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パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」 Posted on 2025/06/30 Design Stories  

 
フランスのファッションブランド「シャネル」にとって、「19」という数字は特別な意味を持っている。
創業者ガブリエル・シャネルの誕生日は8月19日。彼女が最も愛した人アーサー・カペルが命を落としたのは1919年。そして、後にメゾンの象徴となるカール・ラガーフェルドが亡くなったのも、2019年2月19日のことだった。
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

 
そんな“19”という数字が今、パリで新しい物語をスタートさせている。場所はパリの北部、19区。ここに2021年、シャネル傘下にある工房兼アトリエ「Le 19M(ル・ディズヌフ・エム)」が誕生したのだ。国内最高峰の職人たち約600人が集まる内部では、刺繍、羽細装飾、プリーツ、帽子、靴づくりなどが今もリアルに行われている。
 



パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

 
実は「Le 19M」では、一般の人々が自由に見学できるスペースがある。一階のエントランスを左に進んでいくと、たどり着くのは「ギャラリー」と呼ばれる展示スペース。ここでは、ファッションや手仕事にまつわるイベント・企画展が定期的に行われている。
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※エントランスのフレスコ画は“ぬり絵”。来場者が色を塗って完成させるという共同アート!

 
ギャラリーへの入場は無料、そして予約も不要。モダンな美術館のような雰囲気だが、ふらっと立ち寄れて、しかも手仕事の奥深さに直に触れられるという意味では、美術館よりもずっと気軽かもしれない。「観る」というより「体験する」ことに重きを置いているのも、かなり特徴的だ。
こうしたスタイルは、現在のパリのカルチャーシーンで本当に大きな広がりを見せている。今回訪れた際も、開催中のワークショップに飛び入りで参加することができた。
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※ギャラリーの内部

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※キュートなワークショップスペース



 
2025年6月27日から7月20日まで、「L’Été Ornementa(夏のオルヌマンタ)」というイベントが開催されているギャラリー。期間が約3週間と短いのだが、タッセルや飾り紐づくり、ハンドメイドのポストカードコーナー、アクセサリーづくりのワークショップ……などなど、シャネルの職人技に経緯を払ったアクティビティが多数用意されている。
今回は本当にふらりと立ち寄って、気がつけば、スタッフにすすめられるがままに手を動かしていた。
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※ツイード生地を使った飾り紐づくりに挑戦

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※約10分ほどで完成



 
挑戦したのは、ツイード生地を使った飾り紐づくり(フランス語or英語で対応)。いつもはちょっと身構えてしまうワークショップも、非常にアットホームな雰囲気でサクサクと進んでいく。「目」で観るだけでなく「手」を動かしていたせいか、頭の中も心なしかすっきりとクリアになった気がした。※作業自体はとてもシンプルで不器用でも大丈夫だった。

なお、完成した飾り紐はこの後スタッフが集めて手直しし、会場のタペストリーにデコレーションとして飾るそうだ。エントランスの“ぬり絵”と同じように、来場者みんなで作り上げる共同アートになるというのが嬉しい。
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※会場にある巨大タペストリー

 
「Le 19M」のギャラリーでは、一部のワークショップで予約が必要なものの、基本的にはこういった形で誰でも自由に参加することができる。
とくに今回の「L’Été Ornementa(夏のオルヌマンタ)」は、「没入型プログラムを通して、職人技の世界を発見すること」がテーマになっている。夏休みの観光や、ファミリーのお出かけにもぴったりのアート・アクティビティだ。
 



パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

※併設のカフェ「Café du 19M」

 
見学の後は、職人たちも利用するという併設カフェ「Café du 19M」でゆっくりと。さらに目の前の7Lブックショップ(故カール・ラガーフェルド設立)では、ファッション・アート・デザインに関する珍しい書籍もそろっていた。

パリ中心部から離れてはいるが、パリ中心部ではなかなかできない体験が「Le 19M」では待っている。フランスが誇るファッション手仕事の一端に触れられるというだけでも、心が少し満たされるようだった。
そんなパリ北東部は2024年のオリンピックを機に、開発が大きく進んだ場所である。「Le 19M」はそれ以前から存在しているが、新アートスポットとして注目を集めるこのエリアの今の姿にも目を向けてみたい。(大)
 

パリ・アート情報「シャネル「Le 19M」へ。パリの新しいアート体験スポット!」

 
【Le 19M(ル・ディズヌフ・エム)】

住所:2 Place Skanderbeg, 75019 Paris, France
営業時間:水曜〜日曜 10:00〜19:00(※イベントスケジュールにより異なる場合あり)
休館日:月曜、火曜、祝日

『L’Été Ornementa(夏のオルヌマンタ)』
会期:2025年6月27日~7月20日
公式サイト:https://www.le19m.fr
 

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