を移動させるためのものだが、国の軍事機密ということで、長らく隠されてきたという。
会場で展示されてたのは2007年に再現されたレプリカで、窯の部分で蒸気を起こし、その動力で進む。
ちゃんと稼働するのだ。
この車が作られたのはヴォワ=ヴァコン (Void-Vacon)という、フランス北東部の町で、そこで再現するための活動をしていたメンバーが丁寧に説明してくれた。
 

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※当時の衣装に身を包んだ人たち

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※ミニチュア模型で仕組みを説明してくれた

地球カレッジ



 
そして、フランスのクラシックカーといえば2CV。
愛好家が集まるクラブの展示を眺めていたら、「150万円の2CVが当たる懸賞に参加しないか? 2€だよ!」と声を掛けられた。
ムッシュの横には美しい2CVが置かれていたので、賞品の車はこれ? と尋ねたところ、「とんでもない!これは2000万円の品だよ!」と大慌て。
同じ2CVのクラシックカーでも、150万円と2000万円の差が出る理由が気になった。
 

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※2CVファンクラブのムッシュと2000万円の2CV

 
聞けば、2000万円の展示品は1961年製で、石油会社トタルがサハラ砂漠を走行するために、エンジンを2基積んだ特別仕様の4輪駆動車だという。
一般的な2CVのガソリンタンクは、荷室の部分に収まっているが、特別仕様のものは2基目のエンジンが荷室の場所を取ってしまっているため、ガソリンタンクはフロントシートの座席下に付けられている。
2CVの名前の由来は「2 CheVaux(二馬力)」だが、この車は2馬力以上ありそうだ。
車の背景にある「サハラを駆ける特別仕様車」という物語が、付加価値になるようだ。
ここまでの話を聞き、思わず懸賞に参加してしまった。
賞品の2CVは、この特別仕様のものではないけれど、夢を買いたくなった。
 

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※ガソリンのタンクは、シートの下に



 
また、会場の中心で、最も大きな面積で展示していたのは、今年で生誕50周年を迎えたルノー5。
過去の名車がズラリと並ぶ中、一番の注目を集めていたのは、新旧2台のルノー5で、モダンに復活した黄色いコンセプトカーと、その後ろを改造したクラシックカーだ。
クラシックな車両には「私は電気自動車のルノー5です」という吹き出しがついている。
これは、最近、フランスで話題の「retrofit(レトロフィット)」と呼ばれる、クラシックカーをEVにリメイクしたものだ。新旧ともに電気自動車という粋な展示。
 

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※黄色のコンセプトカーと水色のクラシックカー

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※「私は電気自動車のルノー5です」

 
最後は日本車がたくさん並ぶコーナー。
クラシックカーを「Old-timer」と呼ぶが、フランスにはそれをもじって「Young-timer」という、そこまで古くない車のジャンルがある。
90年代初頭から2000年代初頭までの若者向けのスポーツカーだ。
こちらのコーナーには、日本車がズラリ。
スバルインプレッサ、三菱ランサー・エボリューション、トヨタセリカなど、WRCラリーの勝者たちだ。
 

パリ最新情報「レトロ・モビルでフランス人にならう、クラシックカーの愉しみ方」

※三菱ランサーエボリューション

 
会場に来ている人達はみな饒舌で、色んな人からたくさんのことを教えてもらえた。
超満員だったが、クラシックカーを愛する人たちの、大好きな気持ちが溢れる会話が飛び交う、心地よい空間だった。
(ウ)
 

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