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パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」 Posted on 2026/08/18 Design Stories  

 
パリ郊外に、一風変わった「城」がある。『三銃士』の作者、アレクサンドル・デュマが建てた城で、彼が実際に住居として使った場所だ。パリの西、サンジェルマン・アン・レイからバスで約10分のところにあるこの城は、「モンテ-クリスト城(Château de Monte-Cristo)」と呼ばれている。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」



 
フランスの城といえば、貴族や王族が暮らす場所、というイメージがある。ヴェルサイユ宮殿であったり、ナポレオンの妻・ジョセフィーヌが暮らしたマルメゾン城であったり。ところがモンテ-クリスト城は、文豪アレクサンドル・デュマが19世紀、財を成したあと一代で建てたものだった。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

 
結論から言うと、これが本当に素晴らしい。デュマの感性とアイデアが、城のあちこちに散りばめられていて見ごたえがある。
たとえば、緻密で壮大な彫刻が印象的なファサード。先祖の武器と、デュマの銘が彫られている切妻屋根。窓の上には、デュマが尊敬した文豪たちの顔まで並んでいる。 フランスの城らしい気品を保ちながら、他とは違うデザインにまずは見入ってしまうだろう。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※アレクサンドル・デュマの肖像画

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※窓の装飾も美しい

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※ダイニングエリア



 
デュマがこの場所を選んだのは1844年のことだった。『三銃士』と『モンテ・クリスト伯』の成功のあと、彼は仕事に集中できる静かな場所を求めていたそうだ。※落成は1847年。

たしかに場所は静かだったが、城の内部が「やけに豪華で明るい」というのが、第一印象で思ったことだった。もし仕事に集中するのであれば、もっとシンプルで落ち着いた内装が好ましいと個人的には思うのだが、モンテ-クリスト城にはそういう箇所がなく、どちらかというと人が集まる“迎賓館”のように見えた。とにかく豪華なのである。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※美食家だったデュマ、果物とデザートの盛り合わせ(装飾品・映画『ヴァテル』の小道具)

 
実際、デュマは人間が大好きだったらしく、よく人を招いては食事会を開き、ときには自ら料理することもあったそうだ。ということでサロンの食卓には、贅沢な食事風景が再現されていて、その暮らしぶりがありありと残されていたことも興味深かった。

こうして彼は派手にお金を使い、頻繁に人をもてなして、家族・愛人(一人ではない)の生活にも惜しみなく費用をかけたという。この事実は、 館内の案内板にもしっかりと記されてあった。
「アレクサンドル・デュマは、自分の人生を生きたのとまったく同じように、自分の家を創造した。つまり、贅沢に、そして度を越して」
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※モンテ-クリスト城でもっとも煌びやかな部屋「ムーア風の間」

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※映画化された作品は数知れず

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※銃士(ムスケテール)の衣装



パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※イフ城

 
敷地内にはもう一つ、見ておくべき建物がある。城と向かい合わせに建っているデュマの仕事部屋、“イフ城” だ。内部は見学できないのだが、彼はここにこもって執筆し、2階の寝室で休んでいたという。
イフ城は森と小川に囲まれていて、先ほどの城とは違い、静寂に包まれている。外壁には大きな特徴があって、デュマの小説の登場人物たちと、小説のタイトルが刻まれていた。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」



パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

 
ガラス越しから見えた仕事部屋の奥には小さな螺旋階段などもあって、ここまでくると「彼のことだから、きっと上階にはさらに面白い空間が広がっているのだろう」と、ついつい想像してしまう。贅沢で人が大好きだったデュマにも、やはり一人になる時間が必要だったのだろう。

このようにモンテ-クリスト城は、今まで訪れたフランスのどの城より“人間らしさ”にあふれている気がした。
 

パリ・アート情報「モンテクリスト城。『三銃士』の作者が建てた、パリ郊外の城へ」

※敷地内の庭園には洞窟や小川、滝もつくらせていた

 
派手に散財したデュマは、やがて債権者に追われるようになる。1848年には家具を、1849年には邸宅そのものを、しぶしぶ売却することを余儀なくされたそうだ。
しかし落成が1847年だったのだから、城で暮らしたのは約2年だけ、ということになる。先ほどはどの城より“人間らしい”と述べたが、ここまで太く短い城もあまりないのではないだろうか。

美しいが、突拍子もない城。突拍子もない城だが、美しい。モンテ-クリスト城は、そんな無二の魅力をもつ城であった。(大)
 

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