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パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」 Posted on 2026/01/16 Design Stories  

 
パリの老舗デパート、ル・ボンマルシェ(Le Bon Marché)。世界で初めてバーゲンセールを導入した百貨店として知られるこの場所は、毎年1月になると、もう一つの顔を見せる。冬のセール期に合わせて開かれるアートイベント、「Mois du Blanc(白の月)」だ。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」



 
今年で11回目となる「Mois du Blanc」。2016年に始まった同イベントは、1月のル・ボンマルシェをモダンアート美術館のような空間へと変えてきた。
新しい年を迎えて少し経ったこの時期。「ああ、今年もそんな季節か」と、自然と思い出すパリジャンも多いのではないだろうか? つまりこれは、地元パリジャンの生活リズムにすっかり定着した、ル・ボンマルシェならではの恒例アートイベントなのだ。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※インスタレーションの色は白で、というのが招待アーティストに課される唯一の条件

 
さて2026年、「今年のアーティスト」として招待されたのは、中国出身の現代美術家であるソン・ドン(Song Dong)。1月10日〜2月22日まで行われる展示「Objets divers et variés – 百货(baihuò)」では、日常に埋もれた無数の“モノ”を主役にした壮大なインスタレーションを見ることができる。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

 
ソン・ドンのクリエイションの核にあるのは、実は「捨てない」という発想なのだそう。使い古された生活用品、個人的な思い出が染み込んだオブジェ、用途を終えた素材。彼はそれらを回収しまったく別の作品へと置き換えることで、“消費されるモノ”を“語る存在”へと生まれ変わらせてきた。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

 
そして今回、デパートの吹き抜けホールに現れたのは、“二基の巨大なシャンデリア”。よく見ると、無数のボトルがそれにぶら下がっている。
ではなぜ、ボトルなのだろう?
これは、20世紀初頭のパリで活動したフランス人アーティスト、マルセル・デュシャンへのオマージュなのだという。日常で使う道具を異なる視点で捉え直した、デュシャンの試みに着想を得たそうだ。※デュシャンはその道具を、約100年前のル・ボンマルシェで購入していた。
ラグジュアリーな売り場と清潔感あふれるインスタレーションの相性も良く、じっと眺めていると、アートではなく「デパートに新しく設置されたモダンなシャンデリア」というふうに思えてくる。
 



パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※3階の展示スペースにもアート作品が登場

 
ル・ボンマルシェのアートイベントはもちろん、巨大オブジェだけでは終わらない。3階の展示スペースには、鏡張りの空間やランプの小部屋が、万華鏡のようなインスタレーションとなって登場している。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※ランプの小部屋

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※カラフルな「窓」がモチーフ



 
また、デパート外のショーウィンドーでは、ソン・ドン自身のコレクションに加え、顧客やスタッフから集めたという懐かしいオブジェがずらりと並べられていた。現代アートでありながら、レトロ可愛くてノスタルジーな小物たち。パリの蚤の市がお好きな方にも、きっと心惹かれるアート空間になると思う。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※ショーウィンドーのインスタレーション。レトロな電話機と、古い携帯電話が

 
パリには著名なデパートがいくつかあるが、ル・ボンマルシェほどアートに寛容な存在は珍しい。やはり、創業者のブシコー夫妻が熱心な美術コレクターだったことが大きく関係しているのだろう。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※館内ではカーテン作品も展開。デパートだがアート空間のよう

 
実は「Mois du Blanc」は、近年始まったイベントではなく、創業者のブシコー夫妻が活躍していた19世紀末頃からすでに開催されていた。しかし、その後の戦争や経営者交代などの混乱により、長いあいだ中断してしまっていた。
 

パリ・アート情報「パリの1月恒例アートイベント、スタート!ル・ボンマルシェ「Mois du Blanc」」

※ソン・ドン氏

 
そうして2016年に再スタートしたのが、この「Mois du Blanc(白の月)」というわけだ。なお館内のインスタレーションは、誰でも無料で楽しめる。「今年はどんな展示かな?」「どんなアーティストが選ばれたのだろう?」とつい足を運びたくなる、パリ1月の定番アートイベントだ。(大)
 

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