ノルマンディ、ツジ村便り

辻村相談窓口、「芸術家の未来」 Posted on 2026/09/07 辻 仁成 作家 パリ

おつかれさまです。
さっそく、相談窓口を開かせて頂きたいと思います。

匿名希望Sさん
「僕は芸術の道へと向かっています。辻さんのように、小説を書きながら、演劇の演出もやっています。実はそんなに若くないんです。本業はアルバイトでして、若い子たちを指導する立場にはなっていますが、社員になる気はありません。芸術の道を諦めることが出来ません。妻は、そろそろ、あなたらしい人生を探そうよ、とやんわりと言うのですが、迷惑をかけているので、悩んでいるところです。演劇の方は、小劇場がなんとか、人が集まるくらいまではきています。小説は二次選考は突破できる感じで、一度、小さな文学賞で最終候補に残ったこともあります。でも、5年前です。だいたい、毎回落選しています。ぼくらしい生き方が何かわかりません。どこが諦めるタイミングでしょうか」

辻村相談窓口、「芸術家の未来」



おこたえしまーす。

「ぼくは、あなただけじゃなくて、芸術の道へ進んでいるすべての人にまず言いたいことがあります。代表して、あなたに向けて語りますが、その道を突き進んでいるすべての人に言わせてください。このような世界で、あなたはあなたにしか出来ないことをやっている。まず、そのことを大切にしてほしい。人工知能が突き進んで、音楽も小説もイラストもデザインも翻訳業も、厳しい世界になりました。そういうAI的な世界の中にいますが、あなたが日々悩んで紡いでいる芸術は、あなただけにしか出来ない唯一無二の表現なんです。あなたのような頑張っている人が生きていけなくなるような世界になったら、もう、終わりです。あなたがやっている芸術運動は人類にとって必要な活動なのです。今となっては、偉大なる抵抗運動です。人類が人類として、生き生き輝けるかどうか、の瀬戸際にあるこの世界で、あなたのような芸術家こそ、ある意味、人類の灯でもあります。そして、芸術家に、甲乙はつけられません。たまたま成功して、億万長者になる画家もいるかもしれませんが、そこじゃないはずです、あなたが目指して今までやってきたことは。そして、奥さんだってそういうあなたの演出や小説が好きだから、一緒に頑張っているのだと思います。ぼくの周りは、そういう人だらけです。そのことは、日記でもインスタでも書きませんが、それなりに、たくさんいます。若くもないけれど、芸術に心を動かされて必死で創作に励んでいる人ばかりです。みんな仲間です。無責任なことを言わせてもらいますが、あなたが日々取り組んでいる創作は、稀有なもので、人類の財産なんです。だから、続けてもらいたい。小劇場に集まる人たちは、あなたの中に、とってもオリジナルな創造の希望を見つけていると思います。堅実に生きることを優先してほしい、とか、ぼくは言うつもりはありません。お子さんが出来たら、どうやって生きていくんだ、辻さん、無責任だな、と怒る人もいるかもしれない。でも、ぼくの周りは、みんなそれでも、頑張っています。アーティスト、芸術家は、低い立場ですか? あなたにしか作ることのできない何かがありますよね。どうか、投げ出さないで、諦めないで、寸暇を惜しんで、どうぞ、迷うことなく突き進んでください。ぼくはこの年齢ですが、朝から晩まで、まさに「寸暇を惜しんで」創作を続けています。わかってくれる人はいます。人間であることのすばらしさを一緒に、表現していきましょう。いつか、あなたの舞台を見に行くことが出来ますように。奥様に、よろしくお伝えください。小さな声で、えいえいおー」

辻村相談窓口、「芸術家の未来」



父ちゃんの独り言、&、近況のようなもの。
ぼくは、それでもチャットGPTのことをチャッピーと呼んで、共存しています。きっと、音楽も小説もあらゆるものが、人工知能との共存を余儀なくされると思います。ある種の共存は可能だと思いますよ。芸術的臨界点を人類はまもなく超越するので、あらゆる事態に、備える必要もあるかもしれませんね。研究中です。

昨日、ノルマンディに届いた拙著「泡」ですが、テーブルの上において、記念撮影をしました。
立派な本で、こんな時代に、集英社さん、ありがとう。

10月20日に、全国のディスクユニオンで、「歌う詩人」のファーストアルバム「詠み人知らず」が発売になる、予定です。
小説「泡」、そして絵画展「鏡花水月」そして、CD「詠み人知らず」は、ぼくの芸術的三位一体作品となっています。今年は、壮大なことやり遂げつつあります。えいえいおー。

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