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パリ最新情報「町の本屋さんを守るため、仏オンラインの書籍配送料が値上げされる」 Posted on 2023/04/08 Design Stories  

 
古くからの書店・古本屋を文化遺産と考えるフランス。
そんな独立系書店を保護しようとする新法が、とてもフランスらしい方法で定められることになった。

4月6日に発表されたのは、「35ユーロ未満の書籍をオンラインで注文する場合、送料を最低3ユーロ(約420円)に設定する」というもの。
これによりアマゾンなどのネット通販会社は、“配送無料”という措置が今後取れなくなるという。
半年後の10月7日からフランス全土で適用される。
新法を発表したのはフランス文化省であった。
理由はインフレによるもの、ではなく、国民が書店で本を買うことを促すためとなる。
 

パリ最新情報「町の本屋さんを守るため、仏オンラインの書籍配送料が値上げされる」



 
オンライン書店や電子書籍の台頭により、世界では「町の本屋さん」がどんどん減っている。
フランスでもそうした傾向はあって、近年ではアマゾンとフナック(Fnac、フランス最大のブックチェーン)の二つが、オンライン書籍販売のツートップであった。
一方でフランスには、独立系書店の保護を目的としたある法律が存在している。
1981年に制定されたフランスの法律(ラング法)では、新刊書籍は出版社が決めた一定の価格で販売しなければならず、5%以上の値引きをしてはならない。
この方法は他国でも取られているが、実はフランスが世界で初めて設定したということだ。
そのためラング法は40年経った今でも出版文化を守るものとして、書店・出版業界から大いに支持されている。
 

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文化的産物としての「町の本屋さん」を守ることは、フランス政府の優先事項でもあった。
事実、現在のフランスには約3,500の独立系書店が存在しており、本全体の売り上げでは「2冊に1冊」の割合で、本屋から直接販売が行われているという。
オンラインショッピングが主流の現代にあって、フランスのこうした状況は世界でもトップクラスなのだそうだ。
 

パリ最新情報「町の本屋さんを守るため、仏オンラインの書籍配送料が値上げされる」

※世界遺産にもなっているパリのブキ二スト(セーヌ川沿いの古本屋)。



 
新送料が設定されるにあたっては、オンライン小売業者からの反発がもちろんあった。
なお今回、仏アマゾン側は「インフレを助長させる」として、3ユーロではなく1.49ユーロの送料にすることを要望していた。
一方の書店側はさらに高い4.5ユーロをネット業者に要求。
よってフランス政府は両者の中間を取ったということになる。
ややこしいのだが、簡潔にまとめると、フランス政府は書籍の送料を値上げしネット業者に圧力をかけた。
つまり本屋で直接買った方がお得となり、本屋に通う国民を増やしたい、というのが今回の仏政府の狙いである。

フランスの本屋では、「朗読会」をはじめとした各種イベントがたくさん開催されている。
首都パリには1801年から続く老舗書店もあるほどだ。
こうした書店が生き残りなお活気づいているのも、フランスの法律によって固く守られているからなのであった。(る)
 

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