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パリ・アート情報「多彩なピカソを体感!パリのピカソ美術館」 Posted on 2025/11/07 Design Stories
パリのピカソ美術館は、天才ピカソの作品をまとめて見ることができる貴重な場所。
ニューヨークやバルセロナなど、世界にいくつかあるピカソ美術館だが、フランスとピカソの濃厚な関係を知るにはここがやはり一番興味深い。建物の美しさ・素晴らしさもあって、アート鑑賞のムードを一層高めてくれる。


1900年代初頭、パリ万博をきっかけにフランスへと移ったパブロ・ピカソ。祖国スペインが政治的に不安定だったということで、1973年に南仏の町ヴァロリスで亡くなるまで、人生の大半をフランスで過ごしている。91年という長い生涯において、作風がダイナミックに変わっていったことでも有名だ。

パリのピカソ美術館には、そうした変化を辿ることができる約5,000点の作品が所蔵されている。これは、世界でも類を見ないほど大規模なコレクションだという。確かに、ピカソ自身の絵画や立体作品、そして陶芸家として活動していた頃の作品など、実にさまざまなジャンルの作品が集まっている。
そんなコレクションから見えてくるのはまず、ピカソがどれほど多才だったか、そしてどれほど多作だったかということだ。
展示室の一階では、早速「青の時代」の名作『自画像』に出会えたりもする。ピカソがお好きな方なら、これらに出会えたときの感動が非常に大きいのではないだろうか。


※『Nature morte à la chaise cannée(籐椅子のある静物)』
パリのモンマルトルに定住し、人生に安定感が出てきた「ローズ(バラ色)の時代」、ピカソの名を知らしめることになった「キュビズムの時代」の展示もまた素晴らしい。
中でもユニークだったのは、椅子の籐張りを模した作品『籐椅子のある静物』。これは、モダンアート史上初の“コラージュ作品”だという。「絵の中に現実そのものを貼り込む」という発想からきていて、「絵画とは何か?」という概念をひっくり返した作品とのこと。

※『Portrait d’Olga Khokhlova dans un fauteuil(肘掛け椅子に座るオルガ・コクローヴァの肖像)』
かと思えば、次の時代のピカソはクラシックで古典的な「写実スタイル」に戻っている。その代表的な作品が、名作『肘掛け椅子に座るオルガ・コクローヴァの肖像』だ。モデルとなったオルガは、ピカソが生涯でただ一人正式に結婚した女性でもあった。
彼女はピカソに、自分の姿を「美しく」「正確に」描いてほしいと望んだそう。その願いを受けてか、ピカソの表現も一転して均整の取れた、穏やかなものが続いている。天才ピカソの中にある、人間らしい部分をここで垣間見たような気がした。※しかし作風は女性遍歴とともにさらに変わっていく。

※開催中の特別展『Philip Guston. L’ironie de l’histoire(フィリップ・ガストン:歴史の皮肉)』
こうして、見れば見るほど奥行きを感じるピカソ美術館。定期的に開催される企画展(エクスポジション)も常に挑戦的で、単一のアーティストを紹介する美術館とは思えないほどの充実ぶりだ。
なお現在開かれているのは、特別展『Philip Guston. L’ironie de l’histoire(フィリップ・ガストン:歴史の皮肉)』。カナダ生まれでアメリカを拠点に活動した画家ガストンの、抽象〜具象~風刺的表現へと変化していく軌跡を紹介している。その大胆なスタイルの転換は、絶えず表現を磨き続けたピカソの姿とも響き合う。

※ピカソ『浜辺を走る二人の女性』

※ピカソ晩年、南仏で陶芸家として活躍していた頃の作品
ピカソ美術館は、パリでも魅力的な地区・マレの中心部にある。一部貸し出しなどで目当ての作品とは出会えない可能性もあるが、元貴族の館は本当に美しく、それだけでも訪れる価値がある。美術館と一緒に、彼が暮らしたモンマルトルやモンパルナスを巡ってみるのも素敵なアイデアだ。(コ)

【ピカソ美術館(Musée Picasso)】
住所:5 Rue de Thorigny, 75003 Paris, France
最寄り駅:メトロ1番線「Saint-Paul」駅など
開館時間:9:30〜18:00(水曜〜月曜)、月曜休館
公式サイト:https://www.museepicassoparis.fr


