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退屈日記「いよいよ、大学病院へ向かってGO!!!!」 Posted on 2022/11/14 辻 仁成 作家 パリ

某月某日、よく寝た。9時間半くらい爆睡って、ぼくからするともの凄く珍しいことなのだ。
今日の歯の手術に怯えていたにしては、ここ最近の最高記録ぐらい熟睡が出来た。どういう神経しているのだろう。
ま、手術の朝にびびっていてもどうにもならないし、数時間後には終わっているのだ、と思うと、もうここでじたばたしてもしょうがないしね。
朝、起きたら知人から数本メッセージが入ってた。だいたいこんな感じ。
「緊張されていますよね。でも、始まれば終わりますから、頑張ってください」
「部分麻酔では術後は口の感覚がなくて唾液も口から垂れてしまうし、全身麻酔は24時間は朦朧としますし、顔は腫れ、発熱するだろうし、足元もおぼつかなくなるので、気をつけてくださいね。全身麻酔は、久々に熟睡できるチャンスだと思って、頑張ってください」
「術後は飲み物がのめなくなるので、ストローを用意した方がいいです。あと、今日は食べられないから、朝はしっかり食べていくように」
などなど・・・。
なるほど、ストローは買って行こうと思った。
でも、そこまで緊張はしていない。往生際はけっこういいのだ。いつも、手術の時はじたばたしない父ちゃんなのであった。
昨夜は、コンビニまで行き、ちゃんと朝ご飯の準備もしておいた。えへへ。

退屈日記「いよいよ、大学病院へ向かってGO!!!!」



それにしても9時間ノンストップで眠れたのは快挙だった。
ぼくはショートスリーパーなので2時間おきに必ず目が覚める。
それが手術前日に9時間爆睡かぁ、笑えるなぁ。度胸あるなぁ。
この後、昨夜買っておいたおにぎりを食べ、抗生剤と痛み止めを飲んで、10時半くらいに家を出て、11時に病院で受付をする。
11時半から手術という段取りで、ちょうどいま映画の仕上げが佳境なので、プロデューサーさんからは「もし、体調悪くなければ、顔出してほしい」と言われている。
「もちろん、体調良ければ行くよ」とお返事しているのだけど、全身麻酔になったら、一日朦朧とするなら、今日は難しいかもしれないなぁ・・・。
今は、ぜんぜん、食欲がないのだけれど、お薬を飲まないとならないし、今日は食事が喉を通らないですよ、と歯科衛生士さんに言われていたので、ちょっと多めの朝食を用意した。
お蕎麦とおにぎり、卵焼き。あはは。遠足に行く気分である。
とにかく、出発の朝なのだけど、日記の作者としてはこういうことはきちんと記したいと思って、パソコンに向かってみたのだけど、ようは、あまり今は緊張していない、ということである。
それよりも歯の検診に行ったら歯茎の中に虫歯が発見され、手術をしないとならない、と言われたあの日はさすがに人生が真っ暗になった。
あの日に比べれば、爽やかな朝である。
ここで手術をしてしまえば、フランスに戻って煩わしいことを抱えて年末を過ごさないでもいいし、このタイミングで歯の問題がわかったのは神様(信仰はありません)のお導きゆえなのであろう。
そう思うと、先日の皆既月食も月の方々が、ひとなり、がんばれよ、という応援メッセージかもしれないし、ぼくは月族の末裔だからね、「無事に生き切って月に帰還するように」という月族王朝からのシグナルとも受け取れる今日の手術なのであった。なんやねん。
あはは。
ご清聴ありがとうございました。
「合言葉は、熱血~」

退屈日記「いよいよ、大学病院へ向かってGO!!!!」



つづく。

今日も読んでくれてありがとうございます。
ひとつよくわかないのは、ぼくの歯茎、親知らずが中にあると言われている歯茎は薄くて、何にもないのですけど、そこに親知らずが埋まっているとはとても思えない薄さで、仮にあるとしたら、それを抜いた後、薄い歯茎はどうなっているのか・・・。その向こうは上顎というか、目の下、なんですけど。ううう。
ま、とはいえ、準備万端な父ちゃんです。がんばって、行ってきたいと思います。熱血~。

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