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パリ最新情報「バカンスに行けなかった子供たちへ、ヴェルサイユ宮殿からの贈り物」 Posted on 2021/08/27 Design Stories  

8月に入り、パリを行き交う人々の数が減って静かになった。
フランス人のバカンス(夏休み)期間は長い。年間にして5週間の有給休暇が法律で保障されているのだが、なかでも夏のバカンスは大本命とみなされていて、3週間以上の長期休暇を取るフランス人は少なくない。

フランス政府は昨年と同様、自国で過ごすバカンスを推奨した。今年は衛生パスポートの導入があり例年の夏とは様子が違うものとなったが、それでも多くのパリジャンは太陽を求め、海辺のバカンスを実現すべく南下した。

パリ最新情報「バカンスに行けなかった子供たちへ、ヴェルサイユ宮殿からの贈り物」

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大人がこれほど長い休暇を取るわけなので、子供の夏休み期間は2か月ともっと長い。
ただ、そのうち子供と一緒に過ごせる期間は数週間と限られているし、フランス家庭ではほとんどが共働きなので親も仕事をしなくてはならない。祖父母の家が近くにある場合は安心して預けることもできるが、祖父母宅が国外にあるなど諸々の事情で頼ることができない家庭もある。

バカンス代はもちろん、子供の夏休み期間中のベビーシッター代など、夏はとにかくお金がかかる。フランスはコロナ禍での失業率がEUの中でもギリシャ・スペインと並び多く、2021年5月は失業者数が53万人超、若年層の失業率は4月よりやや回復したとはいえ19.2%を記録した。つまり、このパンデミックでボロボロになってしまったのだ。

もちろんバカンスに行ける人と行けない人の差は開き、イル=ド=フランス地域圏(パリを中心としたフランス首都圏)では10人に4人の子供が今年夏のバカンスに出かけることができなかったという。

そんな中ヴェルサイユ宮殿では、経済的な理由でバカンスに行けなかった子供に夢を与えようと、休業日を利用した「ヴェルサイユ宮殿一日バカンス体験」が敢行された。

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これはパリ16区にある都市開発グループのエムリ―ジュとヴェルサイユ宮殿が提携し主催したもので、8月の16日と23日の二日間にわたって行われた。
エムリ―ジュグループは主にパリ首都圏の不動産を手掛ける会社であるが、地域の文化施設とパートナーシップを組み、若者を支援するプログラムを積極的に行っている企業でもある。

フランスにはこのように、休暇期間中に子供に体験型のアクティビティを与える場所がいくつも存在する。近隣地域の学童保育や野外活動センターといったクラブに登録すると、子供たちが学校の管轄関係なくそこで一日中過ごすことができるという仕組みだ。市外の公園へピクニックへ出かけたり、古城へ見学に行ったりと、子供がいるいないに関わらず夏休みの外出の参考になったりもする。

パリ市などでは夏のあいだ、都心を離れずにバカンス気分を楽しめるようにと2002年から始まった「パリプラージュ」のイベントが毎年開催されている。パリ19区のヴィレット貯水池周辺では無料の屋外プールが解放されるなど、経済的な理由でバカンスに行けない子供たちにとっては嬉しいイベントの一つである。子供が多いフランスでは、このように「社会が子供を育てる」といった風潮があるように思う。



そして今回の「ヴェルサイユ宮殿一日バカンス体験」には、7歳~12歳までの子供たちが二日間で約3500人も集まった。2016年から毎年行われているプログラムだが、今年の参加人数は過去最高だったそうで、コロナ禍で苦しい状況にいる親たちの状況が容易に想像できる。

これを踏まえて主催者のエムリージュグループとヴェルサイユ宮殿は、「パンデミック以後、困難な状況にある子供たちに教育と文化の場を提供することは必要不可欠である」とし、パリ市を含むイル=ド=フランス地域圏の40市町村から参加者を募ったという。

子供たちを引率したのはバカンスを利用した学生スタッフやボランティアの若手俳優だった。「楽しく、教育的な一日」を目標に、子供たちは宮殿にちりばめられた秘密の動物の絵を探したり、なぞなぞを解いてヴェルサイユの歴史について学んだ。

参加した子供の一人は「大人になったらヴェルサイユを調査する仕事がしたい」と話すなど、とても有意義な体験になったという。

コロナ禍でフランス中の観光名所が閉鎖を余儀なくされた。ヴェルサイユ宮殿も例外なくそのうちの一つだったのだが、今年6月には敷地内に高級ホテル「ル・グラン・コントロール」を開業するなど、ロックダウン中にも気運を高めていた。

現在ではコロナ対策で事前予約制が取られ、人数も大幅に制限している。コロナ禍の「ニューノーマル」が定着した宮殿だが、今後は観光客誘致だけでなく地元との提携、特に若者の支援プログラムにより力を入れていくという。

2024年のパリ五輪ではこの場所が馬術の会場となることが決まっている。フランスを代表する歴史遺産でもあるヴェルサイユ宮殿には、今までと同じように透明度の高い運営が期待されている。(大)

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