ノルマンディ、ツジ村便り
辻村だより、25 Posted on 2026/01/27 辻 仁成 作家 パリ
おつかれさまです。
仕事が慌ただしく、パリとノルマンディを行き来しています。
三四郎も、なので、まきぞいをくって、一緒に移動しています。
はい、今日はいつもこの「辻村だより」を楽しみに読んでいるという知り合いのライターさんからのご質問に答えたいと思います。
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匿名希望Hさん
「先日の辻村だよりで、宇宙と交信をされている、とありました。何か、辻さんが宇宙という言葉を使うのが不思議に感じまして、個人的に、そこをもっと掘り下げて、聞きたいのです。辻さんにとって、この世界と宇宙って、何か区別があるのでしょうか?」

おこたえしまーす。
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「宇宙という言い方が誤解を与えているかもしれませんが、ぼくがいつも思っている宇宙って、地球外の宇宙ではないんです。とっても難しい考え方かもしれないので、でも、誤解を覚悟していいますが、それは、真理みたいなものですかね。宇宙の真理。たとえば、現実、という言葉がありまして、ぼくらはこの現実というものの中で生きています。そこには、お金があり、性があり、歴史があり、大気があり、価値観があり、日々があり、暮らしも、時間も、自分をとりまく、あらゆるものがみなさんの現実を構成していますが、この現実というものは、本当に現実なのだろうか、と疑問を持ったことはないですか? 個人的な意見ですので、気を付けて読んでもらいたいのですが、子供のころ、小学生のころでしたが、教室の一番後ろに座っていたんですが、自分の前に並ぶ同級生の後頭部を見ながら、なぜ、ぼくは彼らの心が見えないのか、と疑問を感じてならなかったんです。なぜ、彼らが生きている現実をぼくは知らないのだろう、同時に、彼らはなぜ、ぼくの現実を知らないのか、と。つまり、現実がたくさん、存在するんだな、と気が付くことになります。さらに、成長していく過程で、自分と世界というものが共時の中にあることに気づくんですね。なので、世の中に出る時は、世界、というものを意識して、生きるようになります。でも、同時に、自分のことしか自分にはわからないのも事実だ、ということも悟るようになります。そして、この世界というものは、実は幻で、自分が見ている世界は用意されたものだと思うようになるんです。ちょっと怖い発想ですが、子供ですからね、笑、仕方ありません。世界を幻と思っている自分という宇宙の方が圧倒的に真理なのだと考え出します。じゃあ、なぜ、こんなに苦しいことや不思議なことが渦巻く世界があるのか、と考えました。学校があり、試験があり、恋愛があり、憎しみがあり、様々なことが次から次に、やってきます。そこに歴史問題とか、戦争とか、思想とか、政治がくっついてきまして、自分の周囲は年齢を重ねるごとに、複雑化していくんです。小学生のころはそう思っていたんですが、社会に出るようになり、次第に、自分以外の世界とも折り合いがつくようになり、自分は、世界というものの中で生かされている、と考えるようになります。でも、必死で考え生きていくうちに、随分と年月が過ぎましたが、結局、現実というものは、どうやっても個人的なものでしかなく、そこから抜け出せない、そこでしか感じられない、と思うようになります。個人と、外の世界とが、複雑に対峙していく中で、ぼくは、個人の中の真理を見つめようと思うようになっていきます。誰かが死ぬと悲しい、というようなことはあるんですが、次第にあらゆる出来事が、個人の中で起きていることだと思うようになっていきます。悲しみも苦しみも喜びも幸福も不幸もすべてが、自分の心の中で吹き荒れるものだと認識していくようになるわけです。そして、ぼくらには現実はなく、真理があるのだ、と気づいてきました。ぼくはそれを宇宙と呼んでいます。その広大な宇宙は、外にではなく、自分の内部にこそある、と考えるようになりました。小学生のころに、同級生たちが何を考えているか、分からなかったように、ぼくは80億人以上もの人類が何を考えているか、今現在、分かりません。でも、自分の中に宇宙があり、そこに命があり、生かされているということを思う時、自分が保たれることに気づきました。この泡のような世界、幻のような世界で、自分を通してのみ、現実を体現出来ているのだ、と悟ったわけです。だから、日々を丁寧に生き、過酷であっても、それは、宇宙の真理を見つめるために向き合わないとならない試練なのだ、と思って生きています。ぼくが、宇宙と交信をする、と言っているのは、そういうことなのですが、なかなか難しい考え方ですよね。もう少し、突き詰めることが出来たら、また、報告したいと思います。真理を探す旅の途上なもので・・・」

辻仁成展覧会情報
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現在、フランス日動画廊パリでのグループ展に参加中。3月7日まで。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86
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それから、8月5日から、一週間程度(予定)、三越日本橋本店特選画廊Aにて、個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「辻仁成展、鏡花水月」です。
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そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細は決まり次第、お知らせいたしますね。お愉しみに!
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そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。
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ええと、2023年のパリ、オランピア劇場ライブもごひいきに。
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