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パリ・アート情報「ノートルダム新ステンドグラス、グランパレで初公開、論争の渦中で」 Posted on 2026/02/03 Design Stories
シャンゼリゼ大通り近くの大規模展示会場、「グランパレ(Grand Palais)」。ここでは現在、フランスで大きな論争を呼んでいる“現代アート”のエクスポジションが開催されている。
復興を遂げたノートルダム大聖堂に、新しく設置される予定の「現代版ステンドグラス」が、実寸大の模型として公開されているのだ。


新ステンドグラスを手がけるのは、1981年生まれのフランス人画家、クレール・タブレ。モダンアート(人物像)がメインだが、人の記憶・内面世界を探る作品もかなり多いという。
ではなぜ、彼女のステンドグラスが、フランスでここまで大きな議論を巻き起こしているのか。

※クレール・タブレ『Self portrait(Purple)』、Claire Tabouret Instagramより
ノートルダム大聖堂の火災後、驚異的なスピードで復興作業がすすめられたことは記憶に新しい。
しかし、その修復計画の課程では、南側廊に設置されているステンドグラスを「現代アートに置き換える」という大胆な構想が浮上していた。火災による損傷を免れていたにもかかわらずだ。
そしてこのプロジェクトは、マクロン大統領の支持を受けながら具体化していく。2024年末には、フランス文化省主催のもと、制作を担当するアーティストの選考会も実施された。そこで選ばれたのが、クレール・タブレだったというわけだ。

※今回はクレール・タブレのステンドグラス制作秘話を公開する、史上初のエクスポジション
「2019年の火災で損傷していないのに、なぜ、歴史的価値の高いステンドグラスが撤去され、交換されるのか?」
同プロジェクトが大きな注目を集めている理由は、まさにこの一点にある。旧ステンドグラスは、19世紀に修復を担った建築家、ヴィオレ=ル=デュクが設計した「グリザイユ」と呼ばれる歴史的な作品だった。
反対派は「現代アートそのものを拒絶しているわけではない」というが、反対署名はすでに30万を超えており、フランス国内で裁判にまで発展している。

※グランパレでは新ステンドグラスのスケッチ・制作過程を展示

※描いたモチーフを紙に刷り取る「モノタイプ技法」が採用されている
今回はそんな空気の中で開催されたエクスポジションだったが、非常に多くの人が集まっている、という印象を受けた。
しかも、観光客というより現地フランスの人々。「左から2枚目が気に入った」「これは好みではない」などと、フランス人らしい率直な意見も聴こえてきて、今もっとも話題を集めている作品に、みな大きな関心を寄せていると感じた。

新しいステンドグラスは、新約聖書に記されたペンテコステ(聖霊降臨)の物語をもとに構成されている。タブレはここで、「人々が集い、手を取り合い、風や光が満ちていく様子を通して、目に見えない力と感情が共有されるひとときを表現した」のだそうだ。


つまり、新ステンドグラスは「教えの窓」ではなく、「感じる窓」という意味合いが強い。ただ、これにも賛否両論あるようで、「宗教的に曖昧すぎる」「現代美術を持ち込みすぎ」といった批判から、「今の世界に開かれたノートルダムだ」という肯定の意見まで幅広くあるという。

※新ステンドグラスの細部
歴史的建造物に現代アート。ルーブル美術館にしろエッフェル塔にしろ、パリが何か新しいものを取り入れるとき、そこにはいつも反対意見があった。
しかし、ノートルダム大聖堂はその二つとは比べものにならないほど歴史が古い。現在行われている展示も、「文化は更新されるものなのか?」「ノートルダムは誰のために?」という問いを鋭く突きつけてくる。とはいえ、それこそが多くの人をグランパレへと向かわせている理由なのかもしれない。(大)

※グランパレで同時開催されている、エヴァ・ジョスパンの段ボールアート
Eva Jospin, Grottesco Claire Tabouret,「D’un seul souffle」ーグランパレ
開催時期:2025年12月10日~2026年3月15日まで
住所:Avenue Winston Churchill, Paris 8e
入場料:一般15ユーロ
グランパレ公式サイト:https://www.grandpalais.fr/fr/programme/eva-jospin-grottesco-claire-tabouret-dun-seul-souffle


