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パリ最新情報「ノートルダム寺院の秘密が明らかに。タブレットを片手にタイムスリップ Posted on 2022/04/09 Design Stories  

ノートルダム寺院の火災事件から3年が経とうとしている。
再開予定日は五輪前の2024年4月16日と設定されており、現在も急ピッチで修繕作業が行われている。
修復案や再建の経過についてはたびたびパリ最新情報にて報告させていただいているが、
4月7日からは「大聖堂の修復作業の裏側」を公開するという、非常にレアなエクスポジションがパリで始まった。

パリ最新情報「ノートルダム寺院の秘密が明らかに。タブレットを片手にタイムスリップ

場所は寺院にも近い、パリ5区にあるコレージュ・デ・ベルナルダン。
ここはもともと13世紀に建てられた神学校で、改修工事を経て同名の文化センターに生まれ変わった。
ノートルダムとほぼ同世代の荘厳な建物は、寺院をテーマにしたエクスポジションの会場としてもふさわしい。

規模自体は小さいのだが、内容はとても濃いものだった。
というのも、こちらでは入館者全員にタブレットが貸与され、「没入型エクスポジション」という新しい方法での鑑賞が可能なのだ。

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パリ最新情報「ノートルダム寺院の秘密が明らかに。タブレットを片手にタイムスリップ

通常、展覧会では音声ガイドを有料で申し込む必要がある。
ところがこちらでは入館料もタブレット端末も無料。
パネル毎に置かれた画面をスキャンすることで、タブレットに詳細が表示され、来場者はそれとともに展示を楽しむという仕組みだ。
こうしてコレージュ・デ・ベルナルダンでは、今まで誰も知らなかった大聖堂の修復秘話が明かされることになった。



パリ最新情報「ノートルダム寺院の秘密が明らかに。タブレットを片手にタイムスリップ

ノートルダム寺院の建設が始まったのは1165年。
まずは当時の建設に関わったサヴォワール・フェール(職人)たちの秘密が明かされていた。
例えば彫刻の一部に、先に完成したサン=テティエンヌ大聖堂の石材がリサイクル利用されていたこと、現場は力作業だったため、農民の日雇い労働者を大量に採用していたことなど。
外壁、内部の装飾、ガーゴイルに使われた石材がそれぞれ異なっていたことなど、ノートルダム寺院の建設には、当時の権力と技術がこれでもかというほどつぎ込まれていた。

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そしてエクスポジションは現在の修復作業についても言及する。
火災後、約2年にわたる保全作業がようやく終わったノートルダム寺院では今、12世紀と同じく、フランス最高峰の職人たちによって修復作業が行われている。

職人の職業もさまざまだ。
ステンドグラス職人、彫刻修復家、絵画修復家、大工、石工、屋根ふき職人、オルガン職人までおり、考古学者らと連携をとりながらそれぞれの持ち場で修復に当たっている。
なおノートルダム寺院の大パイプオルガンに関しては、現在部品ごとにフランスの3か所の工房で修復が行われており、調律には6か月もかかるという。



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※現在のノートルダム寺院。手前のプレハブで一部の修復作業が行われている


必要な石材は面積にしておよそ1000㎡。
フランスの2か所で採石が行われており、ノートルダム寺院建設時に使われた石灰石に最も近いものが選ばれている。

また焼け落ちてしまった尖塔部分も、もともと使われていた材料と同じもので修復される。骨組みには2000本のコナラの木が使用され、フランスの林業組合から寄贈された。
この一番大事とも言える作業は2023年に開始されるという。

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ここまでの大規模な修復作業は、ノートルダム寺院の歴史上でも初めてのことだそうだ。
それだけあの火災がフランスにとっては衝撃的であり、同時に何としてでも守らなければいけない存在なのだ。

今回のエクスポジションは、過去も今も、どれだけノートルダム寺院がフランスの人々から愛されているかを実感できるものであった。
無料で、日本語にも対応している新しいタイプの「没入型エクスポジション」。
7月17日までの期間限定というのがとても残念なのだが、これを開発したパリのベンチャー企業「Histovery(ヒスカバリー)」は今後、世界に進出したいと考えているそうだ。
2024年ノートルダム寺院の再開に向けて、知られざる秘密がまた明らかにされるのかもしれない。(大)

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