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パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」 Posted on 2025/11/01 Design Stories  

 
フランスではじめて一般に開かれたという、歴史ある美術館「リュクサンブール美術館」をご存じだろうか。パリでも指折りに美しいリュクサンブール公園の一角にあって、小ぶりで見やすいところが何よりも魅力的。毎日オープンしているので、パリの散歩がてらにぜひ立ち寄ってみたい。
 

パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」



 
リュクサンブール公園も大変に歴史が古いのだが、美術館が設立されたのは今から275年前、1750年のことだった。ルイ15世のもと、王立絵画・彫刻アカデミーがリュクサンブール宮殿の一部を使って、市民に公開する展覧空間を設けたのがそのはじまりだ。
つまりここは、フランスではじめての「皆のための美術館」。19世紀には、印象派の画家たちの作品をいち早く紹介したことでも名を残している。
 

パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」

※現在開催中のエクスポジション「Soulages, une autre lumière(もうひとつの光)」

 
パリの美術館で興味深いと思うのは、それぞれの趣と空気感がまったく異なっているところ。かわいらしい街並みに溶け込むモンマルトル美術館、ピリリとした緊張感の中でシャープな作品に圧倒されるピカソ美術館……と、どれも、館の雰囲気ごと味わえるのが嬉しくもある。

リュクサンブール美術館はというと、とても上品で、大人の落ち着いた雰囲気が漂っている。ところがそのスタンスは、エクスポジションごとに展示内容をがらりと変えるというもの。常設展を持たない「フォンダシオン・ルイヴィトン」や「パレ・ド・トーキョー」といった、今をときめく現代アート美術館と同じコンセプトだ。
 



パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」

※フランスの現代アーティスト、ピエール・ソラージュ

 
そんなリュクサンブール美術館で現在開催されているのは、「Soulages, une autre lumière(もうひとつの光)」。フランスを代表する現代アーティスト、ピエール・ソラージュの大回顧展である。
 

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ソラージュ(1919-2022)は南フランス出身で、100歳を超えてからも創作を続けたという、まさに生涯現役のアーティスト。
彼の作品の大きな特徴は、黒の使い方にあった。一般的に暗くて沈んだ色とされる黒を、「光を反射するカラー」として扱ったのだ。角度によって光が変化する独特の表現方法を、ソラージュ自身は「ウトルノワール(黒の向こう)」と呼んでいた。
 

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ソラージュの作品では、筆運びの痕跡がそのまま残っていることが非常に印象的だった。まるで日本の書道のように、一つ一つに筆圧のリズム・濃淡が感じられる。
さらに今回の展覧会では、ソラージュの中でもとくに“紙”に描かれた作品に焦点が当たっていた。その繊細さもあって、日本人には親しみやすさを感じるエクスポジションなのではないだろうか。
 

パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」

※ギフトショップにて。インテリアにも取り入れたくなるソラージュのグッズ

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そしてリュクサンブール美術館の隣には、モンブランで有名なアンジェリーナのティーサロン、「マドモワゼル・アンジェリーナ(Mademoiselle Angelina)」が併設されている。
こちらではなんと、美術館とのコラボレーションスイーツ「ウトルノワール」が期間限定で発売に。
 

パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」

※ソラージュの黒の世界をチョコレートで表現したのだそう

 
「ウトルノワール」はマドモワゼル・アンジェリーナのみの展開で、ソラージュ展の開催中は、帆立を使ったメインディッシュ「サンジャック・ウトルノワール」も提供しているとのこと。今回の企画展にインスパイアされた、アートと料理の素晴らしいつながりだ。
すぐ近くにサン・シュルピス教会も見えるこの場所は、芸術の秋という言葉が本当によく似合う。(ち)
 

パリ・アート情報「リュクサンブール美術館で現代アートを。“黒”に光る企画展が開催中」

 
【リュクサンブール美術館(Musée du Luxembourg)】

住所:19, rue de Vaugirard, 75006 Paris
アクセス:RER B線「Luxembourg」駅、メトロ4番線「Saint‑Sulpice」駅など
公式HP:https://museeduluxembourg.fr/fr
開館時間:毎日10:30~19:00、5月1日、12月25日のみ休館
入場料: €15.50(企画により変動する可能性あり)
Soulages, une autre lumière展:2025年9月17日~2026年1月11日まで
 

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