欧州アート・カルチャー情報

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」 Posted on 2026/03/04 Design Stories  

 
2026年6月6日から28日まで、パリ最古の橋「ポンヌフ(Pont Neuf)」が、現代アートの舞台として大きく姿を変える。
手がけるのは、1983年フランス生まれのアーティスト“JR”。タイトルは「ラ・カヴェルヌ・デュ・ポンヌフ(La Caverne du Pont Neuf)」で、橋の上に全長約120メートル、高さ最大約18メートルにもなる巨大な“洞窟アート”を出現させるという、きわめて壮大なプロジェクトだ。
 

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

※現在のポンヌフ



 
ポンヌフの大規模インスタレーションといえば、芸術家ユニットのクリスト&ジャンヌ=クロードを思い出す。彼らは1985年、ポンヌフ全体を“布”でつつみ込むという大がかりなプロジェクト「The Pont Neuf Wrapped」を発表している。※2021年にはパリの凱旋門も“ラッピング”され、大きな話題を呼んだ。
今回は、そうしたふたりの作品「The Pont Neuf Wrapped」の40周年を祝うオマージュでもあるという。
 

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

※2026年6月に行われる「ラ・カヴェルヌ・デュ・ポンヌフ」のイメージ。JR Instagram

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

※2021年、クリスト&ジャンヌ=クロードによる凱旋門のインスタレーション

 
1985年当時は、ポンヌフを乳白色の布でつつみ込むことで、橋全体のフォルムを際立たせていた。ところが、2026年のインスタレーションはそれとは対照的だ。ポンヌフをラッピングするのではなく“立体化”することで、通る人を洞窟アートの内部へと導いていく。

ではその素材とは何か。
これは、総重量約5トンの巨大なエアドーム(空気構造)でできている。空気の圧力でかたちを保つ仕組みになっていて、外側にはさらに、岩のような質感を再現するプリントが施されるという。もちろん、素材はすべて環境に配慮したもので、プロジェクトが終了した後も捨てられずにリサイクルされる予定になっている。

音響を担当するのは、元Daft Punkのメンバーであるトマ・バンガルテル。洞窟全体を重厚な音でつつみ込み、神秘的な空間を作り出すということだ。
 

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

※この橋の通路が洞窟アートに?!



 
2026年1月には、アーティストJRとそのチームが、試作モデルをオルリー空港の旧格納庫に設置したというニュースが流れた。ここでは本番に向けた最終調整を行ったといい、設営まで100日を切った現在では、チーム内ですでにカウントダウンが始まっているとのこと。
ちなみに、同プロジェクトに関わるスタッフは800人を超えている。これは、1985年に動員された300人を大きく上回る人数だ。
 

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

 
というわけで今年6月、パリは一時的に“いつものポンヌフ”を失う。現在では、冬のあいだ増水していたセーヌ川が少し落ち着いたという印象で、川の流れも人の流れも穏やかになっている。

とはいえポンヌフは、1607年に建設された歴史ある場所。パリではじめて石灰岩で築かれた橋であり、歩道を備えた最初の橋でもあった。
今回の「洞窟アート」のインスピレーション源は、このポンヌフに使われた石が採掘された、かつての石切り場にあるという。

地中から生まれた石と、パリの中心に存在する現在の橋。その原点といまを、つなぎ直そうとする試みが「ラ・カヴェルヌ・デュ・ポンヌフ」なのだった。
 

パリ・アート情報「パリ最古の橋、ポンヌフが舞台。巨大アートプロジェクトが進行中」

 
ポンヌフの一大プロジェクトは、体験型アートとして2026年6月6日に登場する。
1600年代に築かれた橋が現存していることにも感嘆するが、それを現代アートの舞台にするパリ市の気概にも感嘆せざるを得ない。
こうして、“見る”のではなく、“通り抜ける”芸術体験へ。その全貌については6月、ポンヌフの現場からあらためてお伝えしたい。(大)
 

自分流×帝京大学