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パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」 Posted on 2025/09/02 Design Stories  

 
パリ16区、セーヌ川のほとりにあるパリ近代美術館では、マティスの『ラ・ダンス(La Dance)』をはじめ、さまざまな近現代アートをゆったりと楽しむことができる。
展示室の窓や併設のカフェからは、華やかなエッフェル塔の姿がくっきりと。さらに入場は無料で(常設展)、予約も不要という入りやすさから、「もっとも行きやすい美術館の一つ」として、パリ市民にも観光客にも親しまれている。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」



 
すぐ隣にある「パレ・ド・トーキョー」と並ぶように建っているパリ近代美術館。外観は“芸術の神アポロン”をイメージしたとあって、かなり壮大だ。
ところが、一歩なかへ入ると無装飾のシンプルな空間が続いている。天井も高いので、大型作品とじっくり向き合うにはぴったりな場所ではないだろうか。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」



 
もちろん大型作品でなくても、「作品の世界観に没入できる」という観点では、パリでも屈指の美術館だと思う。パリ近代美術館は、それほど静かで、ゆったりとしている。人も少ないので、長く作品を眺めていても不思議と疲れを感じない。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

※『L’Équipe de Cardiff』ロベール・ドローネー作

 
さらに、前衛的な現代アートが集まる「パレ・ド・トーキョー」と比べると、こちらでは落ち着いた大人の雰囲気が漂っている。
展示はフォービズムやキュビスムを中心に、ゴッホ以降、20〜21世紀の近・現代美術に焦点をあてたもの。マティス、デュフィ、モディリアーニといった巨匠の名作から、2007年以降に公開された作品まで。クラシックと現代の空気が、違和感なく混ざり合っている。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

※『トルコ椅子にもたれれるオダリスク』マティス作



 
そんなパリ近代美術館で“見るべき作品”として挙げられるのは、やはりマティスの『ラ・ダンス(La Dance)』だろう。『ラ・ダンス(La Dance)』に関しては、これだけのための特別室も用意されている。

実はパリ近代美術館では、『ラ・ダンス(La Dance)』の下描きとなる大作も展示されているのをご存知だろうか。特別展示室に入るとまず、その巨大な習作と目が合う。下描き上では、“悩むマティス”が確かにいた。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

※マティスの習作、『未完成のダンス(La Danse inachevée)』最終版の一つ

 
習作では、青と白でざっくりとかたちが描かれている。これは人物の動き・構図を試している段階なのだそうだ。マティスは「生きているもの、歌うものを求めるには、試行錯誤しかない」と語ったという。
※1992年、マティス家が60年間も放置されていた3枚の大きなキャンバスを発見。そのうちの一つが『未完成のダンス(La Danse inachevée)』と呼ばれるようになった。
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

※『ラ・ダンス(La Dance)』最終版(1931–1933)

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

 
そして完成したのが『ラ・ダンス(La Dance)』。マティス自身は「構図を変え、異なる仕事、異なる感情を表した」などと説明している。
このように、壁一面に飾られたマティスの大作。それでも鑑賞しているのは自分一人だけと、非常に贅沢な時間を味わうことができた。
 



パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

 
著名な美術館、そして著名な作品の前では、どうしても混雑が避けられない。しかしパリ近代美術館の醍醐味は、素晴らしい作品を素晴らしい距離感で鑑賞できるところ。
国際色ゆたかなアーティストの作品を堪能したあとは、併設のギフトショップやカフェでその余韻に浸るのも楽しい。こうして最後まで、ゆったりとした時間が流れるのがパリ近代美術だ。(大)
 

パリ・アート情報「パリ市立近代美術館、マティスの大作と向き合うひとときを!」

 
【パリ近代美術館】

住所:11 Av. du Président Wilson, 75116 Paris
公式HP:https://www.mam.paris.fr/
開館時間:10:00~18:00
休館日:月曜日 ※ほか不定休あり
常設展は無料
 

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