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パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」 Posted on 2025/06/06 Design Stories  

 
パリ16区にあるマルモッタン・モネ美術館。オルセー美術館やオランジュリー美術館といった“印象派の殿堂”に比べると、やや控えめな存在かもしれない。
しかしここには、フランスを代表する傑作がある。印象派の名の由来となった、モネの名作『印象、日の出(Impression, soleil levant)』が所蔵されているのだ。モネの世界を愛する人であれば、ぜひ一度は訪れてみたい。
 

パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」



 
もともとは美術コレクター、ポール・マルモッタンの私邸だったというこの建物。暖炉の上に飾られた鏡、歩くたびにギシギシときしむ床、柔らかなカーテン付きの窓……。マルモッタン・モネ美術館は、いわゆる美術館というよりも、かつてのコレクターが愛した“美術のある暮らし”を体感させてくれる場所。これこそがパリの邸宅美術館の素晴らしさでもあるが、印象派コレクションの充実度に関しては、やはり他館とは一線を画すものがある。
 

パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」

パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」



 
マルモッタン・モネ美術館のコレクションは、モネだけにとどまらない。カイユボット、モリゾ、ルノワール、マネといった巨匠たちの作品が贅沢なまでに並んでいる。さらに見逃せないのが、ポール・マルモッタン自身が集めたという調度品の数々。これらのコレクションは邸宅とともに寄贈され、1934年に美術館として新たな歴史を歩みはじめた。
 

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そんなマルモッタン・モネ美術館では今、印象派の起点とも言うべき画家、ウジェーヌ・ブーダンの企画展「ウジェーヌ・ブーダン、印象派の父:特別コレクション」がスタートしている。印象派にかかわる切れ味鋭い企画展も、マルモッタン・モネ美術館ならではだ。
 

パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」

※企画展は25年4月9日〜8月31日まで



 
ウジェーヌ・ブーダンは、海辺や空の表現にとくに優れ、ノルマンディー地方を拠点に“海と空”を描き続けた。若きモネに絵の手ほどきをし、のちに大きな影響を与えた存在でもある。モネが10代の頃に出会い、ともに屋外へ写生に出かけるようになった相手が、このブーダンだったというわけだ。今回の企画展では、マルモッタン・モネ美術館の内外から集められた100点以上の作品が展示されている。
 

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※8つの章立てで構成されるブーダンの展示は、ノルマンディーの風景から、南仏やヴェネツィアの海までさまざま

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そして企画展は、『印象、日の出(Impression, soleil levant)』が置かれている地下へと続く。そこには、世界最大級のモネ・コレクションが広がっている。ブーダンの作品を観たあとに訪れるといっそう感慨深く、雲のかたちや光の筆運びに、二人がともに眺めたであろうフランスの空が重なるようだった。
 

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※『印象、日の出(Impression, soleil levant)』クロード・モネ



パリ・アート情報「世界一の『モネ』コレクション。パリのマルモッタン・モネ美術館へ」

※常設展ではモネ晩年の作品が数多く展示されている

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※鑑賞後は中庭のカフェでゆっくりと(夏季のみ)

 
マルモッタン・モネ美術館はこのように、小規模ながらも充実した印象派コレクションに出会うことができる。美術館を出たあとに「空を見上げたくなる」という余韻が残るのも、印象派の一つの魅力かもしれない。来年2026年は、そんな巨匠モネの没後100周年にあたる記念すべき年だ。(コ)
 

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