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パリ・アート情報「プロが集うパリの蚤の市へ。職業としての“ブロカント”文化」 Posted on 2026/01/30 Design Stories
1月のパリ、セーヌ川沿い。珍しく快晴だった冬の週末に、蚤の市が立っていた。フランスでは春と秋に蚤の市が開かれることが多いのだが、日が傾くなかで見るアンティーク品は、よりいっそう掘り出し物のように映って見える。


今回訪れたのは、パリ4区、ポン・マリー駅前で開催された蚤の市。すぐ側のセーヌ川沿いにブキニストたち(古本商)が並ぶ、とても気持ちのよい場所だ。この辺りは素敵なカフェも多いので、週末になると、たとえ寒くても朝から人が絶えない。


蚤の市といってもフランスではいくつかの種類があって、日本で想像する「フリーマーケット」や「ガレージセール」に近いものもあれば、れっきとした商売として成り立っている市もある。先週末(1月24日と25日)、セーヌ川沿いで開催された蚤の市はプロの手によるものだった。

※銀のカトラリー・食器専門のブース
ブースに並んでいたのは、アンティークのカトラリー、食器、年代物のレコードやアクセサリー、コートなど。時代も非常に幅広く、1920年代〜2000年代のものまで、どのアイテムにもそれぞれの歴史が詰まっていた。

※フランス全国からかき集めたという珍しい雑貨が並ぶ
こうした蚤の市に店を構えるのは、それ自体を「職業」にしている人たち。彼らは蚤の市のプロフェッショナルとして、仕入れを行い、帳簿をつけ、経費や税金を払いながら商売として成り立たせている。露店だけれど、プロたちの頭のなかにはいつも「店舗が存在している」といったイメージだ。
その多くは個人事業主で、フランスでは必要な資格はないとのことだが、美術品や骨董品の鑑定を行いたい場合は、美術史のディプロマがあることが望ましいとされている。


※コートを専門に扱うお店も。場所によって新品だったり古着だったりする

※フランスらしいトーションが並ぶ
とはいえ、やはりプロであるためか、そしてパリ中心地という場所のためか、お値段はフリーマーケットよりも少し高め。ただ希少価値の高いアイテムを見つけることができるので、お好きな方は通りすがりにぜひとも覗いてみたい。それも開催日初日(多くは土曜日)の、朝一番に向かうことがおすすめだ。

※同じ製品が並んでいるのもプロの蚤の市の特徴
一方、パリ郊外や地方でよく見かけるのが、どんな人でも参加することができる「ヴィッド・グルニエ」。フランス語で(屋根裏を空っぽにする)という意味で、地域の団体や市役所によって開催される季節的なイベントになっている。日本でいう、フリーマーケットのイメージに近いだろうか。
しかしヴィッド・グルニエのほうは、あくまで私物の整理が前提だ。販売できる金額・出店の回数には限度があって、年に何度も出したり高額な売り上げをあげたりすると、「空っぽにする」域を超えたものと受け取られてしまう。プロの蚤の市との違いは、まさにこうしたところにある。

ちなみにフランスの蚤の市では、プロフェッショナルもアマチュアも、何らかの“テーマ”が設定されていることが少なくない。
たとえば、収益をすべて寄付するというチャリティー型の蚤の市。ここでの売上は、販売者ではなく恵まれない人々を支援する団体に寄付されるため、普段よりも前向きに参加するフランス人が多いという。フランスにいるとよく、困っている人に手を差し伸べる文化が感じられるが、そうした光景はこの蚤の市にもあったのだ。

おもちゃだけ、本だけ、レコード・衣類だけとジャンルに絞った蚤の市、そして地域の特産品を紹介する見本市のような蚤の市もある。フランスでは、本当に「ブロカント(brocante=蚤の市)」という言葉だけでは収まりきらないほど、そのかたちが自由だと感じる。

パリに来たら一度は行ってみたい蚤の市。しかし、実は何度行っても飽きないのがパリの蚤の市の特徴でもある。暖かい春、そして人々が新生活を迎える秋にはさらに出店数が増えるので、ぜひ一度足を運んでみてほしい。パリ市役所の公式サイトでは、各地の開催情報がその都度公開されている。(こ)
※パリ市役所URL:https://www.paris.fr/pages/brocantes-et-vide-greniers-chiner-a-paris-18730


