ノルマンディ、ツジ村便り
辻村だより、24 Posted on 2026/01/24 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
はい、辻村だよりのコーナーです。
みなさんからのご質問とか、ご相談とか、悩みごと、とか、軽くて申し訳ないのですが、年長者としての意見などをもどしております。参考にはならないと思いますが、どうぞ・・・。
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匿名希望Lさん
「辻さんは子供のころ、いじめられっこでしたか? それともいじめっこでしたか? 今は、どうですか? ピアニシモとか、海峡の光などのいくつかの作品でいじめがテーマになっていたので、気になりました。最近、日本では中学生とかの暴力、いじめ、が問題になっています。私も実はいじめられっこでした。今も、ちょっと生きにくい環境にいます。どうやったらいじめられずにすむのか、何かアドバイスをお願いします」

おこたえしまーす。
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「ぼくはいじめられっ子でしたね。転校生でしたから、転校先で、まずはいじめられました。また、今も、大人になりましたが、上の世代にはけっこういじめられてきました。団塊の世代という強い世代があって、正直、やられましたね。ということで、生意気なんで、やられるわけです。目立つからやられます。出る釘は抜かれるが、出過ぎた釘は叩かれる、でも、出ない釘は一生打たれないけれど、思ったことが出来ない釘です。
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ぼくは小学生の6年生の時に、福岡から北海道の帯広に転校をしました。ま、そこはもう6年生だったので、なんとか切り抜けましたが、中学一年生の時に、クラスメイトのはちや君から、けっこう、殴られました。笑いながら。背が高くて短気な奴だったんですよ。それから、サッカー部の連中の集団暴行も受けました。あれはすごい一日でしたね。忘れられません。グラウンドの真ん中に呼び出されて、十数人で、ボコボコにされました。あと、帯広はアイスホッケーの授業があって、福岡から来た少年でしたから、滑れないじゃないですか、それをいいことに、アタックと言いながら、猛烈に体当たりを繰り返されました。塾でも、他の学校の連中に、格闘をしようぜ、と言われ、ボコボコにされたり、ビルの屋上から突き落とされそうになったりしました。マジです。なんで? そうです。ぼくはね、今もそうですが、生意気で、ちょっと一言多いんですよね。言いたいことを言っちゃうので、目を付けられて、それで、強そうなら、いいんですけれど、背も低いし、筋肉もないから、やられましたね。
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それで、中学の3年の時に函館に転校するんです。ロン毛でしたから、またあそこでもやられました。で、高校になった時、こりゃあ、生きていくのにこれが続くのはまずい、と考えるじゃないですか? それで、柔道を始めるんです。毎日、裸足で放課後、護国神社まで同級生の中村君と一緒に走り、先輩たちに柔道の世界で鍛えられていくことになります。長かった髪の毛も、角刈りにし、ま、いわゆる、ヤンキーみたいな髪型ですね。そしたら、ですね、いじめにあわないくなったんですよ。笑。ぼんたん履いて、柔道着を担いで登校してましたから、でも、正直、弱かったです。ただ、柔道をやってよかったのは、痛みが分かるようになったことです。ぼくもエックスなどで日本の中学生の暴力シーンを見ますが、あの殴り方はダメ、痛みを知らない人間の暴力ですから危険だし、卑劣ですね。柔道を高校生の頃にみっちりとやったことで、東京に出てから、歌舞伎町とか渋谷あたりでバンド活動をするんですけれど、喧嘩に巻き込まれても、負けなくなりましたね。一度、歌舞伎町を縄張りにする半グレ集団にうちのベーシストの井黒君が喧嘩を売られ、殴り合いになったんです。相手はもうでかくて、ごつくて強そうなやつで、井黒君、苦戦していたので、飛び込んで、その大男を寝技で倒して、喧嘩を仲裁したことがありました。井黒は覚えているかな? 「覚えとけよ、仕返しにくるからな」と言って、そいつはいなくなりましたが、バイト先だったんですが、仕返しはなかったですね。よかったですよ。柔道部の時は、70キロもあったんです。強くなることはよかったんですが、目指していたのは優男だったので、そこから、音楽の世界にのめり込み、ずっと、55キロです。もう、喧嘩の仲裁とかは出来ませんし、最近は、年齢も年齢ですから、もめ事も出来なくなり、また、弱い男になりました。
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それで、あなたのご相談への回答として、じゃあ、強くなればいい、と言ってるわけじゃないんです。ぼくの中学時代はボコボコでしたから、もうやだな、と思って武道をはじめたのはいい逃げ道でした。柔道をやってからは殴られたことはありません。痛みを知っているので、自分から喧嘩はしません。ただ、それは根本の解決策ではないかな、と思います。ぼくがいじめられたのは、ぼくが生意気で、無鉄砲だったからです。でも、それを貫いて、今の自分があります。ボコボコにされた経験って、たぶん、読者の皆さんにはないでしょ? ぼくはあるんですよ。ビルの窓から、逆さづりにされそうになったこともあります。これは、小学校の六年生の時で、リビング小沢の小沢くんが、毅然とそのいじめっ子、といっても成人でしたけれどね、に、抗議をして、なんとか死なずに済んでいます。小沢君、覚えているかい? 卓球場でのこと・・・。
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今でこそ、自撮りじいさんになっていますが、勝負というのは、社会に出ると、力ではないんです。むしろ、底力が大切になります。底力があると、負けなくなります。ほんとうです。人生に挫けないことが、まずは、大事です。人間は負けてもいいんです。でも、人生に挫けるのがダメです。倒れたら起き上がればいいです。起き上がれないのはダメです。力だけで戦っても本当の勝利はないです。底力を持って、なにくそ、と思って前に進む時、もちろん、人ぞれぞれの方法で、その時に、人生に勝てるかどうか、が大事で、ぼくはいじめられたことがあったおかげで、ピアニシモと海峡の光が出来たんだと、逆にありがたく思っています。人の痛みを知ることが出来たので、世渡りが出来るようになりました。あまり参考になったか、わかりませんが、ぼくは身体を鍛えて武道の精神を学んだことで、負けない底力の入り口を発見することが出来ました。めそめそしていても解決はしません。そこから、自分の心を鍛えて、妥協をせず前進あるのみ。大人になって、先輩たちにいじめられたりしましたが、ほとんどが、陰口や悪口のようなもので、相手にならないやつらばかりでした。もう、相手にする相手じゃない、と気が付けたのは、もしかすると武道の経験だったかもしれないです。狭い世界で、いじめられていると思うのであれば、さっさと環境をかえてください。いいですか? 世界には80億以上の人間がいて、地球は果てしなく広いです。そこで息苦しいなら、移動しましょう。あなたを認めてくれる世界は必ずあります。でも、まず、身体を鍛えてみますか? 心も引き締まりますよ」
※ 辻村だよりでは、みなさんのご相談を受け付けています。デザインストーリーズのインスタやエックスなどに返信とかで、応募ください。いろいろな方法で、ご相談ください。

※ マブダチです。こう見えて心優しい男なんです。本当に強い男は、暴力をふるいませんよ。そこを目指してください。
辻仁成展覧会情報
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現在、フランス日動画廊パリでのグループ展に参加中。3月7日まで。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86
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それから、8月5日から、一週間程度(予定)、三越日本橋本店特選画廊Aにて、個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「辻仁成展、鏡花水月」です。
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そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細は決まり次第、お知らせいたしますね。お愉しみに!
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そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。
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海峡の光 (Kindle電子書籍版)
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ええと、2023年のパリ、オランピア劇場ライブもごひいきに。
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