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パリ・アート情報「パリのカルティエ財団現代美術館、リニューアルレポート!」 Posted on 2025/11/04 Design Stories
 
2025年10月25日、パリのカルティエ財団美術館(Fondation Cartier pour l’art contemporain)が、大規模なリニューアルオープンを果たした。今回は実際に訪れてみたので、新カルティエ財団美術館がどんな場所であるのか、そしてパリの今を映す最新の美術館がどんなものであるかを、合わせてご紹介したい。
 

 
ルーブル美術館のすぐ隣という、絶好のロケーションに建つカルティエ財団美術館。アクセスの良さもあって、早くもパリ観光に組み込みたい“新定番”のアートスポットになりつつある。
 

 
そんなカルティエ財団美術館は、もともとパリ14区に位置していた(2025年中に閉館予定)。新しい場所で建築を手がけたのは、フランスを代表する建築家ジャン・ヌーヴェル。街との一体感を重視した明るいデザインは、カルティエ財団が掲げる「開かれた文化」という理念にもぴったりだ。
 

※ガラス窓から道行く人やバスが見える、オープンで明るい館内

 
館内は、予想をはるかに超える大きさで、第一印象では「展示方法が非常に斬新」だと感じた。しかも展示というより、魅せることを確実に意識した空間になっている。
それもそのはず、館内は5つの可動式プラットフォームによって構成されていて、11段階の高さ調整が可能だという。つまりここでは、季節のエクスポジションごとに展示スペースを大変身させることができるのだそう。
 

※アーティスト名もエントランスに大胆に表示されている
 
前置きが長くなってしまったが、現在ではオープニングを記念する展覧会「エクスポジション・ジェネラル(Exposition Générale)」が絶賛開催中だ。
これは1984年の設立以来、カルティエ財団が収集してきた作品群を紹介する、いわば“再出発”のための大展覧会。財団が支援してきたおよそ100人のアーティスト、約600点の作品が集まっている。
 

 
展覧会は、大きく分けて4つのテーマで構成されていた。これは、現代アートを「4つの地図」で表すというもの。比喩的だが、それぞれが現代アートを読み解くためのヒントになっている。
 

※ボディス・イセク・キンゲレス『Projet pour le Kinshasa du troisième millénaire』
 
たとえば、エントランスに入るとすぐ始まる第1章「Machines d’Architecture(建築のメカニズム)」では、建築が「展示物」ではなく「体験の場」として紹介されていた。模型やインスタレーションを通して、建築の社会的役割・未来へのビジョンを模索するという内容だ。
 

※ルイス・ゼルビーニ『Natureza Espiritual da Realidade』
 
続く第2章「Être nature(自然であること)」では、都市に息づく「生きものたちの世界」が登場。ここでは、人間だけに焦点を当ててきたこれまでの考え方を見つめ直し、生態系を守る上で美術館がどんな役割を果たせるのか? を問いかけていた。
 

 
さらに「Making Things(ものづくり)」の章では、クリエーションを「実験」と「越境の場」として紹介。アート、クラフト、デザインの間に新しい繋がりを発見し、その表現方法が更新されていく様子を見せていた。
 

※アレックス・チェルヴェニー『Mondo Reale: Stop, Look and Listen』
 
最後の「Un Monde Réel(現実世界)」では、テクノロジーやフィクション、サウンドを組み合わせた斬新なアートが登場する。これは今の世界を読み解きながら、人間がつくり出した世界の複雑さを描く、という何とも鋭い内容だった。
 

※日本の写真家、森山大道氏の作品も
 
館内では4つのテーマに加えて、カルティエ財団が所蔵する代表的なアーティストの作品も数多く公開されている。日本からは美術家の横尾忠則氏、そして写真家の森山大道氏の作品が美しく並べられていた。
 

※館内には書店とカフェがある。サラダ・サンドイッチの軽食もあり
 
10月25日から始まったオープニング展の「エクスポジション・ジェネラル」は、2026年8月23日までの開催だ。しかし、カルティエ財団はそれが終わった後もきっと、今回のように興味深い企画展を続けていくのだろう。
本日は移転後のオープニング展が、規模・見ごたえ・内容の深さのどれを取っても想像以上だったことをご報告したい。現在では最寄りの地下鉄通路にもコンテンポラリー・アートが展示されていて、まさに「地域そのもの」がアート会場となっている。(大)
【カルティエ財団(Fondation Cartier pour l’art contemporain)】
住所:2 Place du Palais Royal 75001 Paris
最寄り駅:メトロ1番線、Palais Royal Musee du Louvre駅
開館時間:火曜~日曜日、11:00~22:00、月曜休館
「Exposition Générale」展:2025年10月25日~2026年8月23日まで
入場料:一般15ユーロ
公式ホームページ:https://www.fondationcartier.com/
 


