ノルマンディ、ツジ村便り

辻村だより、26 Posted on 2026/01/29 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
今日はパリのインディペンダントジャズ界のジョゼ先生が来パリ事務所されました。(2023年、オランピア劇場ライブに来ていらしてくださって、気に入ってくださってから、ご縁が深まっております)、
今日、先生の前で歌わせて頂きました。ジャック・ブレルの「行かないで」(ne me quite pas)ですね。悲しい歌で、行かないで、と切なく訴える男のブルースなんですが、
「素晴らしいね。ギターから人生の刹那が見える」
とおっしゃっていただき、光栄でした。人生を生きた分だけ、ギターにも歌にも、重みがずしりと、重い・・・。笑。
知り合いのパリのジャズクラブで「歌ってみないか。君のようなシャンソンをやる人を探しているクラブがあるんだよ」とおっしゃっていただき、お、いいですねー。・・・さて、実現するでしょうか?
ということで、辻村だより、ちょうどいいご質問が届いておりましたので、・・・。

匿名希望Fさん
「2024年の大阪フェスティバルホールでのライブに行かせて頂きました。ECHOESの頃からのファンですが、もう、本当にやめてしまわれるのですか? きっと、それは嘘だと思っていますし、辻さん自身も、音楽はやめない、とおっしゃっていますよね。それで、辻さんにとって音楽とはどういうものなのでしょう? この先も音楽を続けるのであれば、どういうミュージシャンを目指していますか?」

辻村だより、26

※ ジョゼ先生です。いい顔されていますね。ルイ・アームストロングさん、みたいな・・・。



おこたえしまーす。

「そうですね。大規模なビジネスちっくなコンサートはもはや興味もないし、考えていませんが、小規模なものは、趣味の範囲でやる予定です。積極的に宣伝はしませんので、偶然の出会いを大事にやれればいいかな、と思っています。秋にちょっと計画がありますが、どうなるでしょう。でも、ジョゼ先生のように、ジャズクラブで気楽に歌ってみなよ、と言われたら、歌うでしょう。ぼくにとって音楽は、人生を楽しむための媒介となりました。何が違うのか、というとチケットの売れ行きとか、赤字の埋め合わせとか考えないでいい、純粋に歌いたいから歌わせてもらえるもの、を今は目指しています。だから、今は解放された状態、音楽と出会った時の初期衝動を大切にしたものを演奏している感じです。もっとエコーズを歌えとか、言われることもあるんですが、そういうのに、興味はありません。あれはぼくが若い頃にやった青春の1ページでレスペクト出来るものですが、ノスタルジーという言葉が嫌いなので、過去は振り返りたくないんです。歌いたいものを歌いたい時に歌うのが今のぼくの音楽です。そういう意味で引退です。ミュージックビジネスから解放されて、今は自由に音楽をやることが出来ているので、肩の荷もおり、楽しいライブが出来ています。毎日、アトリエで歌っていますよ。自分のものだから、自由に・・・。でも、ライブは確かに緊張感があってドキドキするので、続けたいな、と思っています。

最近、フランス人ピアニストのエリック・モンティニーさんとインスタレーションのための音楽を創作しています。環境音楽に近い、音楽の芸術のようなもので、今はこのプロジェクトを支援してくれるアート財団などを探しています。大きな美術館とかに、巨大な絵かオブジェを作り、ライティングなどの装置も使って、この音楽を演奏するのです。耳から入る芸術だと思ってもらえるといいかな。耳から、辻仁成のアートを聞いてもらいつつ、目を通して視覚から辻仁成のアートを体感してもらう、というプロジェクトなんですが、場所は選ばず、どこでもいいですが、世界各地で展開したいな、と思っています。大きな空間に入り、全員でこのインスタレーションを体感してもらうプロジェクトです。ぼくは実現できると思っています。30日にエリックとこの件についてパリでミーティングをする予定で、友人であり芸術研究者のフローリアン・メトラル教授にも相談をしています。もちろん、ぼくのプロジェクトなので、全体が辻仁成のアートなんですが、音、光、作品、空間が、融合をして、これまでにない芸術域を想像しようとしています。とくに、音楽の比率が高いのが特徴でしょうか。実現できるといいですね。2030年までには、どこかでインスタレーションをやれたらいいな、と思っています。まずは、ノルマンディでベースサウンドのレコーディングを開始する予定で、このベース音を元に、生での演奏などが加わる仕組みです。ドキドキしますよね。お楽しみに」

辻村だより、26



辻仁成展覧会情報

現在、フランス日動画廊パリでのグループ展に参加中。3月7日まで。
GALERIE NICHIDO paris
61, Faubourg Saint-Honoré
75008 Paris
Open hours: Tuesday to Saturday
from 10:30 to 13:00 – 14:00 to 19:00
Tél. : 01 42 66 62 86

それから、8月5日から、一週間程度(予定)、三越日本橋本店特選画廊Aにて、個展を開催いたいます。
今回のタイトルは「辻仁成展、鏡花水月」です。

そして、11月初旬から3週間程度、リヨン市で個展を開催予定しています。詳細は決まり次第、お知らせいたしますね。お愉しみに!

そして、電子書籍で「海峡の光」が配信されております。文学の方もどうぞ。

海峡の光 (Kindle電子書籍版)
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ええと、2023年のパリ、オランピア劇場ライブもごひいきに。

自分流×帝京大学