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パリ・アート情報「キュートなだけではない、フランスのリボンの世界」 Posted on 2026/01/12 Design Stories
フランスのリボンが素敵だと思うことがよくある。とくに感じるのは、ホリデーシーズン。パリの街が煌びやかになると、デコレーションとして使われるリボンの可愛さに、思わずときめいてしまう。
フランスのリボンは、特別に華やかな色でも、凝った結び方でもない。それなのに不思議と心に残るそれには、どうやらとても長い歴史があるようだ。

フランスのリボンは、本当にさまざまな用途に使われている。オートクチュールのドレスや帽子、クッションやカーテンといったインテリア、ギフトのラッピング、スタッフバッジ。そして、レジオン・ドヌールといった勲章の飾りまで……。結ぶことはもちろんなのだが、その色やかたちで何かを伝えたり、誰かを称えることもあるそうだ。

ただ、日本のリボンの使い方と少し違うと感じるのは、ファッションにおけるリボンの立ち位置かもしれない。
日本では、リボンはキュートな印象がある。しかしフランスではもっと中立的なイメージ。意志のある装飾、として用いられることが多く、たとえば、女性用の下着などにあしらわれたリボンなどは、フランスでほとんど見かけることがない。

例を挙げると、写真のようなショップのお買い物用カゴに、トリコロルカラーのリボンをきゅっと結ぶだけ。スタイルの完成度を高めるための、「線」のような存在なのだと思う。
そんなリボンの歴史を遡ってみると、やはり中世の時代に行き着く。イタリアから伝わったリボンは、やがてフランス各地へ。なかでもリヨン近郊のサン=テティエンヌは、何世紀にもわたりリボンづくりの中心地として知られてきた街。かつては各家庭に織機が置かれ、家族総出で、細く繊細な布を織り続けていたという。
実際、サン=テティエンヌにはリボンに特化した博物館(Musée d’Art et d’Industrie de Saint‑Étienne)がある。サン=テティエンヌは、フランス国内だけでなく、世界屈指の「リボン生産地」なのだ。

現在のフランスでは、リボンはギフト・ラッピング用として目にすることが一番多いのだが、近年の手芸ブームもあってか、ウィンドウディスプレイに飾られる姿も少しずつ増えてきた。
パリの手芸店を覗いてみても、その種類の豊富さに驚いてしまう。普通のリボンからヴィンテージもの、絹のジャカードリボン、レース調、アンティーク風のリボン、などなど。手芸の道に明るくなくても、心が浮き立つような品揃えだ。

※パリの手芸店「Ultra mod」のリボン

※自分でクロスステッチをあしらうことのできるリボン
色も、素晴らしい。いわゆるパステルや原色だけでなく、落ち着いたグレーに、ゴールドベージュ、わずかにシルバーがかった緑など、大人の目に心地よいものばかり。主に飾り用としてのリボンだが、こうも美しいのであれば、本来の用途とはまた別の使いみちを模索したくなる。


フランスのリボンは、手芸店で「あれもこれも欲しい」と、つい長居してしまうほど魅力的。
店頭で眺めていたときの印象かと思いきや、実際に手に入れて家に持ち帰ってみても、その魅力がまったく色あせないから不思議だ。手に取るたびに「もっと深く知りたい」「織物としての奥行きを学んでみたい」と思わせる、小さくて大きな存在感を持っている。(コ)


