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パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」 Posted on 2025/11/19 Design Stories  

 
パリ15区、モンパルナス地区に位置する「ブールデル美術館(musée Bourdelle)」。ここは、かつてロダンの弟子として腕を磨いた彫刻家、アントワーヌ・ブールデルのアトリエ&自宅があった場所だ。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」



 
とはいえ、作品の雰囲気は師匠ロダンとまったく異なっていて、かなり興味深い。たとえ彫刻に詳しくなくても、その迫力と空間の美しさには思わず見とれてしまう。さらに常設展であれば、誰でも無料で見学することができる。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

 
彫刻家ロダンが世界的に有名であるため、ブールデルの名を知る人は少ないかもしれない。しかし、その手による凛とした力強い作品は、フランス近代彫刻史の大切な1ページを担っている。

そんなブールデルは南仏に生まれ、パリに暮らし、パリで人生の幕を閉じた。エコール・デ・ボザール(フランス国立美術学校)で本格的に彫刻を学んだ後、1893年には、ロダンと運命的な出会いを果たし師と弟子の関係を結んでいる。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」



 
巨匠ロダンと20歳以上も年の離れたブールデルは、彼の弟子であり共同制作者であり、良き友でもあったという。ただ1900年以降は、ロダンの「個人的な感覚」「ドラマティックな作品」から離れて、古代ギリシャ・ローマ彫刻に影響された独自のスタイルを求めるようになる。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

※猛々しい印象のブールデル作品。エモーショナルなロダン作品とは趣がまったく異なる

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

※ブールデルの代表作品『瀕死のケンタウロス』

 
中でも『弓を引くヘラクレス』や『瀕死のケンタウロス』は、ブールデルの傑作であり代表作品だ。これらは今、ブールデル美術館の入り口近くに堂々と展示されていて、無料とは思えないほどの見ごたえを来館者にもたらしてくれる。
 



パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

 
美術館内部にある「中庭」も、もちろん見逃せない。木々や草花、そして彫刻に囲まれた小さな散歩道があって、歩きながら美しい作品を鑑賞することができる。
こうした感覚は、絵画中心の美術館ではなかなか味わえないものだ。屋内も屋外も、庭もすべてが展示室という、彫刻美術館ならではの魅力がしっかりとあった。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

 
さらに興味深いのは、ブールデルが「先生」としても優れていたことを紹介する展示室。独り立ちしたブールデルは、次世代の教育にも熱心だったという。
何でも生徒たちには、「私は学校の教師ではない。教授でもない。あなたたちと共に働く芸術家だ」と伝えていたとか。そんな寛大さを反映するように、彼のもとからは女性や外国人の彫刻家が次々と誕生している(当時では珍しいことだった)。
 



パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

※ベートーヴェン像。ブールデルは音楽、とくにベートーヴェンを「芸術家」として深く敬愛していたそう

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

 
というように、無料ながら見どころが尽きないブールデル美術館。しかし、この美術館の“心臓部”といえば、当時のまま再現されたアトリエ空間だろう。自然光が差し込む広い部屋には、ブールデルの工具や習作が丁寧に並べられている。
光の具合も雰囲気も、そして周囲の緑までもが芸術の味方をしているようで、ブールデルがここに45年間も暮らした理由が少し分かった気がした。
 

パリ・アート情報「ロダンの弟子、彫刻家ブールデルの美術館へ」

 
1949年の開館から70年以上。この美術館の周辺には、かつて多くのアーティストが暮らしていたという。現在もモンパルナス駅から歩いて5分と近いのに、周囲は落ち着いていて人通りも少なめだ。そのぶん、週末にはパリの人たちが思い思いに訪れる“穴場的”な美術館となっている。(コ)

【ブールデル美術館(musée Bourdelle)】

住所:18, rue Antoine‑Bourdelle, Paris
開館時間:火~日曜 10:00~18:00(月曜休館)
最寄り駅:地下鉄4・6・12・13号線、モンパルナス – ビエンヴニュー駅
入場料:常設展示は無料(予約不要)、特別展は有料の場合あり
 

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