ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「偉大なる死」 Posted on 2026/02/21 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
ノルマンディは大雨が続いていて、アトリエの窓から見えるいつもの草原は湖になってしまいました。水鳥は幸せそうですが、そこら中で冠水していて、アトリエから出られない感じが続いています。だから、ちょっと疲れ気味な父ちゃんです。でも、そうそう、夏の個展の作品がそろいました。58点になります。ここから、仕上げに入り、5月くらいから順次、日本への郵送が始まります。まだまだ、大変が続きますね。
さて、相談窓口、開店の時間です。

匿名希望Hさん
「辻さん、いつも相談窓口楽しく拝読させてもらっています。辻さんは、いつかくるだろう死の不安とかどうやって乗り切っているんですか? 人間が決して避けることのできない死というものについてもお考えを聞かせてください」

辻村相談窓口、「偉大なる死」



おこたえしまーす。

「この文章を読んでいるのはだれもが人間でしょうから、死、というものをその各々がどうとらえるかで、人生の在り方も違ってくるように思います。死について考えるのは人間として当然であり、正しいことですから、あまり恐れる必要はないとぼくは個人的に信じています。前の日記でも書いたので、「死はない」という僕の基本的考え方は、ちょっと難しいので、今回は語らず、先の日記に譲りますが、実は、辻少年はずっと「死にとりつかれていて、憧れさえあった」んですよ、笑っちゃいますよね? だって、世界一のミステリーじゃないですか? ぼくのおばあちゃんが、「ひとなり、人間、死んだら終わりじゃ。だから、わしの墓に参りに来る必要もない」というようなことを言ったんですが、こういうことを言われると、すとん、と腑に落ちますよね。墓というのは、残された人のものであって、死者には関係がありません。人間はかなり多くの人が、死に恐怖を持っています。当然ですし、ぼくも全く死が怖くない、ということでもないです。ただ、辻少年は、「どんなことが起こるのだろう」と好奇心しかなかったんです。そして、作家になり(だから、作家になった?)、ぼくは「死」をテーマにたくさんの小説を発表してきました。「辻さんの作品って死についてが、多いよね」と作家の江國香織さんにも言われたことがあります。だって、そりゃあ、人類最大のミステリーが死なんですから、仕方ないですよね。オバマ元大統領がフライング的な発言で、「宇宙人はいる」と発言してしまい、それを発表しようとしていたトランプ大統領が「機密情報違反」だと批判して、ますます、宇宙人の存在が年内に発表になるような状況になっていますね。笑。どうしてこんなに宇宙人の存在を隠す必要があったのか、ということは一度考えてもいいのかもしれませんよね。ぼくらが思うものとは違う宇宙があるんでしょう。しかし、仮に宇宙人が飛来してきたとしても、人間にとって、もっと関心が高いのは、自分の死、というものです。いつか直面するだろうその死について、だれもが不安を覚えるわけです。天国や地獄という分かりやすいものを生み出したのも、うなずけますよね。宇宙の外側に何があるのか、これも人間にはわかりませんが、実は、ぼくら人類、その先に何があるのか、科学的には全くわかってないんですよ。人間は、一番大事なことを何も知らずに生きている、そこです。つまり、ぼくらは、概念を押し付けられ、死や宇宙を同じ鋳型で測っていますが、そうじゃなくてもいい気がします。宇宙なんて、ぼくは内側にこそある、と思っているので、火星に移住したい、というような物理的な欲望がないです。細胞の中、朝露の中に、ある宇宙をこそ大事にしていたいわけです。死も、物理的な怖い死ではなく、もっと尊いものとしてあがめています。だから、辻少年は、「偉大なる死」を人生の大団円にすべく、今を精一杯生きるという人生を歩んでいます。いつかやってくる死がマジで、愉しみで仕方なかったんです、子供のころ。でも、死を選ばなかったのは、物理的に難しかったこともありますが、いつか訪れるその時こそが死は大事だと思って、それまでを切に生き切ることで死を最大のステージにしてみせたい、と思ってました。変な子ですが、逆に、生きるって、そこから始まったんです。偉大な死、それを迎えるために、この生を精一杯生きてやろうって。宇宙も科学的な果てを考えるのじゃなく、この宇宙は内部の細胞のもっともっと底の方と繋がっているに違いない、と考えて、外への思考より内なる世界への思考を大切にしてきました。難しいですかね、こういう考え方って・・・、でも、いつか来る死を微笑みながら、一生懸命待っているのが、今、この瞬間なのです」

辻村相談窓口、「偉大なる死」



辻村相談窓口、「偉大なる死」

父ちゃんからのお知らせです。


3月7日までになりました。日動画廊でグループ展に参加中ですので、ぜひ!
電子書籍「海峡の光」
パリのオランピア劇場ライブ盤、各配信サイトで配信中。
3月11日に、文庫「父ちゃんの料理教室」大和書房。
3月18日に、エッセイ集「キッチンとマルシェのあいだ」光文社。
8月5日から三越日本橋本店特選画廊A全面で「辻仁成展、鏡花水月」。
10月、パリ、アートフェア出展の予定
。詳細、決まり次第お知らせします。
11月5日から22日まで、リヨンでの個展。会場の住所や、画廊連絡先については、また後日、ここで発表します。
11月、7か8日、パリでのライブ、予定、現在交渉中。
この頃、小説「泡」刊行予定。現在、校正作業中・・・。もう一冊、文庫が出ます。
他、予定多数・・・。あくまでも、予定ですが・・・。

自分流×帝京大学