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パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」 Posted on 2024/05/07 Design Stories  

 
5月5日、全長140,53メートルにも及ぶバゲットが、パリ西郊外の街シュレンヌ(Suresnes)で焼き上げられた。
この結果は、イタリアのパン職人チームがコモ湖畔で2019年に打ち立てた、132,62メートルの記録を大幅に上回る。
バゲットが焼き上げられた後には、ギネス・ワールド・レコードの審査員によってその場で「世界最長」が承認され、集まった人々から大きな歓声が上がった。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

 
今回の試みは、フランス全国ブーランジュリー・パティスリー協会が主催するイベント、「シュレンヌ・バゲット・ショー(Suresnes Baguette Show)」内で行われた。
参加したパン職人は、パリ首都圏から集まった12人のベテラン勢。
仕込みは午前3時から始まり、焼き上がるまでには約11時間を要した。なお午前10時からは一般公開され、観客に見守られながらの作業となった。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

※テントの中に横たわる長いバゲット。シュレンヌ市の高台広場にて。



 
使用された材料は、小麦粉90kg、水60リットル、塩1.2kg、イースト1.2kgと膨大な量である。生地を練るための「手捏ね桶」に関しては、なんと20個も用意されていた。
しかし、それほど長いバゲットをどうやって焼くのか? という疑問が残る。これは現地に居合わせた多くの人が思ったことらしいが、公開された現場ではこの日にしか見られない、特別な光景が広がっていた。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

※移動式オーブン。乾燥しないように、霧を吹きかけながらゆっくりと作業を進める。

 
世界最長のバゲットを焼くために登場したのは、イベントに向けて開発された車輪付きの“移動式オーブン”だ。
オーブンは生地の上をスライドするように移動し、職人たちのチェックを受けながらじっくりと焼き上げられる。
こうした試みはすべて、フランスの威信をかけた挑戦だったという。
ちなみにフランスのバゲットは2022年、ユネスコの無形文化遺産に正式登録されている。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」



 
途中、バゲットの外皮部分がオーブン天井にあたりヒビが入ってしまうというハプニングもあったが、職人チームは必死に損壊を回避する。
午後4時に焼き上がりが完成すると、測量班によって1センチ単位で測定が行われた。
※ギネス記録に認定されるには、バゲットが繋がった状態でオーブンから出てこなければならなかった。厚さは全長にわたって少なくとも5センチ。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

 
結果、バゲットの長さは140,53メートルとなり、イタリアが保持していた132,62メートルの記録を8メートル近くも上回った。
ギネス審査員によって認定された後には、集まった一般客にヌテラチョコレートを塗ったバゲットが無料で配られた。
またバゲットの半分(約70メートル)は保管され、シュレンヌ市に本部を置くチャリティ団体によって路上生活者たちに配布されたという。
これもフランスの食卓で繰り広げられる、分かち合いの精神が反映されたイベントだったと思う。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

※140,53メートルの一部。弾力のあるモチモチとした食感のバゲット。



 
ギネス記録が樹立されたことについてシュレンヌ市のギヨーム・ブーディ市長は、「この記録は、美食の国フランスのシンボルであり、そのノウハウを永続させる職人を称えるものです」と述べている。
駆けつけた観客の数が6000人を超したことからも、バゲットに対する愛と誇りがうかがえた。
 

パリ最新情報「長さ140メートル超!世界最長のバゲット、フランスで新記録を樹立」

 
このように、バゲットの存在はフランス人の生活の一部になっている。
バゲットがユネスコの無形文化遺産に登録されたのも、「パン屋が常に身近にあり、訪れたら焼きたてのパンを購入でき、客がパン職人とコミュニケーションできる」と評価されたことが理由のひとつだった。
今回のイベント以外でも、パリのベスト・バゲットコンクールや、ノートルダム寺院の前でパン祭りが開催されるなど、フランスの春はパンの季節となっている。(大)
 

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