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パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」 Posted on 2025/10/11 Design Stories  

 
彫刻『考える人』といえば、オーギュスト・ロダン。パリには、そのロダンが晩年の約10年を過ごした邸宅があり、今も美術館として公開されている。
 

パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」



 
所蔵されている作品は、およそ6,770点の彫刻と、7,000点のデッサン。加えて、ロダンが集めていた古代のコレクションまで展示されている。
聞くと膨大に思えるが、実際に美術館を歩いてみると驚くほど見通しがいい。一つ一つの彫刻と向き合いながら、疲れ知らずで鑑賞することができる。手入れの行き届いた美しい庭園も、ぜひセットで訪れてみたい。
 

パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」

※エントランス近くにある『考える人(Le Penseur)』

パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」

 
そして館内の展示は、若き日のロダン作品からスタート。彫刻家としての印象が強いロダンだが、実は絵筆もまた見事だったらしい。人物画、風景画…と、彼の油彩には、名だたる画家たちに混じっても引けを取らないオーラがあった。
 

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※『接吻(Le Baiser)』

パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」

※『三つの影(Les Trois Ombres)』

 
さらに進んでいくと、『考える人』だけではないたくさんの名作に出会う。『接吻(Le Baiser)』や、『三つの影(Les Trois Ombres)』などは今にも動き出しそうで、ついつい見入ってしまった。
中にはあまりにリアルで緊張感が漂う作品もあり、人体やポージングにとことん向き合ったロダンの情熱が、こちらにも伝わってくるようだった。
 

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※『秘密(Le Secret)』

 
かと思えば、「手」の彫刻がズラリと並ぶ展示室もある。ロダンはキャリア後期に、手のひら・指の動きに焦点を当てた作品をかなり多く制作したそうだ。
その手は、単なる身体の一部ではなく、“無言のコミュニケーション”や“内面の葛藤”を語る存在なのだという。同じくキャリア後期には、女性の「表情」にフォーカスした作品も多く制作されている。
 



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『ゴシップ(Le Commérage)』カミーユ・クローデル作

 
美術館の後半では、ロダンの愛弟子、カミーユ・クローデルの彫刻も紹介されていた。
ロダンと協働する中で、自身の表現力を磨いたというクローデル。たしかに彼女がほどこした表情はとても繊細で、ロダンとはまた違った凄み・鋭さが感じられた。
 

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※作家バルザックの彫刻

 
ロダンが同じ時代に生きたパリの芸術家たちと、深い交流を持っていたことも興味深い。バルザックやヴィクトル・ユゴーからは肖像制作を依頼されたようで、試行錯誤したであろう何体もの彫刻が展示されていた。
 



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※『ロダンの考える人(Le Penseur de Rodin)』ムンク作、1907年

 
またロダンは、ムンク、ゴッホ、モネといった画家とも親交があり、互いに敬意を抱いていたという。館内では、彼らの知られざる一枚も展示されていて、足を止めて魅入る人が多くいた。
 

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※建築としても素晴らしいロダン美術館

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屋内の観賞を終えたら、目の前に広がる庭園へ。ここでは『考える人』をはじめ、『地獄の門(La Porte de l’Enfer)』や『カレーの市民(Les Bourgeois de Calais)』といった、ロダンの名作が置かれている。季節の風を感じながら作品を眺めることができる、貴重な空間だ。晴れた日にはベンチに腰をおろして、好きなだけのんびりしていたくなる心地良さもある。
 

パリ・アート情報「ロダンの世界に出会う、彫刻と庭園が素晴らしい『ロダン美術館』」

 
ロダンは生前、「作品を国に託す代わりに、暮らしていた邸宅を美術館として残してほしい」と望んだ。もちろんその約束は果たされたのだが、残念ながらロダンは完成の2年前にこの世を去ってしまった。
それから100年。パリの邸宅は今も変わらずロダンの名を掲げ、世界中から人々を迎え入れている。(大)

【ロダン美術館(Musée Rodin)】

住所:77 rue de Varenne, 75007 Paris
アクセス:メトロ Varenne駅(13号線)
開館時間:火〜日10:00〜18:30(最終入場17:45)、月曜休館
 

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