ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「孤独」 Posted on 2026/02/02 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
はい、辻村だよりのお時間です。
今日、届いたご相談はとっても、回答の難しい質問でございますが、ぼくなりの意見を言わせてください。
さっそく、まいりましょう。

匿名希望Eさん
「私はとっても孤独です。孤独は不幸でしょうか? 辻さんはNOというと思いますが、まだ自分にはわかりません。孤独だと思われるのが嫌で、苦手な人とつきあうこともあります。孤独って、なんですか」

辻村相談窓口、「孤独」

辻村相談窓口、「孤独」



おこたえしまーす。

「不愉快になる人もいると思うので、最初に謝っておきますが、あくまでも、個人的な意見ですので、ご容赦ください。人間はしょせん、最初から最後までみんな孤独だと思いますよ。幸せな時期もあるでしょうし、楽しいひと時もあったかと思いますが、素敵なパートナーが見つかっても、そのうち、孤独になるものです。それは人間の宿命のようなもので、ぼくは最初から、孤独を毛嫌いする必要はない、と思って生きてきたし、ますます、そうだそうだ、と思って生きています。人間は結局、一人だと思って生きているからこそ、逆に、楽しい時もあります。最初から、孤独ありき、だと思っておけば、いいんです。生まれる時も双子じゃないかぎり、一人で生まれてくるし、死ぬ時は、たいていの場合一人で死ぬわけですし、どんなに愛している人がいても、死後にまで連れていけないし、他人には自分以外の人生があるので、永遠の幸福なんてものは滅多にありません。

昨日のインスタに書きましたけれど、人間はいつもこの瞬間を誤魔化して生きているんです。なんとか、ごまかしごまかし、やり過ごして今日まで生きてくることが出来たじゃありませんか。絶対的な安定とか幸福なんてものは、最初からないし、もし仮にそういうものを持っている人がいたとしても、それはあなたやぼくではない。ぼくには、そういう幸福はありません。だから、それを孤独と呼ぶんですが、ぼくなりに、生きる意味を探して、このごまかしごまかし生きている孤独な人生を楽しんでいます。こんなぼくでも気にかけてくださる女性や優しい友人たちが多少はいますが、これまでの経験から、それに縋ることをもうしないことに決めています。大げさな意味はなく、周囲に期待し過ぎると辛くなることを悟っているので、ああこれも幻だな、と思うようにして、接近し過ぎないよう、上手に、やり過ごしています。楽しい時もあればそうじゃないこともあるし、離れていく人もいるしやってくる人もいるじゃないですか。孤独は上等だ、と思って、確実にそう思って生きています。昔だったら、永遠の愛を誓いあってたかもしれないですが、残念ながら、ぼくには不向きでした。ぼくは自分が幸せに向かない人間だと気づくことが出来ましたし、幸いにもこういう仕事ですから、風雪に耐えることも今は大丈夫になりました。とにかく他人には期待をしません。だから、いわゆる幸福もたくさんはないのですけれど、でも、死ぬまでは生きようかな、と思って、周辺の幸福に便乗したりして、日々をやはり、ごまかし、ごまかし、やり過ごしています。或いは、キャンバスに向かっています。絵はそういう孤独をぶつけるのに、とってもいい安寧の空域です。そこにぼくが憧れた希望を描くこともあります。自分の絵が、もしくは小説が、それを見てくださる方の心に寄り添えるのは孤独の中にありながらささやかなぼくの幸せでもあります。ぼくは自分がとっても変人であり、かなりおかしな生き物だということをやっと自覚出来たので、普通の幸せを求めてはいけないということも悟りました。その時、ぼくの手元に残ったものがありました。それは絵だったり、詩だったり、小説だったり、音楽でした。ギターは常にぼくの横に転がっていて、それを抱える時、幸福だった頃をおもいだします。女性の温もりを感じることもあるし、仲間たちとの談笑を思い出すこともあります。

ぼくから、あなたへ何かアドバイスをするならば、まず、孤独と友だちになることをおすすめします。孤独という世界が押し付けてくる負のイメージに惑わされないことです。あなたの前に不意に恋人が出現しても、それは永遠ではない、と思っておくこと、傘を持ち歩くように、そう思っておいたらどうでしょう? 身を委ねて心を滅ぼしかねないので・・・。そして、何か、生きているあいだに、のめり込むことが出来る何か(人間ではなく、笑)、を探してください。なんでもいいと思います。それが何か、ぼくはあなたじゃないからはわかりませんが、張り合いになるようなものを、一つ、見つけることが出来たら、その孤独に柱が出来るような気がします。ぼんやり生きていてもいいんですが、今日はこれをやろうという目的が必要です。そこへ向かうからには少なからずの人と出会うことになります。一生は、大いなる旅です。その旅を楽しんでください。学ぶことはまだ数限りなくありますし、生み出すことが出来れば、また、意味も変わります。孤独でいいんです。身体を前に動かしてみましょう。のめり込める何かを見つけて、はじめてみたら、孤独の意味が変わると思いますよ」

辻村相談窓口、「孤独」

父ちゃんの2026年のスケジュール。
現在は、パリの日動画廊でグループ展に参加中。電子書籍「海峡の光」パリのオランピア劇場ライブ盤配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」3月30日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
10月後半、仏文学イベント、予定。
11月、リヨンでの個展、予定。同月、パリでのライブ、予定。この頃、小説「泡」刊行予定。他、予定多数・・・。
何か、新しい目的が出来ると、今に張り合いが出ますね。



自分流×帝京大学