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パリ・アート情報「パリの『ダリ美術館』、ダリ作品と現代アートのコラボ展開催中」 Posted on 2025/11/26 Design Stories
パリ・モンマルトル地区の散策ついでに、立ち寄りたいアートスポットがある。シュルレアリスムを代表するアーティスト、サルバドール・ダリの作品を展示した「ダリ美術館(Dalí Paris)」だ。

ダリの美術館といえば、出身地スペイン・フィゲラスにある「ダリ劇場美術館」がもっとも有名。しかしパリのモンマルトルも、彼の人生にとっては大切な場所の一つだった。
ダリは一時期ではあるが、1920年代後半から1930年代にかけてパリで暮らしている。これは当時のパリが、シュルレアリスム(超現実主義)という新しい芸術運動の中心地になっていたため。ダリもこの流れに強く惹かれたといい、すでにパリで暮らしていたパブロ・ピカソに会うため、そしてシュルレアリスムの最前線で活動するため、スペインからパリへと渡った。

※『記憶の固執』ブロンズ・エディション作品
モンマルトルで過ごした日々は、ダリがシュルレアリスムの世界に深く潜り、自らの作風を確立していくために欠かせない時間だったそうだ。
ただ、モンマルトルにあるダリ美術館は、ダリ本人の意向で設立されたものではなかった。こちらはダリの作品を長年集めてきた、コレクター/ギャラリストによって開かれた“私設美術館”。2018年にリニューアルオープンしていて、絵画・彫刻・オブジェといったダリのさまざまな作品を、アートギャラリーのように展示している。

※『Le Papillon fantastique ou Arlequin Clown』蝶に見える絵が、円筒ミラーを通して見るとピエロの顔に変化する、という二重イメージ

※ダリがデザインした皿とカトラリー

大きな美術館ではないものの、訪れればダリの不思議な世界にすぐに引き込まれる。鑑賞していると彼の“夢の中”にいるような気分になるのも、この美術館ならではの特徴だ。現在ではそんな世界観と、現代アートを組み合わせた興味深いエクスポジションも開催されている。

ダリ美術館が面白いと感じるのは、このように「ダリの作品だけで終わらない」ところ。彼をリスペクトしながらも、現代アートとのコラボレーションを積極的に行い、巨匠ダリの世界観を現代への感覚へとつなげている。

※ダリの代表作品『CANAPÉ LÈVRES DE MAE WEST』とルビンスタインの『Bonaparte devant le Sphinx et l’Alien』
さて今回、コラボレーションしているアーティストは、フランスの現代アーティストであるパトリック・ルビンスタイン(Patrick Rubinstein)。ルビンスタインは、見る角度や距離によってイメージが変化する作品で知られ、「キネティック・ポップアート」という独自の表現を生み出したアーティスト。そしてこれは、ダリが愛した錯視の世界ともよく響き合う。

※立ち位置によって絵の見え方が異なる

パリの美術館では通常、企画展は企画展として別のスペースで行われることが多い。ところがダリ美術館では、ダリとルビンスタインの作品が二重奏のように展示されていて、明確な区切りがないことがとても印象的だった。

こうして、現代の表現へとバトンタッチする姿勢を持つダリ美術館。近年では、ダリの遺産を過去に閉じ込めず、現代アートとの対話を重視しているところがなお興味深い。今まさに開かれているエクスポジションもそうで、ダリのシュルレアリスム作品とルビンスタインのアートが共鳴して、訪れる人をより幻想的な世界へと導いてくれる。
その雰囲気も美術館というよりは、大きめのアートギャラリーのようで、じっくり鑑賞しても約1時間ほどと回りやすい。
ひそかなアートスポットが多いモンマルトルだが、ダリ美術館はその中でも一番ユニークだ。美術館を出たあとに広がる街の景色も素晴らしく、ついあちこち寄り道したくなる。(大)
【ダリ美術館(Dalí Paris)】
住所:11 Rue Poulbot, 75018 Paris
アクセス:メトロ 12番線、Abbesses駅から徒歩7分
公式HP:http://www.daliparis.com/
開館日:毎日10:00~18:30
入場料:一般16ユーロ


