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パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」 Posted on 2021/09/08 Design Stories  

スイーツ好きなら一度は聞いたことのあるパリのパティスリー、アンジェリーナ。
アンジェリーナと言えばモンブラン、モンブランと言えばアンジェリーナである。

しかし、アンジェリーナはただのモンブラン屋さんではない。
遊び心にあふれたキュートなケーキが並ぶほか、朝食やランチも楽しめるサロン・ド・テとして世界中の人に親しまれている。

パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」



ココ・シャネルやプルーストなど、偉人たちの心をも奪ってきたアンジェリーナだが、なんとこの9月、老舗フレグランスメゾンの名香をパティスリーに変身させた。これは実にフランスらしい試みと言える。

そのフレグランスメゾンの名は、グタール(元アニック・グタール)。
アンジェリーナのサロンから100mほどの所に本店を構える。グタールは2020年で創立40周年を迎えた、日本でも人気の高いブランドだ。

シングルマザーの経営者だったアニック・グタールは、ピアニストでもあった。感情を音に見立てて表現するように、香りでも気持ちを表すことができたという。
そんなグタールの名を世に広めた香りが、「プチシェリー」である。これは、アニックの愛娘カミーユが20歳になった記念に調香されたオードトワレ。世界で大成功を収め、ブランドのアイコン的フレグランスになった。

パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」



カミーユが小さい頃、毎週水曜日の放課後、アニックはアンジェリーナに連れていき、娘との甘いひとときを過ごしていた。そんな2人のストーリーをもとに、グタールの40周年を記念して、アンジェリーナのシェフパティシエであるクリストフ・アペールが手がけたのが今回のパティスリー、「プチシェリー」である。

パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」



オリジナルの香水がどのようなコンセプトで作られているか、まずはここでご紹介したい。
プチシェリーは日本語で「小さな愛しい人」という意味を持つ。家族とか親しい間柄の(目下の)女性に対する愛称なのだが、全く、これほど慈愛に満ちた香りはなかなか見つからないかもしれない。

ヒロインとなっているのは洋梨とローズの香り。
トップノートではそのヒロインが遠慮がちに顔を出す。ウォータリーな洋梨はどこまでも控えめで、恥ずかしがり屋の上流階級のお嬢さん、といったところだ。

ミドルノートでは清潔なライラックがメイン。そのハッピーな香りは、辺りが一瞬でパステルカラーに染まるほど美しい。そしてホワイトムスクとバニラの人肌めいた香りが、全体を優しく包んでフィニッシュとなる。

とにかく優しくライトで、抱きしめたくなるようなプチシェリーの香り。
その100%なピュアさに、「守ってあげたい」という保護欲に駆り立てられる。言い換えれば、ありとあらゆる人種の母性・父性を呼び覚ます香りかもしれない。

女性のファーストフレグランスに最適なプチシェリーだが、大人の女性がまとえば逆にフレッシュで好印象だ。清潔感と癒しに満ちたこの香り、実は世の中の男性の弱点を突いていると言って差し支えない。

パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」



アンジェリーナの「プチシェリー」は、そんな香りをモチーフにしたパティスリー。
まず、ベイビーのほっぺのようなフォルムがとても可愛い。見た目の色も淡く、綺麗で、プチシェリーのイメージそのものだ。

パリ最新情報「あの名香がアンジェリーナのケーキになる」

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外側のコーティングはローズ風味。雪のようなホワイトチョコパウダーが添えられている。
カットすると、何層にも分かれたフレーバーが姿を出す。洋梨のジュレ、バニラムース、アーモンドクリームが重なったそのシェイプは、香りの変化を表しているようだった。

ケーキというよりはムースといった食感で、甘さは控えめ。秋の味覚とプチシェリーをかけた、アンジェリーナの粋な演出である。
これは自分へのご褒美というより、誰かにギフトとして贈りたくなるパティスリーだ。そして、贈った相手の喜ぶ顔が見たくなってしまう。それはやはり、香水プチシェリーのコンセプトに似ているものがあった。

この香りの主人公でもあるカミーユは、母アニックの意志を受け継いで現グタールの代表となっている。もしアニックが存命だったのなら、今回のアンジェリーナの企画を泣いて喜んだに違いない。

9月限定で、パリだけの発売というのが本当に残念なのだが、このようにフランスらしいコラボが今後も登場することを期待している。(内)

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