欧州アート情報
パリ・アート情報「パリの街を歩きながらアート探し!通りすがりの“インベーダー”」 Posted on 2025/06/12 Design Stories
パリの壁にある、小さなモザイクアート「インベーダー」をご存じだろうか? 日本生まれのゲーム『スペースインベーダー』にインスパイアされた、可愛らしいストリートアートだ。
昭和末期のゲームセンターで大流行した、あのドット絵のレトロなゲーム。パリの街では、そんなインベーダーたちが“現実の世界”に姿を現している。建物の壁、セーヌ川の橋のたもと、交差点の角……と、意外なところにぴょこんと(そしてたくさん!)描かれているのだ。
モザイクタイルで作られたインベーダーたちは、街のあちこちで見ることができる。このユニークなアートを手がけているのは、“Invader(インベーダー)”という名前で活動する正体不明のアーティスト。出身はフランスで、だいたい1990年代後半ごろから活動をスタートさせたという。まるで、“フランス版バンクシー”のような存在だ。
実は、パリ市内だけでも1500体以上のインベーダーが設置されているそうだ。活動が始まったのが1990年代後半だとすれば、もうすぐ30年近くにもなる。ということは、ざっくり計算しても、年間50体以上のペースで“侵略”を続けてきた……ことになるだろう。
ただしインベーダーたちは、公式に許可を得て設置されているわけではない。厳密に言えば、フランスの法律ではむしろNG。無断で公共物に手を加える行為は、違法だとみなされている。
※トトロも登場
とはいえ、インベーダーは例外のようだ。たとえば2024年、パリで開かれたオリンピックの際には、インベーダーがなんと“公式”の場に登場した。パリ市役所の前にモザイク作品が設置されたり、13区のイタリア広場では、建物のファサード一面を大胆に使ったインベーダーが現れたり。これまで“こっそり”街に現れていた彼の作品が、大手を振って歓迎されるような瞬間だった。
もちろん、インベーダーの動きを発信する公式Instagramアカウントも存在する。パリはストリートアートの素晴らしき舞台だが、こうした活動を縛らずに、ひっそりと容認するところもまた素晴らしい。
※13区のイタリア広場に現れた巨大なインベーダー・アート(公式Instagram invaderwashereより)
さらに面白いのは、街かどに潜むインベーダーたちを探して遊べる、専用の携帯アプリがあることだ。その名は、「フラッシュ・インベージョン」。アプリを開いて、実際に見つけたインベーダーの写真を撮ってアップロードすると、スコアが加算されていく仕組みになっている。自分がゲットしたインベーダーをギャラリーで眺めたり、他の人の発見をタイムラインで見ることもできる。
※スポーツ用品店の建物にある「ネイマール選手」のモザイクアート。地区ごとに特徴的なアートが見つかるのも楽しい
※インベーダーを探す途中で発見したパリの「だまし絵」、窓部分
さらにインベーダーを探して上を見上げていると、思いがけず他のアート作品と出会うことがある。
たとえば、建物の壁に描かれた「だまし絵」。数は多くないものの、古いアパートの壁などにひっそりと紛れ込んでいる(どれもつい足を止めたくなる出来映えだ)。イベントや美術館とは異なるアート鑑賞だが、パリにはそんな、ちょっとした楽しみがいくつも用意されている。(る)